「平田！何してるんだよ！！！」

中山がそう叫ぶが平田は返事をしない。というより、感情が無いかのように無反応だ。

「おい！何か言ってくれよ！！！」

また反応が無い。ただ立っているだけ。
まるで人形のようだ。平田の目に生気は感じられず、虚空を見つめるかのように焦点が合っている感じもしなかった。

「この世の中全ては狂っている。粛清を始めなければならない。」

突然発せられた言葉に中山は固まる。

「粛清？そんなこと普段言ったこと無かっただろ…」

驚きと恐怖が入り交じった声が虚空に響く。

「ほう…もう1人いるとは聞いていたが、お前だったのか。こんな近くに隠れていたとはな。」

梶本は中山などいなかったかのように平然と平田に向かって言葉を投げる。

「もう少し隠れていたかったが、貴様が動いた以上不用意に隠れた方が危険だ。」

淡々と言葉を返す平田は、朝までとは全く違う人格のようだった。

「平田は一体何なんだ！教えてくれよ！！」

梶本に詰め寄ると案外簡単に教えてくれた。

「彼女は死者の生きる世界を統治する者。生きた人間を依り代として、現実世界と死者の世界を行き来していたのだ。」

淡々と語る梶本についていけない中山はただただ呆然としているだけだった。