僕が「救けて」と言えるまで
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「めぐ…り」
愕然とする。
敵が去って生徒達の保護をしていると、木の陰で動かない生徒がいた。
緑谷が言ってた神呪だ。
慌てて駆け寄ろうとして、神呪を抱きしめる姿に足が止まる。
隣にいたブラドも一緒だ。
Why are you here?(なんでここに)
『赤慈郎…ひざし…消太は無事?』
そこにいたのは、ブラドの従妹の管 巡(かん めぐり)だった。
おかしい。なんでだ。だって、あいつは
彼女はふわりと微笑んだ。
『ごめんね、急にいなくなって』
5年前、死んだはずなんだ。
彼女が住み込みで働いていた屋敷が、敵に襲われた。
全てが燃え尽きた後、残っていたのは燃えカスだけだった。
俺もブラドもイレイザーも、必死に探した。
彼女がどこかで生きているんじゃないかと、僅かな希望を持って。
「巡…お前は、死んだのか」
ブラドの声が震えている。
そりゃそうだろ。小さい頃から一緒に育った巡を、こいつは何よりも大切に思っていた。
悲しそうに、笑う。
『うん。死んだよ。』
分かっていた。分かっていたんだ…それでも頭を金づちで殴られたかのような衝撃が走る。
じゃあなんで、ここにいる。
ここにいて、俺達と話している。
『ねえ赤慈郎、ひざし…お願い』
泣きそうになりながら神呪の頭を撫でる。
『礼君を、救けて』
礼君?
神呪の名前は類のはずだ。
「お前がここにいるのは、そいつが原因か」
巡が頷く。
なら礼君というのは、神呪ということになる。
Shit!わけがわからねえ。
『礼君は悪くないの、悪いのは全部…』
言いかけて巡は首を横に振る。
神呪の腰についている血液パックを破り、その血を操る。
「そいつの個性を聞いたときに予感はあった…しかし信じられなかった」
ブラドの絞りだす声が悲壮に歪む。
俺の顔も、きっと泣きそうに歪んでいる。
「そいつの個性は…お前の個性か」
巡は個性の扱い方がへたくそだった。
せいぜい血を操作して止血ができるレベルだったはずだ。
『違うよ、これはもう礼君の個性だから。私があげた、礼君の個性』
ふわりと神呪の体が浮く。
血の紐で、その体が俺の腕の中に納まる。
酷い怪我だが、血は既に止まっていた。
『礼君を、救けてあげてね…お願い』
そういうと、巡は俺達の前から消えた。
暗く、深い海の底から声がする。
---残念、残念だ。また壊せると思ったのに---
どろどろとまとわりつく声に、耳を塞ぎたいのに体が言うことを聞かない。
ここはどこだろう。冷たくて、寒い。
呪いのように、その声が僕を締め上げる。
違う。僕は壊したくない。
悪いことなんか、したくない。
---だから逃げた。だから目を閉じた。だから耳を塞いだ---
見ないように、聞こえないように
---だから心を閉ざした。だから笑う。---
笑っていれば、何も考えなくていいから。
心を閉ざせば、笑えたから。
---お前は嘘つきだ---