第二部「 運命に抗い、交錯する想い」
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プロローグ ーガイ視点ー
シンクの奴、速い。
攻撃が当たらない。
どうする。
はるはもう限界だ。
息も乱れ、肩で呼吸をしている。
俺が助けないと。
上がっていた息を調える。
「抵抗するだけ無駄だ」
「お前っ!」
シンクは不敵に笑う。
ガイは睨みつける。
「なんだっ!」
「お前、知っているか?」
「ーー僕が思い出させてあげるさ」
シンクは意識を集中させた。
「!?」
ガイは頭を抑えた。
「くっ‥‥!」
頭が重く、痛い。
意識が薄れてくる。
頭の奥で、何かが弾けた。
景色が歪む。
昔の記憶が断片的に流れ混んでくる。
あれは。
ーーホドの屋敷か。
炎が揺らめく光景が見えた。
「ガイ‥」
誰かが俺を呼ぶ。
「ここに隠れるのよ」
「姉さん‥」
幼い頃の声。
目の前にいるのは――
幼い俺と、姉さん。
これは……。
俺の、記憶……?
景色がゆっくりと形を変えていく。
目の前に広がったのは、見覚えのある豪奢な屋敷だった。
第十話「失われた記憶」
俺はホドの貴族の屋敷に生まれた。
屋敷の中では、一番年下だった。
あの日は俺が5歳になる誕生日。
棚の上にあるおもちゃが取れずに、泣きわめく。
当時はよく泣いて怒られる、泣き虫だ。
姉のマリィは見兼ねて、しゃがみ込む。
ガイと同じ目線になった。
「ガイ?あなたは男の子ですから」
「もう少し、しっかりしてください」
「?」
幼い俺は、不思議そうに首をかしげる。
懐かしい。
姉さんは俺を叱っては、すぐに心配してくれた。
いつもこんなふうに笑っていた。
「姉上、わかりません」
困ったように答える幼い俺。
豪華な衣装を身にまとった姉さんが、小さく笑う。
その声に、もう一人の青年が口を開く。
ガイとマリィの顔を見る。
「そう言われましても」
「ガイは困った顔をしている」
「その辺にしておかれては」
「今日は誕生日なんだ。そんなに叱らなくてもいいだろう」
ヴァン。
あの頃は、優しかった。
頼れる兄のような存在だった。
マリィは不機嫌そうに声を上げる。
「ヴァン!何を言っているんです!」
「ガルディオス家に相応しい、跡取りになるんですよ!」
「あなたが甘やかすからですよ」
「私は甘やかしてないが」
ヴァンは首を横に振る。
マリィはヴァンに詰め寄る。
しばらくして、観念したマリィ。
「ガイ、泣かないで。もう‥お姉様が取ってあげますから」
ーーあれは、いつだったか。
俺の、五歳の誕生日。
その瞬間ーー。
焼けるような痛みが頭を駆け巡る。
幼い頃の記憶。
姉の笑顔。
ヴァンの優しい声。
屋敷――。
炎。
悲鳴。
「やめろ‥!」
ガイは膝をつく。
「ガイ!」
はるはガイに駆け寄る。
「大丈夫!?」
ガイの意識はまだ過去へ引きずられていた。
その隙を、シンクは見逃さない。
「隙だらけだよ!」
風の譜術が一直線に放たれる。
「ガイ!!」
はるは迷うことなく飛び出した。
「やめろ!!」
ガイが叫び、手を伸ばす。
届かない。
時間だけがゆっくりと流れるようだった。
ドンッ――!
「……っ!」
「はる!!」
ガイの目の前で、はるが攻撃を受ける。
赤い雫が地面へ落ちた。
その瞬間――
ドクン。
ガイの鼓動が大きく響く。
幼い自分。
「ガイ! 逃げて!」
姉が自分を庇ったあの日。
炎の中。
血に染まる姉。
そして今――
目の前ではるが、自分を庇っている。
「あ……」
すべてが繋がった。
忘れていた記憶。
封じ込めていた感情。
あの日の真実。
すべてが鮮明に蘇る。
忘れたはずの痛みも。
姉を失った絶望も。
そして――
俺は、もう二度と同じ後悔はしない。
ガイはゆっくりと立ち上がる。
「違う‥」
「もう……誰も失わない」
「二度と同じ後悔はしない」
その瞳には、迷いはなかった。
シンクの奴、速い。
攻撃が当たらない。
どうする。
はるはもう限界だ。
息も乱れ、肩で呼吸をしている。
俺が助けないと。
上がっていた息を調える。
「抵抗するだけ無駄だ」
「お前っ!」
シンクは不敵に笑う。
ガイは睨みつける。
「なんだっ!」
「お前、知っているか?」
「ーー僕が思い出させてあげるさ」
シンクは意識を集中させた。
「!?」
ガイは頭を抑えた。
「くっ‥‥!」
頭が重く、痛い。
意識が薄れてくる。
頭の奥で、何かが弾けた。
景色が歪む。
昔の記憶が断片的に流れ混んでくる。
あれは。
ーーホドの屋敷か。
炎が揺らめく光景が見えた。
「ガイ‥」
誰かが俺を呼ぶ。
「ここに隠れるのよ」
「姉さん‥」
幼い頃の声。
目の前にいるのは――
幼い俺と、姉さん。
これは……。
俺の、記憶……?
景色がゆっくりと形を変えていく。
目の前に広がったのは、見覚えのある豪奢な屋敷だった。
第十話「失われた記憶」
俺はホドの貴族の屋敷に生まれた。
屋敷の中では、一番年下だった。
あの日は俺が5歳になる誕生日。
棚の上にあるおもちゃが取れずに、泣きわめく。
当時はよく泣いて怒られる、泣き虫だ。
姉のマリィは見兼ねて、しゃがみ込む。
ガイと同じ目線になった。
「ガイ?あなたは男の子ですから」
「もう少し、しっかりしてください」
「?」
幼い俺は、不思議そうに首をかしげる。
懐かしい。
姉さんは俺を叱っては、すぐに心配してくれた。
いつもこんなふうに笑っていた。
「姉上、わかりません」
困ったように答える幼い俺。
豪華な衣装を身にまとった姉さんが、小さく笑う。
その声に、もう一人の青年が口を開く。
ガイとマリィの顔を見る。
「そう言われましても」
「ガイは困った顔をしている」
「その辺にしておかれては」
「今日は誕生日なんだ。そんなに叱らなくてもいいだろう」
ヴァン。
あの頃は、優しかった。
頼れる兄のような存在だった。
マリィは不機嫌そうに声を上げる。
「ヴァン!何を言っているんです!」
「ガルディオス家に相応しい、跡取りになるんですよ!」
「あなたが甘やかすからですよ」
「私は甘やかしてないが」
ヴァンは首を横に振る。
マリィはヴァンに詰め寄る。
しばらくして、観念したマリィ。
「ガイ、泣かないで。もう‥お姉様が取ってあげますから」
ーーあれは、いつだったか。
俺の、五歳の誕生日。
その瞬間ーー。
焼けるような痛みが頭を駆け巡る。
幼い頃の記憶。
姉の笑顔。
ヴァンの優しい声。
屋敷――。
炎。
悲鳴。
「やめろ‥!」
ガイは膝をつく。
「ガイ!」
はるはガイに駆け寄る。
「大丈夫!?」
ガイの意識はまだ過去へ引きずられていた。
その隙を、シンクは見逃さない。
「隙だらけだよ!」
風の譜術が一直線に放たれる。
「ガイ!!」
はるは迷うことなく飛び出した。
「やめろ!!」
ガイが叫び、手を伸ばす。
届かない。
時間だけがゆっくりと流れるようだった。
ドンッ――!
「……っ!」
「はる!!」
ガイの目の前で、はるが攻撃を受ける。
赤い雫が地面へ落ちた。
その瞬間――
ドクン。
ガイの鼓動が大きく響く。
幼い自分。
「ガイ! 逃げて!」
姉が自分を庇ったあの日。
炎の中。
血に染まる姉。
そして今――
目の前ではるが、自分を庇っている。
「あ……」
すべてが繋がった。
忘れていた記憶。
封じ込めていた感情。
あの日の真実。
すべてが鮮明に蘇る。
忘れたはずの痛みも。
姉を失った絶望も。
そして――
俺は、もう二度と同じ後悔はしない。
ガイはゆっくりと立ち上がる。
「違う‥」
「もう……誰も失わない」
「二度と同じ後悔はしない」
その瞳には、迷いはなかった。
