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天撃を超えた先に

「一体何を企んでるんだ!」

含みのある言い方に何かを感じた中山が問いただす。

「今から何かする訳でも無い。」

「ただ、君の知っている人間は既にこちら側だがな。」

思考を巡らせた中山は、まさかという表情を浮かべる。

「お前、岸川に何かしたのか!?」

「我は何もしていない。」

「だが、死者に魂を吸い取られている。」

今まで知り得なかった事実が淡々と分かっていく。

「確かに最近見てなかったな…」

そう声が漏れると同時に岸川の家に体が自然と動き始めていた。

「待て。」

ドスの効いた声が響く。

「急がなきゃいけないんだよ!」

焦りと呼び止められた怒りが混雑する表情を浮かべる。

「死者に魂を吸い取られた人間は、すぐには消えないようになっている。」

「吸い取られてから数日間は生活をしていけるが、そこからは周りが存在を忘れ始める。誰もが忘れた時、吸い取られた人間は完全に消える。そして、元々いなかったようになる。」

統治する者は、珍しくこれだけは聞いておけと言わんばかりに丁寧に魂を吸い取られた人間の末路を語った。

「吸い取られた人は元に戻ることって出来るのか?」

中山は少しの希望でも無くすまいと問う。

「無理だ。」

希望を砕く一言が響く。

「しかし、誰か1人でも忘れなければ僅かながら消滅は遅らせることは出来る。」

絶望の中に最後の手段は残されていた。

「それなら、まだ希望はある!」

そう言い残し、中山は部屋を飛び出した。

「吸い取られて6日目、厳しいとは思うが…」

統治する者がそう呟いたとは知らずに…
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