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天撃を超えた先に

「岸川、何が何でも消えるんじゃ無いぞ…!」

中山はそう口にしながら岸川宅に向かって全力で走る。
定期的に遊びに行っていたから慣れているはずの道が、今はとてつもない距離に感じる。

「クソッ…まだかよ…」

より一層焦りが深まる。
それでも足を止める訳にはいかない。
疲労が溜まりながらも、全力で走り続ける。

「そろそろか…!」

馴染みの家が見えた瞬間、謎の違和感を覚える。

「いつもならもっと人がいるのに、今日は全然いないな…」

そんなことを思っていると、最も恐れていた事が起きてしまった。

「あれ、俺はなんでここまで急いで来たんだ?」

中山は、
『全員が忘れると消滅するから自分は絶対に忘れない。』
そう心に決めたはずなのに、肝心なところで忘れてしまったのだ。
これでは、わざわざ走ってきた苦労が水の泡だ。

「大事なことだった気がするのに思い出せない…」

中山は何を忘れたのか思い出そうと必死に思考を巡らせる。
しかし、思い出すことが出来ない。
それよりも異様なくらいの人の少なさが気になって仕方が無い。

「何かあったのか…」

そう口にした時には、本来の目的を思い出すことさえも忘れていた…
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