短編 ガイ夢小説
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琥珀色の特等席
少しだけ開け放たれた窓から、夜の心地よい涼風が吹き込んで、部屋のカーテンを静かに揺らしている。
机の上のランプが、暖かみのある琥珀色の光で室内を柔らかく満たしていた。
「ん……、あぁ、おかえり。待ってたよ」
ソファに背中を預け、長旅の疲れを癒やすようにくつろいでいたガイが、あなたに気づいて顔をほころばせた。
いつものきっちりとした旅装とは違い、上着のベストは前がはだけ、白いシャツのボタンもいくつか外されている。首元のチョーカーが、心なしかいつもより少し艶っぽく見えた。片手には読みかけの古い音機関の書。その着崩した無防備な姿は、この部屋が彼にとって、そしてあなたにとって、本当に安心できる場所である証拠だった。
「そんなにじっと見つめられると、さすがの俺でも照れるな。……それとも、この格好、変だったかい?」
いたずらっぽく微笑みながら、ガイは本をサイドテーブルに置く。そこには、まだ湯気がうっすらと立ち上る紅茶が二つのカップに注がれていた。あなたの分も、ちゃんと用意して待っていたのだ。
「ほら、おいで。せっかくの特等席が空いてるんだから」
ガイはぽんぽんと、自分のすぐ隣のスペースを叩く。
いつもなら「女性に対して失礼のないように」と一歩引くはずの彼が、今は少しだけ我が儘に、あなたを自分の世界へと引き込もうとしている。
彼に促されるまま隣に腰を下ろすと、ふわりとガイの香りと、温かい紅茶の香りが混ざり合って鼻腔をくすぐった。
すかさず、彼の手があなたの肩を優しく抱き寄せ、そのまま自分の肩へと頭を預けさせる。
「今日も一日、お疲れ様。こうして君と静かに過ごす時間が、俺にとっては一番の贅沢なんだ」
耳元で響く低い声は、いつもの快活なトーンよりもずっと優しく、鼓膜を甘く揺らす。
ガイの大きな手が、あなたの髪をそっと指先で梳いた。
外の世界がどんなに騒がしくても、この琥珀色の光に包まれた部屋の中だけは、二人だけの特別な時間がゆっくりと流れていく。
予期せぬ奇襲と、彼の本音
「うわっと……!?」
不意に胸元へ飛び込んできたあなたの重みを受け止めて、ガイの身体がソファの上で大きく跳ねた。
いつもなら、どんな敵の奇襲だって軽くいなすはずの彼が、今は完全に無防備だ。慌てて回された彼の左手はあなたの背中を、右手はきつく抱きしめるべきか、それとも頭を撫でるべきか迷うように、あなたの髪のあたりを泳いでいる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ……! 君、急にどうしたんだい?」
耳元で、ガイの心臓がトクトクと速い鐘のように鳴り響いているのが伝わってくる。その鼓動の激しさに、抱きついているあなたの方まで顔が熱くなってしまいそうだ。
ガイは「女性恐怖症」だ。
けれど、あなたがこうして触れることに対して、彼が覚えているのは恐怖なんかではない。もっと別の、男としての純粋な動揺と戸惑いだった。
「……あー、いや。嫌なわけじゃないんだ。むしろ、君からこうしてきてくれるなんて、夢にも思わなかったから……」
そう言いながら、ガイは困ったように、けれどひどく愛おしそうに眉を下げて息を吐き出した。
はだけたシャツ越しに、彼の肌の熱がダイレクトにあなたへと伝わってくる。
ようやく覚悟を決めたのか、彼の大きな手が、ゆっくりとあなたの背中に回された。少しだけ、いつもより強い力で引き寄せられる。
「でも、ずるいな。そんな可愛い顔で飛び込まれたら……俺だって、いつもみたいに『格好いい大人』でいられなくなるかもしれないだろ?」
耳元で小さく呟かれた声は、困ったような、どこか照れくさそうな熱を帯びていた。
「一緒にいたい。」
そう伝えると、彼は頷いた。
「……うん、もちろん。俺だって、ずっと一緒にいたいよ」
胸元に顔を埋めたままそう呟いたあなたに、ガイは優しく、けれど噛みしめるように深く頷いた。
背中に回された彼の腕に、ぎゅっと少しだけ力がこもる。まるで、あなたという大切な存在を、もう二度と離さないと誓うかのように。
「君がそう言ってくれるなら、俺はどこにだって行くし、どんなことからも君を守る。……だから、これからも俺の隣にいてくれるかい?」
彼の胸の鼓動は、さっきまでの激しい動揺から、今は深く穏やかな、温かいリズムへと変わっていた。
ランプの琥珀色の光が、静かに二人を包み込んでいく。夜風がカーテンを揺らす中、ガイはあなたの髪にそっと愛おしそうに唇を寄せた。
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