僕が「救けて」と言えるまで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※病気についての知識はネット調べです。相違あるかもしれませんが、温かい目で見てやってください。
「ばあさん!」
保健室に駆け込んで、指示に従って神呪をベッドに置く。
顔色が悪い。さっきよりもどんどん白くなっていく。
「どうしたんだい、この子は」
「わからん。急に胸を押さえて…おい神呪、なにしたんだ」
うっすらと目を開ける。
意識はぎりぎりあるようだ。
「……せっけっきゅー」
せっけっきゅー…赤血球?
訳がわからんと首を傾げると、ばあさんははっとして叫んだ。
「あんた、早くこの子の個性、消してあげな!」
訳が分からんまま個性を発動させる。
髪が逆立ち、目が赤くなる。
ばあさんはそれを確認してから、点滴で神呪の血を抜いていく。
暫くすると徐々に呼吸が落ち着き、顔に色が戻ってきた。
「どういう、ことだ?」
何が起こった?
こいつの個性は血液操作だろう。
個性を解いてばあさんをみると、難しい顔で溜息をついている。
「大方、個性で自分の赤血球を増やしてたんだろ。赤血球が増えればドーピングのように身体能力が上がるからね」
保健室利用書を渡され、俺はそれにサインをする。
自分の体の中の血液の濃度を操作した、ってことか。
「……しぬ、かと、おもったあ」
気の抜けた声が響く。
まだ顔は白いものの、しっかりと意識を取り戻した神呪がへらりと笑う。
「あんた、限度ってもんを知らんのかい。」
呆れたようにばあさんがぺちりと神呪の頭を叩く。
「赤血球は増やしすぎれば多血症になる。あんた、心臓発作をおこしかけてたよ。」
ばあさんの言葉に顔が歪む。
変わらずへらへらと笑う神呪に、違和感を覚える。
こいつ、死にかけたくせになんで笑ってやがる。
「あんまり個性を使うのに慣れてなくて…」
しかし自分の身に危険が及ぶ個性なら、親が教えそうなものなのにな…
「神呪、個性の制御はちゃんとできるようになれ。どこまで使えるのかの把握もな」
そういうと、初めて気づいたというように俺を見る。
まじまじと俺の顔を見る。
…なんだ?
あっというと、神呪は嬉しそうに体を起こす。
「塚内さんと一緒にいた人だ!思い出したー!どこかで見たと思ったんだー!」
やったやった思い出したとはしゃぐ。
大人しくしてなとばあさんに怒られてたが。
「……相澤消太、お前の担任だ」
そういえばこいつは教室にもいなかったから名乗ってなかったな。
あの夜も。
「あいざわせんせー?」
「伸ばすな」
「あいざわせんせい」
「漢字で」
「相澤先生」
こいつ本当に15歳か?
何回も何回も俺の名前を繰り返す。
「うん、覚えた。相澤先生」
「ただいまー!」
黒霧がおかえりなさいって言ってくれる。
弔君は僕をちらりとみて、読んでた雑誌に視線を戻す。
あー、挨拶はちゃんとしなきゃダメなんだぞー?
黒霧が出してくれたジュースにお礼を言って、カウンターの椅子に座る。
「どうでした、初日は」
ずずずずーとジュースを飲みながら、僕はにへらと笑う。
「うん、死にかけた!」
言った瞬間、はあ?と弔君が反応する。
いつの間にか僕の後ろにいる。
「血鬼、どういうことだ」
僕は学校でのことを詳しく話す。
どんどんと弔君の顔が険しくなっていく。
「びっくりしたよー。使いすぎると心臓に負担かかるんだってー」
ドーピングって怖いんだね、というと黒霧も呆れたような目で僕を見る。
弔君に至ってはバカかっていうし。
仕方ないじゃーん。誰も教えてくれなかったもん。
「あんまりこの個性は使ってこなかったからね」
カニバルの時に使うのは、別の個性。
僕が食べた、もう一つの心臓の個性。
個性:絶対停止
対象内の生物の体感時間を10秒間止めることができる。
ただ生物のみだから、動く弾丸とかは止められないんだ。
ノーモーションで発動できるけど、連続使用すると高熱が出ちゃうのがデメリットかな。
「勝手に死ぬなよな」
所有物が突然なくなったら困るもんね。
そういうと、弔君はわかってんじゃねえかって顔してた。
「死なないよ。僕は、僕のためにも、死ねないよ」
僕は笑った。
無邪気に、笑った。