僕が「救けて」と言えるまで
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※少しですが性的表現があります。苦手な方はご注意ください。
僕が生まれたのは、普通の家だった。
いや、親がどっちもプローヒーローなのは普通じゃないのかもしれない。
両親は僕の個性にとても期待していた。
4歳になるまではどんな個性が出るか楽しそうに話してた。
どちらか片方の個性か、複合個性か。
けど、4歳を過ぎても僕には個性が現れなかった。
両親は嘆き悲しんだ。
足の小指の関節は1つだったけど、僕にはなんの個性もなかった。
そこから少しずつ壊れていった。
両親は不仲になり、僕はいないもののように扱われた。
ご飯は満足に食べられなかった。
イライラすると、僕を殴った。
そして、二人ともほとんど家に帰ってこなくなった。
それでもテレビの中では、二人とも華々しく活躍していた。
僕は外に出ることもできず、ずっとそれを見ていた。
5歳になって少しして、久しぶりに両親が揃って僕の目の前にいた。
怪我をしたとかで、お母さんはヒーローとして活動できなくなったらしい。
それでも久しぶりに会う二人に、僕はとても嬉しくてニコニコと笑いながら車に乗った。
着いたのは大きなお屋敷だった。
キラキラとした部屋の中へ通されて、そこには大きな椅子に座った太ったおじさんがいた。
おじさんはニタリと笑い、僕を嘗め回すように見る。
その蛇のように絡みつく視線が怖くて、気持ち悪く、お母さんの後ろに隠れようとすると、お母さんは僕の伸ばした手を叩き落とした。
びっくりしてお母さんを見上げるけど、その目は僕じゃなくて気持ち悪いおじさんを見てた。
大きなアタッシュケースを受け取ると、中には見たことないくらいたくさんのお金が入ってた。
お母さんは僕に言った。
---これであんたもちょっとは役に立つわね。よかったわね、顔が良くて。ずっと後悔してたけど今日だけは言えるわ。あなたを産んでよかった。---
冷たい声だった。
気持ち悪いおじさんの手が伸びてきて、僕は「救けて」って言った。
僕を救ってくれるはずのヒーロー…お母さんとお父さんは笑ってた。
僕が伸ばした手は空を切る。
そして僕の前から、ヒーローはいなくなった。
それから毎日が地獄だった。
おじさんは僕を毎日舐めまわした。
言葉通りに。舐めまわされた。
毎日、毎日、毎日、おじさんは僕に歪んだ愛を囁いて、僕を汚した。
体が痛かった。
腰が、お尻が、顎が、痛かった。
立ち上がれないことも、たくさんあった。
鎖で繋がれた僕を毎日綺麗にしてくれるお姉さんたちは、僕を汚いもののように扱った。
僕の心は、ゆっくりと、静かに壊れていった。
どのくらい経ったかわからない。
でもある日から、若い男の人達が部屋に来るようになった。
その人達はおじさんのことを「おやじ」って呼んでた。
僕は、おじさん以外の人にも汚された。
かわるがわる、何度も、何日も。
嫌なのに、体は反応して、それを見て、またおじさんは僕の上に跨った。
ずっと前から、僕は考えることをやめた。
そういえばお姉さんの中に一人だけ、僕に笑いかけてくれる人がいた。
僕が無反応でも、毎日天気の話をしていた。
そのお姉さんは「かん」って呼ばれてた。
お姉さんは優しくて、暖かくて、お姉さんといる時だけ、僕は色を感じることができた。
あの日はお姉さんが雨だって言った日だったと思う。
男の人が何人か部屋に入ってきて、いつも通りに僕を汚した。
いつもと違ったのは、行為の最中にそのうちの一人が僕の首を絞めたんだ。
苦しくて、苦しくて、涙が出て、思わず首を絞める手をひっかいてた。
血がにじむその手のお兄さんは舌打ちをして、僕を殴りつけた。
今まで痣ができることはあっても、殴られることはなかった僕はびっくりした。
びっくりして、お兄さんの手に嚙みついた。
さらに強く殴られた僕の体は、痩せてて軽かったせいもあり、吹き飛ばされた。
背中を打ち付けて息ができなくて、頭が真っ白になった。
痛い、痛い、痛い、痛い。
ごぽりと口から吐き出されたそれが、手を真っ赤に染める。
死ぬ、の…
僕、死ぬの?
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い
頭の中が真っ赤になった。
次に気づいたとき、僕は真っ赤な水たまりの中にいた。
自分の体が真っ赤で、何をしていたのか覚えてないけど、周りにはいろんな人が倒れていた。
倒れてる人の中にお姉さんがいた。
かんって呼ばれてた、お姉さん。
何があったのか覚えてない。
けどそこに立ってるのは僕しかいなくて、全部僕のせいなんだと思った。
凄くごめんなさいって気持ちになった。
お姉さんは悪くないのに、ごめんなさいって。
そばにしゃがみこむと、喉がなった。
ごくりとつばを飲み込む。
真っ赤に染まるお姉さんが、その心臓が、凄く魅力的に見えた。
---ああ、僕はそうなんだ。そうなんだね---
なんでかはわからない。
でもその時、僕は個性があったんだって分かった。
---ねえお姉さん、ごめんなさい。ごめんなさい---
これは贖罪。
そして最大級のお姉さんへの愛。
死んでもずっと、お姉さんは僕の中で生きるんだ。
---だから、いただきます---
僕は手を合わせてから、お姉さんの体に触る。
ぐちゅぐちゅと肉を引き裂き、心臓を取り出した。
僕の個性は「食人」
心臓を全て食べることで、相手の個性を自分のものにする。
お姉さんの個性は血を操るものだったらしい。
初めて自分に宿った人の個性が面白くて、僕は体の痛みも忘れ遊んでいた。
自分の体から流れ出る血を操る。
紐みたいに伸ばしたり、壁を切りつけたり、近くにあったものに塗るとそれを思いのままに操れた。
体の中の血も操れるみたいで、いつもより早く軽く動くこともできた。
---んふふ……あはははは!!!!---
凄く気分が良かった。
隠れてた、僕を汚くした奴らを追い掛け回す。
泣きながら逃げ惑う奴ら。
僕は泣きながら、笑ってた。
「予想以上だね」
僕以外の動く人がいなくなった屋敷に、僕以外の声が響いた。
おっきな人がいた。
---誰?---
「ああ、僕はオールフォーワン。迎えに来たよ、片喰類君」
久しぶりに聞いた名前。
僕の、名前。
優しくかけられた言葉に、伸ばされた手に、涙がでた。
「可哀そうに。辛かっただろう。悲しかっただろう。ヒーローも、警察も、誰も助けてくれなかったね」
悲しい…
ああ、そうだ。僕は悲しかったんだ。辛かったんだ。
お母さんがいなくなったのも、僕の代わりにお金を持って帰ったことも、誰も僕を助けようとしてくれなかったことも。
「大丈夫。泣かなくていいよ。さあ僕と行こう。」
僕は大きなその手を握った。
その手は、酷く暖かかった。
僕が生まれたのは、普通の家だった。
いや、親がどっちもプローヒーローなのは普通じゃないのかもしれない。
両親は僕の個性にとても期待していた。
4歳になるまではどんな個性が出るか楽しそうに話してた。
どちらか片方の個性か、複合個性か。
けど、4歳を過ぎても僕には個性が現れなかった。
両親は嘆き悲しんだ。
足の小指の関節は1つだったけど、僕にはなんの個性もなかった。
そこから少しずつ壊れていった。
両親は不仲になり、僕はいないもののように扱われた。
ご飯は満足に食べられなかった。
イライラすると、僕を殴った。
そして、二人ともほとんど家に帰ってこなくなった。
それでもテレビの中では、二人とも華々しく活躍していた。
僕は外に出ることもできず、ずっとそれを見ていた。
5歳になって少しして、久しぶりに両親が揃って僕の目の前にいた。
怪我をしたとかで、お母さんはヒーローとして活動できなくなったらしい。
それでも久しぶりに会う二人に、僕はとても嬉しくてニコニコと笑いながら車に乗った。
着いたのは大きなお屋敷だった。
キラキラとした部屋の中へ通されて、そこには大きな椅子に座った太ったおじさんがいた。
おじさんはニタリと笑い、僕を嘗め回すように見る。
その蛇のように絡みつく視線が怖くて、気持ち悪く、お母さんの後ろに隠れようとすると、お母さんは僕の伸ばした手を叩き落とした。
びっくりしてお母さんを見上げるけど、その目は僕じゃなくて気持ち悪いおじさんを見てた。
大きなアタッシュケースを受け取ると、中には見たことないくらいたくさんのお金が入ってた。
お母さんは僕に言った。
---これであんたもちょっとは役に立つわね。よかったわね、顔が良くて。ずっと後悔してたけど今日だけは言えるわ。あなたを産んでよかった。---
冷たい声だった。
気持ち悪いおじさんの手が伸びてきて、僕は「救けて」って言った。
僕を救ってくれるはずのヒーロー…お母さんとお父さんは笑ってた。
僕が伸ばした手は空を切る。
そして僕の前から、ヒーローはいなくなった。
それから毎日が地獄だった。
おじさんは僕を毎日舐めまわした。
言葉通りに。舐めまわされた。
毎日、毎日、毎日、おじさんは僕に歪んだ愛を囁いて、僕を汚した。
体が痛かった。
腰が、お尻が、顎が、痛かった。
立ち上がれないことも、たくさんあった。
鎖で繋がれた僕を毎日綺麗にしてくれるお姉さんたちは、僕を汚いもののように扱った。
僕の心は、ゆっくりと、静かに壊れていった。
どのくらい経ったかわからない。
でもある日から、若い男の人達が部屋に来るようになった。
その人達はおじさんのことを「おやじ」って呼んでた。
僕は、おじさん以外の人にも汚された。
かわるがわる、何度も、何日も。
嫌なのに、体は反応して、それを見て、またおじさんは僕の上に跨った。
ずっと前から、僕は考えることをやめた。
そういえばお姉さんの中に一人だけ、僕に笑いかけてくれる人がいた。
僕が無反応でも、毎日天気の話をしていた。
そのお姉さんは「かん」って呼ばれてた。
お姉さんは優しくて、暖かくて、お姉さんといる時だけ、僕は色を感じることができた。
あの日はお姉さんが雨だって言った日だったと思う。
男の人が何人か部屋に入ってきて、いつも通りに僕を汚した。
いつもと違ったのは、行為の最中にそのうちの一人が僕の首を絞めたんだ。
苦しくて、苦しくて、涙が出て、思わず首を絞める手をひっかいてた。
血がにじむその手のお兄さんは舌打ちをして、僕を殴りつけた。
今まで痣ができることはあっても、殴られることはなかった僕はびっくりした。
びっくりして、お兄さんの手に嚙みついた。
さらに強く殴られた僕の体は、痩せてて軽かったせいもあり、吹き飛ばされた。
背中を打ち付けて息ができなくて、頭が真っ白になった。
痛い、痛い、痛い、痛い。
ごぽりと口から吐き出されたそれが、手を真っ赤に染める。
死ぬ、の…
僕、死ぬの?
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い
頭の中が真っ赤になった。
次に気づいたとき、僕は真っ赤な水たまりの中にいた。
自分の体が真っ赤で、何をしていたのか覚えてないけど、周りにはいろんな人が倒れていた。
倒れてる人の中にお姉さんがいた。
かんって呼ばれてた、お姉さん。
何があったのか覚えてない。
けどそこに立ってるのは僕しかいなくて、全部僕のせいなんだと思った。
凄くごめんなさいって気持ちになった。
お姉さんは悪くないのに、ごめんなさいって。
そばにしゃがみこむと、喉がなった。
ごくりとつばを飲み込む。
真っ赤に染まるお姉さんが、その心臓が、凄く魅力的に見えた。
---ああ、僕はそうなんだ。そうなんだね---
なんでかはわからない。
でもその時、僕は個性があったんだって分かった。
---ねえお姉さん、ごめんなさい。ごめんなさい---
これは贖罪。
そして最大級のお姉さんへの愛。
死んでもずっと、お姉さんは僕の中で生きるんだ。
---だから、いただきます---
僕は手を合わせてから、お姉さんの体に触る。
ぐちゅぐちゅと肉を引き裂き、心臓を取り出した。
僕の個性は「食人」
心臓を全て食べることで、相手の個性を自分のものにする。
お姉さんの個性は血を操るものだったらしい。
初めて自分に宿った人の個性が面白くて、僕は体の痛みも忘れ遊んでいた。
自分の体から流れ出る血を操る。
紐みたいに伸ばしたり、壁を切りつけたり、近くにあったものに塗るとそれを思いのままに操れた。
体の中の血も操れるみたいで、いつもより早く軽く動くこともできた。
---んふふ……あはははは!!!!---
凄く気分が良かった。
隠れてた、僕を汚くした奴らを追い掛け回す。
泣きながら逃げ惑う奴ら。
僕は泣きながら、笑ってた。
「予想以上だね」
僕以外の動く人がいなくなった屋敷に、僕以外の声が響いた。
おっきな人がいた。
---誰?---
「ああ、僕はオールフォーワン。迎えに来たよ、片喰類君」
久しぶりに聞いた名前。
僕の、名前。
優しくかけられた言葉に、伸ばされた手に、涙がでた。
「可哀そうに。辛かっただろう。悲しかっただろう。ヒーローも、警察も、誰も助けてくれなかったね」
悲しい…
ああ、そうだ。僕は悲しかったんだ。辛かったんだ。
お母さんがいなくなったのも、僕の代わりにお金を持って帰ったことも、誰も僕を助けようとしてくれなかったことも。
「大丈夫。泣かなくていいよ。さあ僕と行こう。」
僕は大きなその手を握った。
その手は、酷く暖かかった。