僕が「救けて」と言えるまで
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「相澤君、これ今日の戦闘訓練のV」
放課後、オールマイトさんが差し出した資料を礼を言って受け取る。
さて、どんな動きをしたか見ものだな。
早速見始めようとする俺の隣に、オールマイトさんが椅子を寄せて座る。
「……なんですか」
大の大人、しかも男が身を寄せ合って小さいパソコンを見つめる。
とてつもなく嫌だし、不合理だ。
まずこの人は戦闘訓練を担当していたんだから、全部見ているだろう。
「私は今日、教師にあるまじきことを思ってしまったよ」
そういいながら映像を先に進めていく。
ラストの、神呪の訓練だ。
「見てくれ、そして君の意見を聞きたい」
なぜか神呪は一人でオールマイトと戦っていた。
確かに一人余るからZとして当たりくじにし、自由に相手を選ばせるとは言っていたが…
「私は、神呪少年はヒーローになるべきではないと、思ってしまった」
オールマイトさんの顔が歪む。
映像の中では、入試の時とは違い、生き生きとした神呪の表情がうつっている。
そう生き生きと。
生き生きと、オールマイトさんを殺そうとしていた。
「っっっっ」
飛ぶナイフは、全て的確に急所を狙っている。
10本のナイフを自由自在に操る。
そして自身の血液を操った拘束術。
制限時間の15分。
オールマイトさんを凌ぎ、攻撃を仕掛け続けた神呪の息は、一つも乱れていなかった。
「手加減は」
「もちろんしたさ。しかし、いつ殺されるか、なかなかに冷や冷やしたよ」
そうだろうな。
神呪の戦っている間のオールマイトさんは、余裕とは言い難い表情をしていた。
「でもね、このあとなんだ」
訓練が終わり、核が確保されたことでヒーロー側の勝ちだった。
ぶつぶつと言いながらナイフを回収する神呪。
『君はなぜ、ヒーローを目指すんだい?』
『そんなの、悪い人を壊したいからですよ』
思わず固まる。
この言い回し…
『あ、違います。悪い人を捕まえたいからです。』
えへへと笑う。
それは保健室で見たのと同じ、無邪気な笑顔。
『ねえオールマイト、僕質問があるんです』
神呪の目は、まっすぐにオールマイトさんを見る。
しかしそこに先ほどまでの笑顔はない。
『悪いことをした人は裁かれなきゃいけない。それを捕まえるのが、ヒーローです。なら』
続く言葉が俺の頭を殴る。
よく似た言葉を、俺は知っている。
『悪いことをしたヒーローは、誰が裁いてくれますか?』
あの日、血だまりの中にいた少年が、憎々し気に言葉を吐き出す少年が、神呪と重なった。
「ただいまー…あ?」
バーに戻ると何やら弔君と黒霧が話してる。
なんだなんだとその手元の紙を覗き込めば、それは雄英高校の見取り図だった。
「血鬼、仕事」
それだけ言って弔君はソファに横になる。
え?それだけ?
「くろぎりー」
泣きつくとちゃんと説明してくれる。
もー、弔君に足りないのは優しさだよー?
どうやら明日、弔君が学校に来るらしい。
そのついでにちょっと喧嘩売って、さらにカリキュラムを盗むとな。
生徒にもその日に何するか、誰が担当かって分からないんだよね。
「そっかー!脳無完成したんだねぇ。うわー、気持ちわるー!」
部屋の端っこに突っ立ってる脳無を指さしながら笑う。
ドクターが頑張って作った脳無。
これ使ってオールマイト殺しにいくんだって。
「血鬼にはそのカリキュラムを盗んできて欲しいんです。できますよね」
できるできないじゃない、やるんだよと返すと黒霧が満足気に笑う。
けどさ、もし騒ぎの最中に職員室入り込んでるのバレたら、僕の立場やばくならない?
「うーん、誰かに見られたら終わりだなぁ。良い言い訳できる自信ない!」
そう断言すると、弔君が何かを投げつけてきた。
体にぶつかったそれは、カニバルのマスク。
「隠れてそれつけて入れ。服も着替えろよ。終わった後、人のいないところで黒霧を呼べ。書類の写しとマスクと服、全部投げ込め」
えー、それ僕の負担多くない?
そう文句をたれると無視された。
横暴だー!