僕が「救けて」と言えるまで
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「うわー、でっかー」
あれから数か月。
僕は雄英高校の前に立っていた。
今日は一般入試の日のだ。
あれから願書は「神呪礼」の名前で提出し、出身中学はなしと書いた。
家庭の事情で中学には通わなかった、ということにしたんだ。
戸籍は偽りのものが作られ、個性欄には血液操作と記された。
さすがに「食人」なんて書けないもの。
「どけ!モブ」
ん?モブ?
誰だろうと周りを見渡すと、僕の後ろにはツンツン頭の目つきの悪い男の子がいた。
この子も、受験生かな?
「あ、ごめんね。どうぞ」
僕が邪魔してたのが悪いよね、うん。
にっこり笑って大人しく横に避けると、彼は舌打ちをして歩いていく。
「気持ちわりぃ笑い方してんじゃねえよ、クソが」
初めて言われた…笑うの、うまいと思うんだけどな。
それにしても、なんであんなに気が立ってるんだろ。
不思議だなあ。
『今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!』
わー。うるさい。プレゼントマイクって本当に声大きいんだねえ。
筆記試験が終わり、大きな会場に移って実技試験の説明をされた。
それを右から左へ聞き流しながら(だって概要は黒霧が全部教えてくれたから)、手元の紙を弄ぶ。
僕の試験会場は「E」って書いてあった。
「んーーー」
伸びをして固まった体をほぐす。
何人もの受験生が、思い思いの方法で緊張をほぐしていた。
(あ、準備しとこーっと)
血液パックに入れた僕の血を少しずつ小型ナイフにつけていく。
血液操作は、自分の血がついたものを自在に操ることができる。
だから血のついたナイフも、僕の思い通りに動くってわけ。
合計10本のナイフに血をつけおわると、会場に大きな声が響く。
『ハイスタートーー!』
その合図とともに、僕は血液操作で自分の身体能力をあげ、走り出した。
他の受験生は、まだぽかーんとした顔をしてる。
(バカみたい。実践じゃ合図なんてないのに。あーあ、あいつら全員死んだよ)
僕はくすくすと笑いながら、目の前に現れたロボを蹴り上げる。
それと同時にナイフを全て手放すと、目視できる範囲の全てのロボに向けて動かした
一瞬で、ロボットが動かなくなる。
「あーあ、退屈だなあ」
僕はゆっくりと歩く。
ナイフをまといながら、出てきたロボを次々に倒していく。
すごーく、たいくつ。早く終わらないかな。
僕はあくびをかみ殺した。
教師陣がどよめく。
全員が、一つのモニターを見ていた。
試験会場「E」
今までにない光景が広がっていた。
「……彼は」
校長の言葉に資料をめくる音が響く。
「えー、神呪礼。個性は血液操作です。」
ミッドナイトさんの声は耳に入っているものの、その言葉に返事はない。
それほどまでに全員が驚愕していた。
「70ポイント…」
モニターには退屈そうな黒髪の少年がうつっている。
体の周りに浮かせたナイフで、向かってくるロボを行動不能にしていた。
今現在のポイント数は70ポイント。
2位を10ポイント以上突き放していた。
「おい、あいつは…」
ブラドの言葉に頷く。
間違いなく、あの日の子供だった。
「相澤君、知っている子かい?」
校長がモニターから目を離さずにいう。
その顔はいつもと違って険しい。
「はい。数か月前に一度だけ」
あれ以降、あの町でこいつを見かけることはなかった。
同じく、カニバルが現れることも。
「彼は、危ういね」
その一言で、しんと静かになる。
『ふんふんふーん』
静かな空間に、試験会場Eからの音声が届く。
神呪礼は、くすくすと笑いながら鼻歌を歌っている。
そして現れたロボ・インフェルノ。
それをちらりとみた神呪はにやりと笑い、腕を一振りする。
「!!!???」
途端、ロボ・インフェルノが動かなくなる。
駆動系にナイフを突き立てられて、回路がショートしたんだろう。
それを見た神呪の目に、その場にいた誰もが体を固くした。
まるで感情のない瞳。
先ほどまでとは違う。敵と言われても疑問を持たないほどに冷たい目をした神呪が立っていた。
『なんだ、こんなもんか。…くだらない』
『終了―――――!!!』
マイクの声が会場中に響き渡る。
真っすぐに前を見据えるもの。
ガッツポーズをするもの。
うなだれるもの。
気絶しているもの。
様々なものがいる中で、あいつだけが異質だった。
『ふわーあ、ねむ』
大きなあくびをしながら、またふらふらと歩きだした。
神呪礼
トータル85ポイント。
一般入試トップ合格。