短編 連載『君が好きだと言えたらいいのに』
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『君が好きだと言えたらいいのに』
第五話 「すれ違う心」
―― はる視点
「……ガイさん。」
帰っていく背中を見つめながら、小さく名前を呼んだ。
もちろん届くはずもない。
いつもなら駅まで一緒に歩いてくれる。
他愛もない話をして、笑って。
それが、少しずつ当たり前になっていた。
でも今日は違った。
「今日は少し急ぐから。」
そう言って帰ってしまった。
あんなに寂しそうな笑顔をするガイさんを、初めて見た。
(私……何かしちゃったのかな。)
考えても答えは出ない。
ため息をついて、閉館作業へ戻った。
⸻
翌日。
昼休み。
職員室で同僚のティアさんが笑いながら聞いてきた。
「はるちゃん、最近よく話してる人いるよね?」
「え?」
「背の高いイケメンかな。」
思わず顔が熱くなる。
「ガイさんのこと?」
「名前まで知ってるんだ。」
「そ、それは利用者さんだから!」
慌てて否定すると、ティアさんは楽しそうに笑う。
「優しそうな人だよね。」
「うん。」
自然と笑顔になる。
「すごく優しい人。」
「好きなんじゃない?」
その一言に、胸がドキッとした。
「えっ!?」
「図星?」
「ち、違います!」
慌てれば慌てるほど、ティアさんは笑う。
「でも、はるちゃんあの人と話してる時だけ楽しそう。」
そう言われて初めて気づいた。
(私……。)
いつからだろう。
ガイさんが来る曜日を楽しみにしていた。
入口の自動ドアが開くたびに、つい目で探してしまう。
本を選ぶ真剣な横顔。
照れながら笑う表情。
優しい声。
全部。
もっと見ていたいと思ってしまう。
(……好き。)
その気持ちを認めた瞬間。
胸が温かくなった。
⸻
数日後。
いつもの曜日。
私は朝から少し落ち着かなかった。
(今日は来てくれるかな。)
時計を見る。
午後四時。
四時半。
五時。
まだ来ない。
(仕事が忙しいのかな。)
少しだけ寂しくなる。
閉館まであと三十分。
その時。
自動ドアが開いた。
「……ガイさん。」
思わず笑顔になる。
来てくれた。
それだけで胸が弾んだ。
でも。
ガイさんはどこか元気がなかった。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
少しぎこちない。
以前のように目も合わせてくれない。
(やっぱり……。)
嫌われちゃったのかな。
そんな考えが頭をよぎる。
勇気を出して聞いてみた。
「最近、お仕事忙しいですか?」
「ああ……少しな。」
また無理に笑っている。
嘘だ。
ガイさんは嘘をつくと少しだけ目を逸らす。
私はもう知っていた。
「……。」
聞きたい。
どうしたのか。
私が何かしたのか。
でも聞けない。
私たちは、まだ”図書館の職員と利用者”だから。
その距離がもどかしかった。
⸻
閉館後。
ガイさんを見送る。
今日も一緒には帰れなかった。
私は一冊の本を胸に抱きしめる。
それはガイさんに貸そうと思って選んだ本だった。
表紙には、こんな言葉が書かれている。
『あなたが好きだと言えたらいいのに。』
「……ガイさん。」
小さく呟く。
「また、一緒に帰りたいです。」
その願いは夜空へ溶けていった。
第五話 「すれ違う心」
―― はる視点
「……ガイさん。」
帰っていく背中を見つめながら、小さく名前を呼んだ。
もちろん届くはずもない。
いつもなら駅まで一緒に歩いてくれる。
他愛もない話をして、笑って。
それが、少しずつ当たり前になっていた。
でも今日は違った。
「今日は少し急ぐから。」
そう言って帰ってしまった。
あんなに寂しそうな笑顔をするガイさんを、初めて見た。
(私……何かしちゃったのかな。)
考えても答えは出ない。
ため息をついて、閉館作業へ戻った。
⸻
翌日。
昼休み。
職員室で同僚のティアさんが笑いながら聞いてきた。
「はるちゃん、最近よく話してる人いるよね?」
「え?」
「背の高いイケメンかな。」
思わず顔が熱くなる。
「ガイさんのこと?」
「名前まで知ってるんだ。」
「そ、それは利用者さんだから!」
慌てて否定すると、ティアさんは楽しそうに笑う。
「優しそうな人だよね。」
「うん。」
自然と笑顔になる。
「すごく優しい人。」
「好きなんじゃない?」
その一言に、胸がドキッとした。
「えっ!?」
「図星?」
「ち、違います!」
慌てれば慌てるほど、ティアさんは笑う。
「でも、はるちゃんあの人と話してる時だけ楽しそう。」
そう言われて初めて気づいた。
(私……。)
いつからだろう。
ガイさんが来る曜日を楽しみにしていた。
入口の自動ドアが開くたびに、つい目で探してしまう。
本を選ぶ真剣な横顔。
照れながら笑う表情。
優しい声。
全部。
もっと見ていたいと思ってしまう。
(……好き。)
その気持ちを認めた瞬間。
胸が温かくなった。
⸻
数日後。
いつもの曜日。
私は朝から少し落ち着かなかった。
(今日は来てくれるかな。)
時計を見る。
午後四時。
四時半。
五時。
まだ来ない。
(仕事が忙しいのかな。)
少しだけ寂しくなる。
閉館まであと三十分。
その時。
自動ドアが開いた。
「……ガイさん。」
思わず笑顔になる。
来てくれた。
それだけで胸が弾んだ。
でも。
ガイさんはどこか元気がなかった。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
少しぎこちない。
以前のように目も合わせてくれない。
(やっぱり……。)
嫌われちゃったのかな。
そんな考えが頭をよぎる。
勇気を出して聞いてみた。
「最近、お仕事忙しいですか?」
「ああ……少しな。」
また無理に笑っている。
嘘だ。
ガイさんは嘘をつくと少しだけ目を逸らす。
私はもう知っていた。
「……。」
聞きたい。
どうしたのか。
私が何かしたのか。
でも聞けない。
私たちは、まだ”図書館の職員と利用者”だから。
その距離がもどかしかった。
⸻
閉館後。
ガイさんを見送る。
今日も一緒には帰れなかった。
私は一冊の本を胸に抱きしめる。
それはガイさんに貸そうと思って選んだ本だった。
表紙には、こんな言葉が書かれている。
『あなたが好きだと言えたらいいのに。』
「……ガイさん。」
小さく呟く。
「また、一緒に帰りたいです。」
その願いは夜空へ溶けていった。
