序盤 ガイと出会い、仲間たちと旅をする
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第2話「宿の灯りと、探る瞳」
宿の扉が再び開き、ガイが軽やかに戻ってきた。
「部屋、取っておいた。腹、減ってるだろ?」
「……はい」
「じゃあ、まずは飯だな」
ガイに案内され、暖炉の近くのテーブルへ座る。木の温もりとパンの香ばしい匂いが、心を落ち着けてくれた。
「ここのスープはうまいぞ。体も温まるし」
ほどなくして運ばれてきたのは、湯気を立てるスープと焼きたてのパン。
「いただきます」
一口飲むと、野菜の甘みと香草の香りが口いっぱいに広がる。
「……おいしい」
ガイは嬉しそうに口角を上げた。
「だろ? この味が恋しくて、俺もつい寄っちまう」
スープを飲みながら、ガイは視線をこちらに向けたまま軽く尋ねてきた。
「それで…… はるは、どこから来たんだ?」
「……遠いところです」
曖昧に返すと、彼は「ふぅん」と小さく相槌を打った。
「服もそうだし、さっきの……“スマホ”って言ったか? あれも珍しい。俺の知ってるどこの街にもない」
「……説明は難しいんです」
すると、ガイは肩をすくめて笑った。
「無理に話さなくてもいいさ。嫌がることを聞く趣味はない」
その言葉に、胸の奥が少し温かくなる。
ゲームの中で何度も見た優しさが、今はすぐ隣にある。
「ただ、一つだけ覚えておけ。困ったら、俺を頼れ」
ガイはそう言って、グラスの水を一口飲んだ。
炎に照らされる横顔は穏やかで、それでいてどこか鋭さもある――まるで全てを見透かしているようだった。
この人に出会ったこと、それ自体が私の運命を変えてしまう気がして――
その予感は、静かに胸に根を下ろしていった。
第3話「朝の光と、街の鼓動」
翌朝、窓から差し込む光で目が覚めた。
木枠の窓の外には青空と、どこか懐かしい鳥の鳴き声。
ここが現実だと、まだ信じきれないまま、私は顔を洗いに部屋を出た。
廊下の先で、ガイが壁にもたれて待っていた。
「おはよう。よく眠れたか?」
「……はい。おかげさまで」
「じゃあ、腹ごしらえしたら街を案内してやる。朝市もやってるしな」
一階の食堂でパンと卵の簡単な朝食を済ませ、ガイと外へ出る。
朝の市場は昨日よりも活気づいていて、通りには花を売る露店や果物を山積みにした屋台が並んでいた。
「この街は交易の中継地なんだ。色んな国の物や人が集まってくる」
「……にぎやかですね」
「だろ? ただ、にぎやかってことは、それだけトラブルも多い。昨日みたいにな」
そう言ってガイはちらりと私を見やった。
私のポケットのスマホは、ちゃんと中に入っている。
露店の間を歩きながら、視線の端に見知った景色が映る。
――この通り……ゲームで見たことがある。
この先には、確か……。
心臓が少し早く打ち始める。
「どうした?」
「あ……いえ、何でも」
「……ふーん」
ガイは深く追及せず、代わりに露店の花束を一つ買った。
「宿に飾っとけ。部屋が明るくなる」
花を受け取った手が、ほんのりと温かい。
「なぁ、はる」
「はい?」
「あんた、本当に面白い。昨日会ったばかりなのに、なぜか放っとけないんだよな」
その言葉に、胸の奥がふっと熱くなる。
そして同時に――私は知っている。この先に待っている出来事を。
それを変えるべきなのか、それともただ見守るべきなのか。
答えは、まだ出せなかった。
第4話「運命の影」
市場を抜け、港の見える高台へ出た。
潮風が頬を撫で、遠くで船の帆が揺れている。
私の頭の中には、ひとつの光景がよみがえっていた――この街で起こる、あの事件のこと。
「なぁ、はる」
ガイの声に、はっと顔を上げる。
「さっきから難しい顔してるぞ。港の景色が気に入らないか?」
「……そんなことないです」
つい笑ってみせたが、胸の奥のざわめきは消えない。
そのとき、背後から金属がぶつかるような音が響いた。
「……おい、あれ」
ガイの視線の先には、路地の奥で揉み合う数人の男たち。
一人がこちらに気づき、ニヤリと笑って駆け出してくる。
「下がってろ」
ガイは短くそう言い、私の前に立った。
男の手には短剣が光る。けれどガイは一歩も引かない。
「……ったく、朝から物騒だな」
低く呟くと、次の瞬間には相手の手首を払って武器を奪い、地面に叩きつけていた。
「大丈夫か?」
振り返った彼の表情は、いつもの笑顔ではなく真剣そのもの。
「……はい」
声が少し震えてしまう。
男たちが去った後、ガイは息を吐き、また軽口を戻した。
「まったく…… はるは引き寄せるタイプなのかもな。昨日も今日も危なっかしい」
「そんなつもりは……」
「なら、なおさら俺のそばにいろ」
その言葉が胸に残る。
私は知っている、この先の展開を。
そして今、目の前の彼が確かに私を守ってくれたことも――。
もし私が知っている物語を変えられるとしたら、彼を救うこともできるのだろうか。
その答えは、まだ見つからなかった。
第5話「静かな灯と、胸の奥の言葉」
港からの帰り道、夕焼けが石畳をオレンジ色に染めていた。
ガイは先を歩きながらも、時折振り返って私の歩調に合わせてくれる。
「今日は色々あったな。……疲れてないか?」
「少しだけ。でも……楽しかったです」
そう答えると、ガイはふっと目を細めた。
宿に戻ると、暖炉には既に火が入り、パンとスープの匂いが広がっていた。
ガイは食堂の奥の席に腰を下ろし、手で向かいの椅子を示す。
「座れよ。せっかくだから、もう少し話そう」
グラスに注がれた水の中で氷が小さく揺れる。
「はる、昨日も思ったけど……あんたは不思議だな」
「不思議……ですか?」
「普通、初めて会った相手にここまで心を開かせるのは難しい。俺も、そういうのは得意じゃないんだが」
その言葉に少し驚く。
画面越しで見ていた“軽やかなガイ”は、いつでも人懐っこくて、誰とでも距離を詰められると思っていたから。
「……昔、色々あったんだよ。人と距離を置く癖がついててな」
一瞬だけ、彼の瞳が遠くを見た気がした。
「でも、あんたは……なんだか、懐かしい感じがする」
心臓が跳ねる。私がこの世界を知っていることなんて、彼は知らないはずなのに。
「……ありがとうございます」
ただそれだけ返すのが精一杯だった。
ガイは笑みを取り戻し、軽くグラスを掲げる。
「これからもよろしくな、はる」
その声は穏やかで、どこか誓いのように響いていた。
もし――この人が抱える運命を変えられるなら。
そのとき、私は迷わず手を伸ばすだろう。
第6話「変わる運命、変える決意」
昼下がりの市場は、朝よりも落ち着いていた。
でも、その穏やかさの中に、なんか妙な違和感があった。
道の端で何かをコソコソ話してる男たち。遠くの路地からは金属がぶつかる音。
――知ってる。このあと、この街で事件が起こる。
「顔色悪いぞ」
振り返ると、ガイが心配そうに覗き込んでくる。
「……ちょっと、気になることがあって」
彼はしばらく私を見てたけど、それ以上は何も言わずに歩き出した。
ふと、露店のガラスに映った自分の姿を見て足が止まった。
Tシャツにジーンズ――どう見ても、この世界じゃ浮いてる。
ガイがそれを見て、苦笑する。
「やっぱ目立つな、その格好。……ちょっと知り合いのとこ寄るか」
案内されたのは、小さな仕立て屋。
店主の女性はガイを見ると笑顔で迎え、私を上から下まで見て頷いた。
「旅人さんには、これが似合うわね」
柔らかな生成りのブラウスと、動きやすいスカート。肩には薄いショールも掛けられる。
「……ありがとうございます」
鏡に映る自分は、少しだけこの世界に馴染んで見えた。
そのあと、ガイは別の店に寄り、小ぶりな杖を手に取った。
「あんた、護身用くらいは持っとけ。魔物じゃなくても、人間相手に役立つ」
「……いいの?」
「俺がそうしたいんだ」
杖を握る手に、自然と力が入った。
この世界で生き抜くため――そして、知ってるはずの物語を変えるため。
あたしはもう、ただ見てるだけじゃいられない。
「……ガイ」
「ん?」
「もし危ないことがあっても、あたし逃げないから。ガイを守るためにね」
ガイは少し驚いたようにこっちを見て、それから微笑んだ。
「……頼もしいじゃないか。じゃあ、背中は任せたぞ」
夕暮れの市場を歩きながら、あたしは心の中で固く誓った。
この物語は、もう“ゲームの結末”のままにはさせない。
宿の扉が再び開き、ガイが軽やかに戻ってきた。
「部屋、取っておいた。腹、減ってるだろ?」
「……はい」
「じゃあ、まずは飯だな」
ガイに案内され、暖炉の近くのテーブルへ座る。木の温もりとパンの香ばしい匂いが、心を落ち着けてくれた。
「ここのスープはうまいぞ。体も温まるし」
ほどなくして運ばれてきたのは、湯気を立てるスープと焼きたてのパン。
「いただきます」
一口飲むと、野菜の甘みと香草の香りが口いっぱいに広がる。
「……おいしい」
ガイは嬉しそうに口角を上げた。
「だろ? この味が恋しくて、俺もつい寄っちまう」
スープを飲みながら、ガイは視線をこちらに向けたまま軽く尋ねてきた。
「それで…… はるは、どこから来たんだ?」
「……遠いところです」
曖昧に返すと、彼は「ふぅん」と小さく相槌を打った。
「服もそうだし、さっきの……“スマホ”って言ったか? あれも珍しい。俺の知ってるどこの街にもない」
「……説明は難しいんです」
すると、ガイは肩をすくめて笑った。
「無理に話さなくてもいいさ。嫌がることを聞く趣味はない」
その言葉に、胸の奥が少し温かくなる。
ゲームの中で何度も見た優しさが、今はすぐ隣にある。
「ただ、一つだけ覚えておけ。困ったら、俺を頼れ」
ガイはそう言って、グラスの水を一口飲んだ。
炎に照らされる横顔は穏やかで、それでいてどこか鋭さもある――まるで全てを見透かしているようだった。
この人に出会ったこと、それ自体が私の運命を変えてしまう気がして――
その予感は、静かに胸に根を下ろしていった。
第3話「朝の光と、街の鼓動」
翌朝、窓から差し込む光で目が覚めた。
木枠の窓の外には青空と、どこか懐かしい鳥の鳴き声。
ここが現実だと、まだ信じきれないまま、私は顔を洗いに部屋を出た。
廊下の先で、ガイが壁にもたれて待っていた。
「おはよう。よく眠れたか?」
「……はい。おかげさまで」
「じゃあ、腹ごしらえしたら街を案内してやる。朝市もやってるしな」
一階の食堂でパンと卵の簡単な朝食を済ませ、ガイと外へ出る。
朝の市場は昨日よりも活気づいていて、通りには花を売る露店や果物を山積みにした屋台が並んでいた。
「この街は交易の中継地なんだ。色んな国の物や人が集まってくる」
「……にぎやかですね」
「だろ? ただ、にぎやかってことは、それだけトラブルも多い。昨日みたいにな」
そう言ってガイはちらりと私を見やった。
私のポケットのスマホは、ちゃんと中に入っている。
露店の間を歩きながら、視線の端に見知った景色が映る。
――この通り……ゲームで見たことがある。
この先には、確か……。
心臓が少し早く打ち始める。
「どうした?」
「あ……いえ、何でも」
「……ふーん」
ガイは深く追及せず、代わりに露店の花束を一つ買った。
「宿に飾っとけ。部屋が明るくなる」
花を受け取った手が、ほんのりと温かい。
「なぁ、はる」
「はい?」
「あんた、本当に面白い。昨日会ったばかりなのに、なぜか放っとけないんだよな」
その言葉に、胸の奥がふっと熱くなる。
そして同時に――私は知っている。この先に待っている出来事を。
それを変えるべきなのか、それともただ見守るべきなのか。
答えは、まだ出せなかった。
第4話「運命の影」
市場を抜け、港の見える高台へ出た。
潮風が頬を撫で、遠くで船の帆が揺れている。
私の頭の中には、ひとつの光景がよみがえっていた――この街で起こる、あの事件のこと。
「なぁ、はる」
ガイの声に、はっと顔を上げる。
「さっきから難しい顔してるぞ。港の景色が気に入らないか?」
「……そんなことないです」
つい笑ってみせたが、胸の奥のざわめきは消えない。
そのとき、背後から金属がぶつかるような音が響いた。
「……おい、あれ」
ガイの視線の先には、路地の奥で揉み合う数人の男たち。
一人がこちらに気づき、ニヤリと笑って駆け出してくる。
「下がってろ」
ガイは短くそう言い、私の前に立った。
男の手には短剣が光る。けれどガイは一歩も引かない。
「……ったく、朝から物騒だな」
低く呟くと、次の瞬間には相手の手首を払って武器を奪い、地面に叩きつけていた。
「大丈夫か?」
振り返った彼の表情は、いつもの笑顔ではなく真剣そのもの。
「……はい」
声が少し震えてしまう。
男たちが去った後、ガイは息を吐き、また軽口を戻した。
「まったく…… はるは引き寄せるタイプなのかもな。昨日も今日も危なっかしい」
「そんなつもりは……」
「なら、なおさら俺のそばにいろ」
その言葉が胸に残る。
私は知っている、この先の展開を。
そして今、目の前の彼が確かに私を守ってくれたことも――。
もし私が知っている物語を変えられるとしたら、彼を救うこともできるのだろうか。
その答えは、まだ見つからなかった。
第5話「静かな灯と、胸の奥の言葉」
港からの帰り道、夕焼けが石畳をオレンジ色に染めていた。
ガイは先を歩きながらも、時折振り返って私の歩調に合わせてくれる。
「今日は色々あったな。……疲れてないか?」
「少しだけ。でも……楽しかったです」
そう答えると、ガイはふっと目を細めた。
宿に戻ると、暖炉には既に火が入り、パンとスープの匂いが広がっていた。
ガイは食堂の奥の席に腰を下ろし、手で向かいの椅子を示す。
「座れよ。せっかくだから、もう少し話そう」
グラスに注がれた水の中で氷が小さく揺れる。
「はる、昨日も思ったけど……あんたは不思議だな」
「不思議……ですか?」
「普通、初めて会った相手にここまで心を開かせるのは難しい。俺も、そういうのは得意じゃないんだが」
その言葉に少し驚く。
画面越しで見ていた“軽やかなガイ”は、いつでも人懐っこくて、誰とでも距離を詰められると思っていたから。
「……昔、色々あったんだよ。人と距離を置く癖がついててな」
一瞬だけ、彼の瞳が遠くを見た気がした。
「でも、あんたは……なんだか、懐かしい感じがする」
心臓が跳ねる。私がこの世界を知っていることなんて、彼は知らないはずなのに。
「……ありがとうございます」
ただそれだけ返すのが精一杯だった。
ガイは笑みを取り戻し、軽くグラスを掲げる。
「これからもよろしくな、はる」
その声は穏やかで、どこか誓いのように響いていた。
もし――この人が抱える運命を変えられるなら。
そのとき、私は迷わず手を伸ばすだろう。
第6話「変わる運命、変える決意」
昼下がりの市場は、朝よりも落ち着いていた。
でも、その穏やかさの中に、なんか妙な違和感があった。
道の端で何かをコソコソ話してる男たち。遠くの路地からは金属がぶつかる音。
――知ってる。このあと、この街で事件が起こる。
「顔色悪いぞ」
振り返ると、ガイが心配そうに覗き込んでくる。
「……ちょっと、気になることがあって」
彼はしばらく私を見てたけど、それ以上は何も言わずに歩き出した。
ふと、露店のガラスに映った自分の姿を見て足が止まった。
Tシャツにジーンズ――どう見ても、この世界じゃ浮いてる。
ガイがそれを見て、苦笑する。
「やっぱ目立つな、その格好。……ちょっと知り合いのとこ寄るか」
案内されたのは、小さな仕立て屋。
店主の女性はガイを見ると笑顔で迎え、私を上から下まで見て頷いた。
「旅人さんには、これが似合うわね」
柔らかな生成りのブラウスと、動きやすいスカート。肩には薄いショールも掛けられる。
「……ありがとうございます」
鏡に映る自分は、少しだけこの世界に馴染んで見えた。
そのあと、ガイは別の店に寄り、小ぶりな杖を手に取った。
「あんた、護身用くらいは持っとけ。魔物じゃなくても、人間相手に役立つ」
「……いいの?」
「俺がそうしたいんだ」
杖を握る手に、自然と力が入った。
この世界で生き抜くため――そして、知ってるはずの物語を変えるため。
あたしはもう、ただ見てるだけじゃいられない。
「……ガイ」
「ん?」
「もし危ないことがあっても、あたし逃げないから。ガイを守るためにね」
ガイは少し驚いたようにこっちを見て、それから微笑んだ。
「……頼もしいじゃないか。じゃあ、背中は任せたぞ」
夕暮れの市場を歩きながら、あたしは心の中で固く誓った。
この物語は、もう“ゲームの結末”のままにはさせない。
