第一部「ガイと出会い、仲間たちと旅をする」
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第二十五話「炭鉱の街へ、焦る心」
デオ峠を越えた先――。
眼下には、鉱山都市アクゼリュスが広がっていた。
しかし、本来なら活気に満ちているはずの街は、不気味な瘴気に包まれ、煙が立ち上っている。
「……酷い」
ティアが息を呑む。
ルークも思わず拳を握り締めた。
「急ごう!」
だが、その声に返事をする者はいない。
ジェイドは無言で前を向き、ナタリアは住民の姿を探し、アニスも表情を曇らせる。
重苦しい空気だけが流れていた。
ルークは唇を噛み締める。
(……やっぱり、俺……)
そんな彼を、はるだけが静かに見つめていた。
「ルーク」
優しく声を掛ける。
「今は考え込まないで。助けられる命を助けよう」
ルークは小さく頷いた。
「ああ」
そのやり取りを、少し離れた場所からガイが見ていた。
(……嫌な予感がする)
彼は誰にも告げず、ルークの後を追う決意を固める。
街へ入ると、そこは地獄だった。
倒れ込む鉱夫。
泣き叫ぶ子ども。
瘴気に咳き込む老人。
ジェイドは即座に指示を飛ばす。
「ナタリア、負傷者の保護を」
「アニス、一旦住民を広場へ」
「イオン様は無理をなさらずに」
「了解!」
仲間たちは散っていく。
一方ではるは周囲を見渡した。
「ティア……」
「ええ」
二人は同時に頷く。
ヴァンがこの街へ来ている。
それだけは確信していた。
「私はセブンスフォニムで探る」
「私はパッセージリングを調べるわ」
極秘に行動を開始した。
ーーその頃。
ルークは一人、街外れへ歩いていた。
「ルーク」
聞き慣れた声。
「師匠!」
ヴァンだった。
「よく来たな」
穏やかな笑み。
「ルーク、待ってください。‥あなたは」
そこへ。
イオンはルークを追って、付いてきた様子。
だが、その場にいたイオンは身体を震わせた。
「……ヴァン」
(何かが、おかしい……)
ヴァンは振り返ることなく、歩き出す。
「こちらへ来い、ルーク」
ルークは迷わず、後を追う。
その背後には、物陰から様子を窺うガイの姿があった。
(やっぱり……)
一方、はるは瞳を閉じていた。
淡い蒼い光が身体を包む。
セブンスフォニムが町中へ広がっていく。
「……見つけた」
ヴァンの居場所。
この真下に、パッセージリング中心部。
すぐさまティアへ意識を集中。
無線のようにティアへ連絡する。
(ティア! ヴァンは中心部よ!)
(分かった!)
二人は全力で駆け出した。
ーーパッセージリング内部。
ヴァンはルークへ振り返り、ヴァンは静かに微笑んだ。
「ルーク」
「お前の力を見せてみろ」
「超振動を」
「え……」
ルークは戸惑う。
「どうすれば……」
ヴァンは穏やかな口調のまま、一歩近づいた。
「あの日、教えただろう」
「……約束の言葉だ」
ルークの瞳が揺れる。
その瞬間――。
「おい! 何をやっている!」
ガイが飛び出した。
しかし、それより早く。
ヴァンの口が静かに動く。
「──愚かなレプリカルーク」
その言葉がルークの力を開放する。
「ぐあああああああっ!!」
蒼白い閃光。
轟音。
パッセージリング全体が激しく震え始めた。
「くっ!‥大丈夫か!?」
「ルーク!?」
ガイはルークに駆け寄る。
その瞬間。
「やめて!!」
はるとティアが到着した。
「ルーク! やめて!」
しかし、暴走は止まらない。
ルークは力の反動で、気を失い倒れる。
はるは辺りを見渡す。
パッセージリング。
大地を支える、光の柱。
光は、セブンスフォニムだ。
今まで感じたことのないほど、
濃いセブンスフォニムが流れている。
まだ‥修復できる可能性がある。
それなら。
「まだ……間に合う!」
はるは震える両手をパッセージリングへ向けた。
暴走する譜式。
超振動によって崩れ、消えかけた紋様。
(ルークが消してしまった部分を……)
(私が繋ぐ……!)
黄金色の譜力が指先から溢れる。
欠けた譜式を上書きするように、一つひとつ再構築していく。
まるで壊れた楽譜を書き直すように。
身体中が焼けるように熱い。
呼吸は浅くなり、指先の感覚も薄れていく。
それでも。
(お願い…… まだ諦めたくない……!)
(ゲームで見た通りなら……!)
(上書きできれば、少しは崩壊を遅らせられるはず……!)
震えてる、でもこれならきっと‥できる。
「はる!!」
地面は揺らぐ。
巨大な光柱が空を突き抜けた。
アクゼリュス全体が激しく揺れる。
「地面が……!」
「崩れる!!」
その様子を見ていた、紅い髪の青年が剣を抜く。
「……何をしてやがる!」
アッシュだった。
一直線にヴァンへ斬りかかる。
「覚悟しろっ!」
だが。
「甘い!」
ドンと銃声が鳴り響き。
リグレットが立ちはだかった。
「邪魔をするな」
ヴァンは静かに笑う。
「アッシュ。お前には来てもらおう」
「くっ……!」
「メシュティアリカ‥。お前には譜歌(ふか)がある。それで‥」
ヴァンの視線はティアを見つめた後、はるに向けられる。
「彼女は一体、何を‥」
「閣下! もう限界です!」
ヴァンは僅かに口角を上げた。
「‥面白い」
リグレットがヴァンに言うと、アッシュの姿は光に飲まれ、ヴァン、リグレットとともに消え去った。
その頃――。
「急げ!」
ジェイドの指示が飛ぶ。
「子どもを先に!」
ナタリアは倒れた老人を支え、兵士たちは住民を次々とタルタロスへ誘導する。
アニスは子どもを泣いている子を励まし、避難先へ連れていく。
「まだ向こうに人がいます!」
「急ぎなさい!」
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……
大地が激しく揺れ始める。
「始まったか……!」
ジェイドは歯を食いしばった。
だが、はるが稼いだわずかな時間のおかげで、多くの住民は避難を終えていた。
「全員離れろ!!」
直後――
地鳴り。
空を裂くような轟音。
巨大な光柱がアクゼリュスを包み込む。
「なっ……!」
ジェイドは目を見開いた。
「まさか……!」
崩れ落ちる大地。
砕ける岩盤。
沈みゆく街。
「このままじゃ……!」
はるは震える手を再び、パッセージリングへ向ける。
「お願い……止まって……!」
蒼い光が黄金へと変わる。
セブンスフォニムが完全に解放された。
膨大な譜力が暴走するリングを包み込む。
「はる!!」
ティアが叫ぶ。
「駄目! その力は身体が……!」
「みんなを……守る……!」
「はる‥ひとりじゃない」
「あなたに力を貸すわ」
「ティア‥。行くよ!」
「ええ!」
ティアははるに手を添える。
すると、2人の力が重なり。
光が世界を覆った。
暴走は徐々に収まっていく。
しかし。
街全体を救うことはできなかった。
崩壊は止まらない。
それでも、はるが稼いだわずかな時間によって、多くの住民は避難することができた。
「……これで……」
はるの身体から力が抜ける。
「はる!!」
ティアがその身体を抱き止めた。
アクゼリュスは、ゆっくりとクリフォトへ沈み始める。
巨大な岩盤が砕け、街並みが音を立てて崩れていく。
タルタロスへ避難すると、ティアは 譜歌(ふか)を歌い、タルタロス全体を包み込む。
仲間たちはただ、その光景を見つめることしかできなかった。
その一方でガイは気を失うルークを見つめる。
「……ルーク」
返事はない。
崩れゆくアクゼリュスを背に。
誰もまだ、この悲劇の本当の始まりを知らなかった。
デオ峠を越えた先――。
眼下には、鉱山都市アクゼリュスが広がっていた。
しかし、本来なら活気に満ちているはずの街は、不気味な瘴気に包まれ、煙が立ち上っている。
「……酷い」
ティアが息を呑む。
ルークも思わず拳を握り締めた。
「急ごう!」
だが、その声に返事をする者はいない。
ジェイドは無言で前を向き、ナタリアは住民の姿を探し、アニスも表情を曇らせる。
重苦しい空気だけが流れていた。
ルークは唇を噛み締める。
(……やっぱり、俺……)
そんな彼を、はるだけが静かに見つめていた。
「ルーク」
優しく声を掛ける。
「今は考え込まないで。助けられる命を助けよう」
ルークは小さく頷いた。
「ああ」
そのやり取りを、少し離れた場所からガイが見ていた。
(……嫌な予感がする)
彼は誰にも告げず、ルークの後を追う決意を固める。
街へ入ると、そこは地獄だった。
倒れ込む鉱夫。
泣き叫ぶ子ども。
瘴気に咳き込む老人。
ジェイドは即座に指示を飛ばす。
「ナタリア、負傷者の保護を」
「アニス、一旦住民を広場へ」
「イオン様は無理をなさらずに」
「了解!」
仲間たちは散っていく。
一方ではるは周囲を見渡した。
「ティア……」
「ええ」
二人は同時に頷く。
ヴァンがこの街へ来ている。
それだけは確信していた。
「私はセブンスフォニムで探る」
「私はパッセージリングを調べるわ」
極秘に行動を開始した。
ーーその頃。
ルークは一人、街外れへ歩いていた。
「ルーク」
聞き慣れた声。
「師匠!」
ヴァンだった。
「よく来たな」
穏やかな笑み。
「ルーク、待ってください。‥あなたは」
そこへ。
イオンはルークを追って、付いてきた様子。
だが、その場にいたイオンは身体を震わせた。
「……ヴァン」
(何かが、おかしい……)
ヴァンは振り返ることなく、歩き出す。
「こちらへ来い、ルーク」
ルークは迷わず、後を追う。
その背後には、物陰から様子を窺うガイの姿があった。
(やっぱり……)
一方、はるは瞳を閉じていた。
淡い蒼い光が身体を包む。
セブンスフォニムが町中へ広がっていく。
「……見つけた」
ヴァンの居場所。
この真下に、パッセージリング中心部。
すぐさまティアへ意識を集中。
無線のようにティアへ連絡する。
(ティア! ヴァンは中心部よ!)
(分かった!)
二人は全力で駆け出した。
ーーパッセージリング内部。
ヴァンはルークへ振り返り、ヴァンは静かに微笑んだ。
「ルーク」
「お前の力を見せてみろ」
「超振動を」
「え……」
ルークは戸惑う。
「どうすれば……」
ヴァンは穏やかな口調のまま、一歩近づいた。
「あの日、教えただろう」
「……約束の言葉だ」
ルークの瞳が揺れる。
その瞬間――。
「おい! 何をやっている!」
ガイが飛び出した。
しかし、それより早く。
ヴァンの口が静かに動く。
「──愚かなレプリカルーク」
その言葉がルークの力を開放する。
「ぐあああああああっ!!」
蒼白い閃光。
轟音。
パッセージリング全体が激しく震え始めた。
「くっ!‥大丈夫か!?」
「ルーク!?」
ガイはルークに駆け寄る。
その瞬間。
「やめて!!」
はるとティアが到着した。
「ルーク! やめて!」
しかし、暴走は止まらない。
ルークは力の反動で、気を失い倒れる。
はるは辺りを見渡す。
パッセージリング。
大地を支える、光の柱。
光は、セブンスフォニムだ。
今まで感じたことのないほど、
濃いセブンスフォニムが流れている。
まだ‥修復できる可能性がある。
それなら。
「まだ……間に合う!」
はるは震える両手をパッセージリングへ向けた。
暴走する譜式。
超振動によって崩れ、消えかけた紋様。
(ルークが消してしまった部分を……)
(私が繋ぐ……!)
黄金色の譜力が指先から溢れる。
欠けた譜式を上書きするように、一つひとつ再構築していく。
まるで壊れた楽譜を書き直すように。
身体中が焼けるように熱い。
呼吸は浅くなり、指先の感覚も薄れていく。
それでも。
(お願い…… まだ諦めたくない……!)
(ゲームで見た通りなら……!)
(上書きできれば、少しは崩壊を遅らせられるはず……!)
震えてる、でもこれならきっと‥できる。
「はる!!」
地面は揺らぐ。
巨大な光柱が空を突き抜けた。
アクゼリュス全体が激しく揺れる。
「地面が……!」
「崩れる!!」
その様子を見ていた、紅い髪の青年が剣を抜く。
「……何をしてやがる!」
アッシュだった。
一直線にヴァンへ斬りかかる。
「覚悟しろっ!」
だが。
「甘い!」
ドンと銃声が鳴り響き。
リグレットが立ちはだかった。
「邪魔をするな」
ヴァンは静かに笑う。
「アッシュ。お前には来てもらおう」
「くっ……!」
「メシュティアリカ‥。お前には譜歌(ふか)がある。それで‥」
ヴァンの視線はティアを見つめた後、はるに向けられる。
「彼女は一体、何を‥」
「閣下! もう限界です!」
ヴァンは僅かに口角を上げた。
「‥面白い」
リグレットがヴァンに言うと、アッシュの姿は光に飲まれ、ヴァン、リグレットとともに消え去った。
その頃――。
「急げ!」
ジェイドの指示が飛ぶ。
「子どもを先に!」
ナタリアは倒れた老人を支え、兵士たちは住民を次々とタルタロスへ誘導する。
アニスは子どもを泣いている子を励まし、避難先へ連れていく。
「まだ向こうに人がいます!」
「急ぎなさい!」
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……
大地が激しく揺れ始める。
「始まったか……!」
ジェイドは歯を食いしばった。
だが、はるが稼いだわずかな時間のおかげで、多くの住民は避難を終えていた。
「全員離れろ!!」
直後――
地鳴り。
空を裂くような轟音。
巨大な光柱がアクゼリュスを包み込む。
「なっ……!」
ジェイドは目を見開いた。
「まさか……!」
崩れ落ちる大地。
砕ける岩盤。
沈みゆく街。
「このままじゃ……!」
はるは震える手を再び、パッセージリングへ向ける。
「お願い……止まって……!」
蒼い光が黄金へと変わる。
セブンスフォニムが完全に解放された。
膨大な譜力が暴走するリングを包み込む。
「はる!!」
ティアが叫ぶ。
「駄目! その力は身体が……!」
「みんなを……守る……!」
「はる‥ひとりじゃない」
「あなたに力を貸すわ」
「ティア‥。行くよ!」
「ええ!」
ティアははるに手を添える。
すると、2人の力が重なり。
光が世界を覆った。
暴走は徐々に収まっていく。
しかし。
街全体を救うことはできなかった。
崩壊は止まらない。
それでも、はるが稼いだわずかな時間によって、多くの住民は避難することができた。
「……これで……」
はるの身体から力が抜ける。
「はる!!」
ティアがその身体を抱き止めた。
アクゼリュスは、ゆっくりとクリフォトへ沈み始める。
巨大な岩盤が砕け、街並みが音を立てて崩れていく。
タルタロスへ避難すると、ティアは 譜歌(ふか)を歌い、タルタロス全体を包み込む。
仲間たちはただ、その光景を見つめることしかできなかった。
その一方でガイは気を失うルークを見つめる。
「……ルーク」
返事はない。
崩れゆくアクゼリュスを背に。
誰もまだ、この悲劇の本当の始まりを知らなかった。
