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ハジジュ -短編集-

少しでもそばに居たいと思う気持ちは罪なのですか?

刑期が終わり出所してはや数週間。
ジューゴは出たまではいいが路頭に迷っていた。

「いや、マジでどうしたらいいんだろうな」

海を眺めながらジューゴは苦笑いをし、そのまま砂浜へ寝っ転がる。
波の音と鳥のさえずりを聞きながら、ジューゴは右腕を上げ何もついていない手首を眺めた。

「なんか違和感あるな……」

軽く手首を揺らし、いつも見慣れていたアレがないと思うと、不思議と違和感を感じてしまっていた。
身体につけられていた黒い枷を外すことはできた。
そしてソレを作ったエルフたちの組織も壊滅させることもできた。

それじゃあその先は―――?

次なる目的を見つけることができないまま出所したジューゴ。
そしてこの数週間はただ歩き回りながら今後について考えて、無意識に足は色んな場所へ赴き、気がつけば海辺のところに到着していたのだった。

「海に来れば南波刑務所の近くに来ているって思ったんだろうな」

右腕を下して上半身を起こし、潮風を感じながら広がる海を眺める。
煌めく海にジューゴは出所するときに最後に見た南波刑務所からの海を思い出す。
見送りに来た大和からは米を貰い、半泣きしている星太郎からは預かられていた通帳と必要品が入っているリュックを貰った。
最後にジューゴの前に現れたハジメに何を渡され何を言われるのか、少し緊張しながらも見下ろしているハジメの目と合わせようとまっすぐ見つめる。
心臓がうるさく脈立ち、ジューゴはひたすら平常心を装っているとハジメは手を上げ、そのままジューゴの額にデコピンをした。

「二度とこっち側にくんじゃねーぞ」

その一言で終わり、ジューゴは少しヒリつく額をさすりながら去っていくハジメの背中を眺めた。

それが最後の会話であり、最後に見た姿でもあった。

「もう少しなんか言ってくれてもいいだろ……」

あの死闘の中、一緒に戦ってくれたが別れがあんなにもあっさりするものなのかとジューゴにとっては納得いかなかった。
ジューゴにとってはお礼の言葉も言いたかったが、それすらの時間も与えてくれずにハジメは去った。
あれこれ思い出しながらもやもやしていると、気がつけば青空だった空が夕焼けになっていた。ジューゴは立ち上がり、服に着いた砂を叩き落とす。

「嫌われてもいいから言うべきだったな」

自分の本心を―――

好きだって気持ちを―――

これが最後かと思えば―――

「もう一度帰りたい……」

そうつぶやき自然と足は海へと向かいつかる。ひんやりと冷たい感覚がくるが、ジューゴはとくに気にせずに前へ進んで行く。

その先に南波刑務所があるわけでもないのに―――

たどり着くわけもないのに―――

それでも足は前へ進み、足首部分にあった海水は腰あたりまで浸かっていた。
海水を含んだ服は重たく感じていたジューゴだが、気に留めずに歩き続け右腕を上げ夕焼けへ向けて手を伸ばす。

「ハジメ、会いたいよ……」
「なにしてやがんだテメェは!」

かすれた声で名前を呼ぶと、背後から聞こえた懐かしい声にジューゴは足を止める。
ついに幻聴までいってしまったのかと思っていると、ザバザバと海水に抵抗する音と腕を掴まれ無理矢理振り返させられる。

「死ぬつもりかバカが!」

目の前にいるハジメの姿にジューゴは目を見開いた。
海水につかりすぎて幻覚まで見るようになってしまったのかとジューゴはそう思いながら、震える唇を動かし声を発する。

「な……んで?」
「あぁ?テメェにつけていた発信機がずっとここから動いてねぇから見に来たに決まってんだろ」

不穏な言葉を言っていたが、ジューゴの思考は追いついてこれなかった。

これが幻覚でも構わない―――

もう一度会えたなら伝えよう―――

ジューゴはハジメの胸元へ抱き着く。震える指をハジメのシャツを掴んで握り締め、深く息を吸い吐き出しながら思っている言葉を吐き出す。

「ハジメ……好き、好きだ……ずっと、ずっとお前の隣に並んでいたい……」

全部言い終えたあと、満足したジューゴは限界を超えたのか視界は暗くなっていった。
そして目を覚ました時は茶色い天井が見えた。ジューゴは慌てて起き上がり周りを見回す。

「ここ、何処だ?」

全く知らない家具とかがあり、ジューゴはどうしてここにいるのかがわからず首を傾げていると部屋のドアが開く。
ジューゴは入ってくる人物に警戒をしていると、入ってきた相手が誰なのかわかり警戒から驚きへ切り替わる。

「ハッハジメ!?」
「目を覚ましたか」

驚きのあまりに立ち上がったが、いま自分の姿を見たジューゴは顔を赤くする。
着ていたはずの黒ズボンとチェック柄のシャツではなく、ダボっとした白シャツ一枚のみだったからだ。

「なんで俺こんな格好してんだ!?てかなんでハジメ!?え!?なんで!?」
「落ち着けアホ。説明してやるからよ」

そう言われジューゴは大人しく座ると、ハジメは持っていた湯飲みをジューゴへ手渡す。

「まだ身体寒いだろ。これでも飲んで温まれ」
「お、おう……」

渡された湯飲みを受け取り、ジューゴはゆっくりとそれを口元へ運び飲み込む。
流れ込むあったかいお茶に冷えていた身体が温かくなっていき、さっきまでテンパっていた思考も少しは落ち着き始める。

「えっと、なんで俺はハジメのとこにいんだ?」
「海で溺死しようとしたバカを拾った」
「溺死……あっ」

思い出したジューゴは弁解しようとした。
海に入っていたのは無意識でハジメに会いたく進んでいただけであり、自殺するつもりはなかったからだ。

「別に俺、死ぬつもりなかっ「俺が来てなかったら死んでただろ!」

ハジメの怒鳴り声にジューゴはビクッと肩を震わせた。
本気で怒っていると長く付き合っていたジューゴは察していると、突然腕を掴まれ引き起こされる。
手に持っていた湯飲みは床へ落ち、ガシャン!と割れる音が響くがジューゴもハジメも気に留めずただ互いの目を合わせていた。

「俺の隣にいたいなら出ていくときに言いやがれ!」
「言いたくてもお前がすぐに居なくなったから言えなかったんだろ!」
「俺だって何言い出すかわからねぇからすぐに離れたんだよ!」
「なんだよ言い出すかもしれないって!」
「俺のところに来いって言いそうになったんだよドアホ!」

ハジメの発言にジューゴは一瞬目が点になった。
その言葉の意味がなんなのか、思考が遅くなったが少しずつ理解しみるみる顔が熱くなっていくのを感じた。
それを見たハジメは掴んでいた手を離し、軽く舌打ちをし明後日の方角を見る。

「お前はまだ十代だろうが。もっといろんな世界を見るべきなのを、俺が束縛していい理由にならないんだよ」

最後の別れの時にどう声をかけていいのかハジメは悩んでいた。
刑期を終え、出所することはいいことであり、ようやくジューゴは色んなしがらみに開放され自由を手に入れた。
それを今度は自分の欲によって繋ぎ止めることはよくないことだとハジメはそう思い、せめて陰ながら見守ろうと星太郎が持たせていたリュックに発信機を取り付けていた。

そしてこの数週間、発信機は色んな場所へ動いていたが今日だけはずっと動かずリュックをついに落としたのかと考えていたが、地図をよく見てみると海岸付近だと気がつき嫌な予感がしたハジメは慌てて刑務所から出ていった。
目的地に到着してみれば下半身まで海に浸かっているジューゴの後姿を見たときは心臓が止まりそうになり、慌てて海へ飛び込み止めさせた。
顔色が真っ青になっていたジューゴは抱き着き小さい声で言った言葉に、ハジメは思い出しギリッと歯を食いしばる。

「あんだけ俺は我慢していたのに、テメェの言葉で台無しだ!」
「だって、あのタイミグでハジメがいるなんて幻覚かと思って……!だから素直に言っただけだ!」

怒鳴り散らしながら言い合い、ジューゴは息を上げていると突然ハジメに抱き締められる。
強く、強く抱きしめられジューゴは少し息苦しさを感じながらも、ハジメから感じる体温にゆっくりと腕をハジメの背中に回し抱き返す。

「俺は束縛強いからな」
「何年一緒にいたと思ってるんだよ。それぐらいわかってるって」
「俺と別れたいって言っても別れるつもりないからな」
「俺だってハジメのこと好きだから別れたいって思わねーよ」
「……好きだ、ジューゴ」

耳元でささやかれる言葉に、ジューゴはドキッと心臓が鳴り体中が熱くなっていきながらも自然と口元は笑みをこぼす。

「あぁ、俺も好きだハジメ」

腕に力を入れ、強く抱きしめるジューゴにハジメも自然と笑みをこぼした。
そして、ジューゴはハジメの家に同棲することになった。
最初は安定のドジっ子発揮により、いろんな物を壊したり料理も壊滅的になっていたが、そこはハジメと仁志のフォローによって少しずつ改善していった。
一緒に暮らし始めてから数か月後に、ウノたちと連絡を取り合ったジューゴはいまの状況を話したときは驚きの声が炸裂し、押しかけてきたのはそれからさらに数週間後。

「ハジメ」
「なんだ?」
「俺、いますごく幸せだぜ」

ハジメの隣に座り、微笑みながら手を握るジューゴにハジメも握られている手に少し強く握り返す。

「俺もだ」

そう返し、ハジメはジューゴの顔へ近づかせると、ジューゴは自然と目を閉じ互いの唇を重ね合わせた。


END


ハジジュの日なのにあまあまにすることができずに、気がつけばシリアスに少し走っておりました!
ハジメさん、ジューゴくんのリュックにさりげなく発信機をつけている時点でアウトだと思いますが突っ込みしてはいけませんからね!!
ここまで読んでいただきありがとうございました!

2018:1月15日
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