僕が「救けて」と言えるまで
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思わず固まってしまった。
私?
「生徒の中から、とは言いませんでしたよね?」
確かに私は好きな対戦相手、としか言っていない。
だから別に問題はないのだが…
うーん、まあまだ活動時間もあるし、なにより私に二言はない!
「いいだろう!私が相手をする!相方は「一人でいいです」」
てっきり二対一だろうと思ったが、食い気味に神呪少年は言った。
にっこりと笑う。
彼の個性は血液操作…ブラド君と似た個性だったな。
「いやだが、対戦相手は私だぞ?」
一人では試合になるとは思えない…
私とてナンバーワンヒーローだ。
しかし神呪少年は頑なに一人を希望した。
そしてさらに一言。
「オールマイトはヒーローをしてください。僕は敵がいいです」
うーん、よくわからん少年だ。
ここはヒーロー科。
普通、ヒーロー側を希望しそうなもんだが…
外からビルを見上げる。
うーん、どこまで手加減をしたものか。
一瞬で終わってしまっては訓練にならないからな。
ビルに入って階段を上がる。
どうやら核は最上階にあるらしい。
階段を上がる足が止まる。
なんだこの、違和感は。
「っっっっ」
無意識のうちに体が動く。
私が今まで立っていた場所に、一本のナイフが突き刺さっていた。
早い。一瞬でも遅かったら突き刺さっていた。
「あ、凄い凄い。それ避けるんだ…じゃあこれは?」
階段の上にいる神呪少年から、無数のナイフが飛んでくる。
全てを避ける。
しかし避けたはずのナイスが弧を描くように、何度も私に向かってきた。
(彼の個性は血液操作だ…これは)
避けながら考える。
ふとナイフに赤いものがついているのが見える。
当たっていないのだからあの血は私のものじゃない。
…そうか!
ナイフにつけた自分の血を操って自由自在に動かしているのか!
全くなんて少年だ。
こんなにも繊細に個性を扱っているなんて。
「全部避けられてるや。うーん、これだけじゃ難しいか」
そういうと少年は腰につけたポーチから、赤い液体が入ったパックを出した。
十中八九、彼の血液だろう。
「じゃあ、これは?」
パックが破られると、そこから流れ出た血液が紐のようになり私に向かってくる。
うーむ、ブラド君のような使い方もできるのか。
あれは私を拘束しようとしているのだろう。
なんて多様な個性の使い方だ。
「だが、甘い!すまーーーっしゅ!!」
拳を上に突き上げ風を生じさせ、私に伸びてきた血液を吹き飛ばす。
所詮は液体!風に煽られれば真っすぐ飛んでくることはできないだろう!!
「へえ、やっぱり強いですねえ」
「なっっっっ」
階段の上にいたはずの神呪少年が、私のすぐ目の前にいた。
目くらましか!
血液で注意をひいて、その間に私の懐に入り込んでいたのか!
神呪少年の蹴りを受け止めながら、数歩後ろに下がる。
全てのナイフを手元に戻した少年の口角が、にいと上がる。
それに私は戦慄した。
なぜだ、なぜこの少年はここまで戦い慣れている。
爆豪少年のような戦闘センスなんて話じゃない。
先ほどのナイフも、全て人の急所に的確に飛んできていた。
そしてこの笑い方。
それは完璧に、敵のそれだ。
「強い、強いなあ…オールマイト」
少年が、至極楽しそうに笑う。
「君は…」
この少年はダメだ。
思わず私は思ってしまった。
この子は、ヒーローになるべきじゃない。