短編 連載『君が好きだと言えたらいいのに』
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『君が好きだと言えたらいいのに』
第六話「勇気をくれた一冊」
――ガイ視点
あの日から一週間。
俺は図書館へ行くことをためらっていた。
はるの顔を見たい。
話したい。
そう思う反面、あの笑顔を見てしまったら、また胸が苦しくなる気がした。
「……情けないな。」
助手席に置いた図書館の本を見つめる。
返却期限は今日まで。
行かないわけにはいかなかった。
⸻
夕方。
自動ドアが静かに開く。
館内はいつもと変わらない静けさだった。
(……いる。)
カウンターにははるがいた。
目が合う。
一瞬だけ驚いた顔をしたあと、いつもの優しい笑顔になった。
「こんにちは、ガイさん。」
「……こんにちは。」
少しぎこちない。
それでもはるは気にした様子もなく、本を受け取る。
「返却ですね。」
「ああ。」
貸出処理を終えると、はるは何かを思い出したように立ち上がった。
「あっ、少し待っていてください。」
本棚の方へ歩いていく。
しばらくして、一冊の文庫本を抱えて戻ってきた。
「これ。」
差し出された本の表紙には、小さな花の絵が描かれていた。
「ガイさんに読んでほしくて。」
「……俺に?」
「はい。」
少し照れたように笑う。
「前からおすすめしようと思っていたんです。」
胸が熱くなる。
「俺のために選んでくれたのか?」
「はい。」
その一言だけで十分だった。
俺は勘違いしていた。
はるは誰にでも優しい。
でも、この本を選んでくれた時間は。
きっと俺のためだけの時間だった。
「ありがとう。」
自然と笑顔がこぼれる。
はるも安心したように笑った。
「よかった。」
⸻
その日の帰り道。
駅まで歩く途中、俺は思い切って口を開いた。
「はる。」
「はい?」
名前で呼ぶ。
それだけで心臓が跳ねた。
はるは少し驚きながらも嬉しそうに微笑む。
「この前……悪かった。」
「え?」
「急に帰ったり、そっけなくしたり。」
はるは少し考えてから、ふっと笑った。
「やっぱり気にしてたんですね。」
「……すまない。」
「私、嫌われちゃったのかなって思ってました。」
その言葉に思わず足を止めた。
「違う!」
思ったより大きな声が出る。
道行く人が少しこちらを見る。
「あ……悪い。」
はるはくすっと笑った。
「ふふっ。」
「嫌いになるわけない。」
そう言った瞬間、言葉が止まる。
はるも黙って俺を見つめていた。
夕焼けが二人を赤く染める。
「俺は……。」
言いたい。
今なら言える。
“好きだ”
その一言だけなのに。
「……。」
喉まで出かかった言葉が、また飲み込まれる。
「どうしました?」
「いや……。」
結局、笑ってごまかしてしまう。
「ありがとう。その本、大事に読む。」
「はい。」
はるは少しだけ寂しそうに笑った。
⸻
家へ帰り、借りた本を開く。
栞が一枚、挟まっていた。
そこにははるの丸い字で短い言葉が書かれている。
『私も主人公のように想いを届けたくて。
ーーあなたが図書館へ来てくれてありがとう。 はる』
その文字を見た瞬間、胸が締めつけられた。
「…… はる。」
栞をそっと握りしめる。
もう逃げたくない。
伝えなければ、何も始まらない。
もし断られたとしても。
このまま何も言えずに後悔する方が、ずっとつらい。
俺は静かに立ち上がり、窓の外の夜空を見上げた。
「次に会ったら。」
深く息を吸う。
「ちゃんと伝えよう。」
その決意とともに、胸の中で何度も繰り返した。
――君が好きだ。
その言葉を、今度こそはる本人に届けるために。
第六話「勇気をくれた一冊」
――ガイ視点
あの日から一週間。
俺は図書館へ行くことをためらっていた。
はるの顔を見たい。
話したい。
そう思う反面、あの笑顔を見てしまったら、また胸が苦しくなる気がした。
「……情けないな。」
助手席に置いた図書館の本を見つめる。
返却期限は今日まで。
行かないわけにはいかなかった。
⸻
夕方。
自動ドアが静かに開く。
館内はいつもと変わらない静けさだった。
(……いる。)
カウンターにははるがいた。
目が合う。
一瞬だけ驚いた顔をしたあと、いつもの優しい笑顔になった。
「こんにちは、ガイさん。」
「……こんにちは。」
少しぎこちない。
それでもはるは気にした様子もなく、本を受け取る。
「返却ですね。」
「ああ。」
貸出処理を終えると、はるは何かを思い出したように立ち上がった。
「あっ、少し待っていてください。」
本棚の方へ歩いていく。
しばらくして、一冊の文庫本を抱えて戻ってきた。
「これ。」
差し出された本の表紙には、小さな花の絵が描かれていた。
「ガイさんに読んでほしくて。」
「……俺に?」
「はい。」
少し照れたように笑う。
「前からおすすめしようと思っていたんです。」
胸が熱くなる。
「俺のために選んでくれたのか?」
「はい。」
その一言だけで十分だった。
俺は勘違いしていた。
はるは誰にでも優しい。
でも、この本を選んでくれた時間は。
きっと俺のためだけの時間だった。
「ありがとう。」
自然と笑顔がこぼれる。
はるも安心したように笑った。
「よかった。」
⸻
その日の帰り道。
駅まで歩く途中、俺は思い切って口を開いた。
「はる。」
「はい?」
名前で呼ぶ。
それだけで心臓が跳ねた。
はるは少し驚きながらも嬉しそうに微笑む。
「この前……悪かった。」
「え?」
「急に帰ったり、そっけなくしたり。」
はるは少し考えてから、ふっと笑った。
「やっぱり気にしてたんですね。」
「……すまない。」
「私、嫌われちゃったのかなって思ってました。」
その言葉に思わず足を止めた。
「違う!」
思ったより大きな声が出る。
道行く人が少しこちらを見る。
「あ……悪い。」
はるはくすっと笑った。
「ふふっ。」
「嫌いになるわけない。」
そう言った瞬間、言葉が止まる。
はるも黙って俺を見つめていた。
夕焼けが二人を赤く染める。
「俺は……。」
言いたい。
今なら言える。
“好きだ”
その一言だけなのに。
「……。」
喉まで出かかった言葉が、また飲み込まれる。
「どうしました?」
「いや……。」
結局、笑ってごまかしてしまう。
「ありがとう。その本、大事に読む。」
「はい。」
はるは少しだけ寂しそうに笑った。
⸻
家へ帰り、借りた本を開く。
栞が一枚、挟まっていた。
そこにははるの丸い字で短い言葉が書かれている。
『私も主人公のように想いを届けたくて。
ーーあなたが図書館へ来てくれてありがとう。 はる』
その文字を見た瞬間、胸が締めつけられた。
「…… はる。」
栞をそっと握りしめる。
もう逃げたくない。
伝えなければ、何も始まらない。
もし断られたとしても。
このまま何も言えずに後悔する方が、ずっとつらい。
俺は静かに立ち上がり、窓の外の夜空を見上げた。
「次に会ったら。」
深く息を吸う。
「ちゃんと伝えよう。」
その決意とともに、胸の中で何度も繰り返した。
――君が好きだ。
その言葉を、今度こそはる本人に届けるために。
