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鬼さんこちら

「ところで、不知火さんは何で私の家に?」

後片付けも終えて風間はベッド、不知火は座布団、ーーーは床に腰を落ち着ける。

「風間に呼ばれて来たんだ。聞いてねぇのか?」

「初耳」

ーーーがギッと睨んでも風間は気にする素振りを見せない。

「家を無人にするわけにはいかんだろう。」

しれっと言う風間に眉間を押さえる。

「でも…風間様が来てくださらなかったら私は死んでたし…風間様が不知火さんを呼ばなかったら今頃ここは妖に占拠されてたし…」

うー、と唸ってからーーーは姿勢を正し、頭を下げた。

「ありがとうございました」

「…まぁ、良いだろう」

「…なんかむかつく」

不遜な態度の風間を再び睨むが本人はどこ吹く風だ。

ーーーは大きくため息をつき、だらしなく床に寝そべる

「……風間様って呼ぶの嫌になってきた。敬うって感じじゃ無いもん。」

「何を言う」

「風間千景だから…ちー様でいいや。」

「………」

「よし、決まり。ちー様。」

ガバッと起き上がり、太陽のように笑うーーー。

「……悪くない」

視線を外しながらそういう風間に、また不知火は笑い転げた。

「じゃあ、不知火さんにもあだ名つけてあげるよ」

「お?ばっちこい!」

「んー…不知火だから…ぬいぬい!!」

「マジかよ!?」

ドヤ顔であだ名をつけるーーーに、コントのように転がる不知火。

「決まり。ぬいぬいね。」

「しゃーねぇな!!」

「あははははっ!よろしくね!ぬいぬい!!」

会ったばかりだというのにすっかり打ち解ける不知火とーーー。

「………」

風間はそんな2人を面白くなさそうに眺める。

それを感じ取った不知火はよっこいしょと言いながら立ち上がった。

「じゃあ、俺はそろそろ行くぜ。」

そう言って窓を大きく開き、ベランダの手すりに立つ不知火。

「え、ちょっと、ぬいぬい!ここ2階…」

ーーーは慌ててベランダまで駆ける。

「じゃあな!!」

その言葉とともに、不知火は中空へその身を投げた。

「ぬいぬい!!?」

ーーーが手すりにかじりついた時には、もう不知火の姿は消えていた。

「…鬼って…凄い…」

手すりから身を乗り出してぽつりとつぶやく。

「あまり身を乗り出すと落ちるぞ」

のそりとベランダに出てきた風間はそう言ってーーーを抱き上げる。

「はぁーい」

ベランダに足をつけ風間の方へくるりと振り返る。

風が、ふわりと彼女の髪を撫でた。

「ところで、ちー様はいつ帰るの?」

「何の話だ?」

「え?」

「命を救った恩を忘れたのか」

「…え?」

戸惑うーーーの隣に立つ風間。

「俺はここに住む。その間、妖どもを退けてやる。だから貴様は寝食の世話をしろ。」


「えー!!?」

「恩を忘れたのか?」

迷いのない風間の言葉。

「…わかりました…」

狼狽えながらも頷くーーーに風間は満足げに微笑んだ。


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