天撃を超えた先に
「この世界はあまりにも死に無関心が過ぎる。」
さっきまで平田だった、死者の世界を統治する者は、今まで中山たちが生活していた世界について語り始めた。
「身内以外の人間が死んでも、誰も気に止めることが無い。
身内の誰かが死んでも、社会は弔うことより仕事を優先させている。」
正論を言われ、言葉が出ない中山の事など気にしない様子で淡々と言葉を続けていく。
「今の世界は死者がこちらの世界に来ようとしない。それは何故か。
今まで生きてきた世界で弔うこともされず忘れられるから、少しでも痕跡を残そうとする。
だから、今お前のいる世界は歪みきっているのだ。」
「それなら俺たち生きている側はちゃんと弔ってやればいいのか?」
中山は問う。
「それも必要だ。だが、死んだ者のことを片隅にでも覚えておくことも必要だ。何故か分かるか。」
統治する者は間を置いて、また語り始めた。
「この世界にある、『彼岸』というもので戻ってくる為だ。誰か1人でも覚えていないと縁が鍵となる死者にとっては、帰ることすら許されないことになるからだ。」
中山は、今までの生活を振り返る。
言われてみれば、祖父が死んだ時は仕事をしていたし、通夜も告別式も参加していない。
定期的に墓参りはするが、特段意識などしていなかった。
統治する者が言う事に対して納得がいくが、ここで疑問が生まれる。
「なんでそこまで詳しく知ってるそぶりなんだ。」
「この体で全て見てきたからだ。」
統治する者は平田を依り代にしているから当然なのだが、中山はそのことを失念していた。
「それなら、今からどうするんだよ。」
そう問う中山に
「もっと死を身近にする。」
そう不穏な答えを出す統治する者だった…
さっきまで平田だった、死者の世界を統治する者は、今まで中山たちが生活していた世界について語り始めた。
「身内以外の人間が死んでも、誰も気に止めることが無い。
身内の誰かが死んでも、社会は弔うことより仕事を優先させている。」
正論を言われ、言葉が出ない中山の事など気にしない様子で淡々と言葉を続けていく。
「今の世界は死者がこちらの世界に来ようとしない。それは何故か。
今まで生きてきた世界で弔うこともされず忘れられるから、少しでも痕跡を残そうとする。
だから、今お前のいる世界は歪みきっているのだ。」
「それなら俺たち生きている側はちゃんと弔ってやればいいのか?」
中山は問う。
「それも必要だ。だが、死んだ者のことを片隅にでも覚えておくことも必要だ。何故か分かるか。」
統治する者は間を置いて、また語り始めた。
「この世界にある、『彼岸』というもので戻ってくる為だ。誰か1人でも覚えていないと縁が鍵となる死者にとっては、帰ることすら許されないことになるからだ。」
中山は、今までの生活を振り返る。
言われてみれば、祖父が死んだ時は仕事をしていたし、通夜も告別式も参加していない。
定期的に墓参りはするが、特段意識などしていなかった。
統治する者が言う事に対して納得がいくが、ここで疑問が生まれる。
「なんでそこまで詳しく知ってるそぶりなんだ。」
「この体で全て見てきたからだ。」
統治する者は平田を依り代にしているから当然なのだが、中山はそのことを失念していた。
「それなら、今からどうするんだよ。」
そう問う中山に
「もっと死を身近にする。」
そう不穏な答えを出す統治する者だった…