短編 連載『君が好きだと言えたらいいのに』
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『君が好きだと言えたらいいのに』
第二話「また、会えた」
――ガイ視点
「……また来ちまった。」
仕事帰り。
気づけば俺は図書館の前に立っていた。
今日は資料を借りる用事なんてない。
それなのに足が勝手にここへ向かっていた。
(もし、今日はいなかったら……。)
そんなことを考えながら自動ドアをくぐる。
静かな館内を見渡す。
すると──
「あ。」
カウンターの向こうで本を整理する彼女が目に入った。
俺に気づくと、ふわりと笑う。
「こんにちは。」
「こ、こんにちは。」
……また緊張した。
たった一言なのに声が少し裏返る。
彼女は気づいていないのか、優しく笑ったままだ。
「今日は資料探しですか?」
「いや……その。」
どう言えばいい。
“あなたに会いに来ました”なんて言えるわけがない。
「本を……読もうと思って。」
嘘ではない。
でも本当の理由でもない。
「それでしたら、おすすめがありますよ。」
彼女は近くの棚へ歩いていく。
「ガイさんは、前に歴史や建築の本を借りていましたよね?」
俺は目を丸くした。
「覚えてくれてたのか?」
「もちろんです。」
少し照れたように笑う。
「利用者さんが借りた本って、意外と覚えてるんですよ。」
胸が少し熱くなった。
(俺のこと……覚えてくれてた。)
それだけで嬉しかった。
彼女は一冊の文庫本を差し出す。
「歴史が好きなら、この小説も面白いですよ。」
「ありがとう。」
本を受け取ると、指先が少しだけ触れた。
「っ……。」
思わず息をのむ。
彼女は何事もなかったように微笑んでいる。
俺だけが勝手に動揺していた。
(落ち着け……俺。)
そんな様子がおかしかったのか。
「ガイさんって。」
「え?」
「少し緊張しやすいですよね。」
「……そんなに分かるか?」
「ふふ。」
彼女は口元を隠して笑った。
「でも、優しい人なんだろうなって思います。」
その一言で。
心臓が大きく跳ねた。
(優しい……俺が?)
「どうしてそう思うんだ?」
「本を戻すときも、一冊ずつ丁寧でしたから。」
そんなところまで見ていたのか。
「本が好きなんですね。」
「……まあな。」
「私もです。」
その瞬間だった。
好きなものが同じだと知っただけなのに。
胸の距離が少しだけ縮まった気がした。
閉館を知らせる音楽が流れる。
「あ、もうこんな時間。」
「すみません、長く話しちゃって。」
「いえ。」
彼女は首を横に振る。
「また来てくださいね。」
その言葉だけで十分だった。
「……ああ。」
図書館を出る。
夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。
手には借りた一冊の本。
そして胸の中には、さっきの笑顔。
「また来てくださいね。」
その言葉が何度も頭の中で繰り返される。
俺は思わず笑ってしまった。
「……来るに決まってるだろ。」
気づけば、次に図書館へ行く日を考えていた。
それはもう、本を借りるためではなく──
彼女に会うためだった。
第二話「また、会えた」
――ガイ視点
「……また来ちまった。」
仕事帰り。
気づけば俺は図書館の前に立っていた。
今日は資料を借りる用事なんてない。
それなのに足が勝手にここへ向かっていた。
(もし、今日はいなかったら……。)
そんなことを考えながら自動ドアをくぐる。
静かな館内を見渡す。
すると──
「あ。」
カウンターの向こうで本を整理する彼女が目に入った。
俺に気づくと、ふわりと笑う。
「こんにちは。」
「こ、こんにちは。」
……また緊張した。
たった一言なのに声が少し裏返る。
彼女は気づいていないのか、優しく笑ったままだ。
「今日は資料探しですか?」
「いや……その。」
どう言えばいい。
“あなたに会いに来ました”なんて言えるわけがない。
「本を……読もうと思って。」
嘘ではない。
でも本当の理由でもない。
「それでしたら、おすすめがありますよ。」
彼女は近くの棚へ歩いていく。
「ガイさんは、前に歴史や建築の本を借りていましたよね?」
俺は目を丸くした。
「覚えてくれてたのか?」
「もちろんです。」
少し照れたように笑う。
「利用者さんが借りた本って、意外と覚えてるんですよ。」
胸が少し熱くなった。
(俺のこと……覚えてくれてた。)
それだけで嬉しかった。
彼女は一冊の文庫本を差し出す。
「歴史が好きなら、この小説も面白いですよ。」
「ありがとう。」
本を受け取ると、指先が少しだけ触れた。
「っ……。」
思わず息をのむ。
彼女は何事もなかったように微笑んでいる。
俺だけが勝手に動揺していた。
(落ち着け……俺。)
そんな様子がおかしかったのか。
「ガイさんって。」
「え?」
「少し緊張しやすいですよね。」
「……そんなに分かるか?」
「ふふ。」
彼女は口元を隠して笑った。
「でも、優しい人なんだろうなって思います。」
その一言で。
心臓が大きく跳ねた。
(優しい……俺が?)
「どうしてそう思うんだ?」
「本を戻すときも、一冊ずつ丁寧でしたから。」
そんなところまで見ていたのか。
「本が好きなんですね。」
「……まあな。」
「私もです。」
その瞬間だった。
好きなものが同じだと知っただけなのに。
胸の距離が少しだけ縮まった気がした。
閉館を知らせる音楽が流れる。
「あ、もうこんな時間。」
「すみません、長く話しちゃって。」
「いえ。」
彼女は首を横に振る。
「また来てくださいね。」
その言葉だけで十分だった。
「……ああ。」
図書館を出る。
夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。
手には借りた一冊の本。
そして胸の中には、さっきの笑顔。
「また来てくださいね。」
その言葉が何度も頭の中で繰り返される。
俺は思わず笑ってしまった。
「……来るに決まってるだろ。」
気づけば、次に図書館へ行く日を考えていた。
それはもう、本を借りるためではなく──
彼女に会うためだった。
