ハジジュ -短編集-
「ハジメ、トリックオアトリート」
手のひらを広げ、その手を差し出しながらそう呟くジューゴ。
看守室で書類の仕事をしていたハジメは作業の手を止め、差し出しているジューゴの手のひらを見つめながら、いつものように脱獄してここまで来たのかと思いながら舌打ちをする。
「てめぇ、人が忙しい時に脱獄すんな」
「だってこの時間、ハジメ一人じゃんか」
そう言って差し出している手のひらをもう一度、ハジメの方へ突き出す。
「だからハジメ、トリックオアトリート」
どうやらお菓子を本当にあげなければ帰る気がないジューゴに、ハジメはちょうど星太郎から貰っていた飴をやってさっさと帰らせようとポケットに手を突っ込んだがその動きを止めた。
あることを思いつきポケットに入れていた飴は出さず、ハジメはニヤリと笑いながらジューゴの方へ体を向かせるように椅子を動かす。
「じゃあイタズラしてみろ」
「えっ?」
「菓子がねぇからイタズラしてみろって言ってるんだ15番」
足を組み、煽らせるように突き出した人差し指を数回折り曲げるハジメ。
まさかそんなこと言われるなんて思わなかったジューゴは、少し瞳を揺らめかせた。
「イタズラ……して、いいのか?」
「お前が先に言ったんだろ「トリックオアトリート」ってな」
そう言われてしまいジューゴはどうしたらいいか悩み、口元に指を当て考え始めた。
やはりなにも考えてなかったのかとハジメは焦っているジューゴの姿を見ながら、勝ち誇ったかのように笑を零した。
「まっ、てめぇにイタズラなんて大したことないと思うけ……」
発している言葉を打ち消すように唇に何かが重なり止められる。
目の前には目を瞑っているジューゴの顔があり、唇から感じる柔らかく温かい感触はきっとジューゴの唇なんだろう。
あまり自分からキスしてこないジューゴが、己の意思でキスをしている。
触れるだけのキスをし、唇を離したジューゴは顔を真っ赤にしながらあさっての方角を向く。
「コ、コレでいいだろ……」
恥ずかしくハジメの顔が見れなかったジューゴはこのままお菓子を貰わずに逃げようかと思った矢先、突然手首を掴まれそのまま勢いよく引っ張られハジメの胸元へ抱き寄せられる。
驚きながらジューゴは顔を上げた瞬間、口を塞がられた。
「んぐっ?!」
重ねられている唇を舌先で割り込み、歯並びを舐められる。
身体を震わせ、驚きで口を開いてしまうと閉じるより先にハジメの舌が中へ入り込む。
「んっ、あっ……んんっ……ふぁっ!」
しつこく絡まれる舌。
離さないと言ってるかのようにきつく絡みつき、撫でてくる舌先はどこも甘い痺れを感じていく。
流れ込んでくる唾液は飲みきれず、口端からこぼれ落ちているが、必死に呼吸をしているジューゴは気づいていなかった。
「んー!んんっ!ふんんんっ!」
ビクビクと身体を震わせ、呼吸が追いつかず限界に近くなったジューゴはハジメに気づいてもらうよう必死に手で胸元を叩く。
それに気がついたハジメは名残惜しそうに、最後はジューゴの舌を引っ張り、その舌先を口の中へ含み「ちゅるっ!」と音を鳴らし離した。
ジューゴの舌先から伸びる唾液の糸はプツリと切れ、顔を赤く染め息をあげ吐息を漏らしたジューゴは「うっ!」と顔色が赤から青へと変色する。
「にっげえええええ!」
口の中がタバコの苦い味にジューゴは叫びながら、机の上にある湯のみに手を伸ばし、湯のみに入っているのお茶を口に含み飲み込む。
一気に飲み干し、空となった湯のみを机の上へ置いたジューゴは大きく息を吐き捨て、キッ!と涙目でハジメを睨みつける。
「ハジメ!いつも言ってんだろ!タバコ吸いたてのときはキスしたくねぇって!!」
一本くらいのタバコの味だったらジューゴはまだ我慢はできた。だが、ハジメはヘビースモーカー。
吸いたてのハジメはタバコ一箱分を吸い尽くしており、とてもではないが舌の味がとてつもなく苦かった。
そこため、ジューゴは吸いたてのハジメからのキスは拒否っており、薄くなるのを待っているのが日常であったが、今回はちょうと吸いたての時にディープなキスをされ口の中は異様なくらいの苦味が襲い掛かったのだ。
当の本人は特に反省する顔もなく、むしろ馬鹿にするように鼻で笑っていた。
「あんなんがイタズラに入るかよガキが。イタズラはこれぐらいやらなきゃダメだろ」
「これのどこがイタズラだ!うぇぇ、まだ苦い味がする……」
手の甲を口元につけ擦りながら顔色悪くしているジューゴ。
そんな態度が気に食わなかったハジメはジューゴの手を掴み、口元から引き離しそのまま自身の顔をジューゴの顔へ近づかせ軽いリップキスを送る。
「おまっ!また!」
「いいから口開けろ」
もう片方の空いてる手を使い、ジューゴの唇に親指を当て開くよう指示するハジメ。
鋭い目つきで見つめられてしまい、視線を外せられないジューゴはゴクリと生唾を飲み込み、うるさく鳴り響く心臓の音が全身へ響き渡る。
苦い味は嫌いだーーー
でも、ハジメとのキスはーーー
気持ちいいからどうでもよくなってしまうーーー
頬を赤く染め自然と口を開いたジューゴに、ハジメはフッと軽く笑いその唇を覆うように食らいつく。
口腔に差し込まれた舌に、またあの苦い味がくるのかとジューゴはそう思っていると、口の中で広がった味は苦味ではなく甘味。
なぜ甘い味がするのか不思議に思っていたが、集中しろと言われるように舌を甘噛みされる。
「んんっ!」
それですらも気持ちよく感じてしまうなんて、自分はマゾなんではないのかと思ってしまうジューゴだが、いまはこの口付けに集中しようと舌を動かす。
少し動かすと、ハジメの舌も応えるように動かし絡みついてくれる。
それがジューゴにとって嬉しく感じ、もっとハジメの気持ちに応えたいと自然と腕はハジメの後頭部に絡ませる。
ハジメも逃がさないようにジューゴの腰に手を当て、自身の身体へ密着するように引き寄せた。
互いの胸は重なり、互いの心臓の鼓動を感じ合う。その心臓の音は心地よく、でも口から聞こえる水音は卑猥っぽくジューゴは恥ずかしく感じていた。
それでも、胸元から感じるハジメの心臓の鼓動はいつもよりうるさく響いている。
よかった、ハジメも感じてもらってるーーー
それがなによりも嬉しく、もっと喜ばせたい気持ちが溢れ出てきていると、ハジメの舌から丸い何かを押し込められる。
ころんっと歯に当たったそれは、ふんわりと蜂蜜の味がし、ジューゴは口を離し中に入っているそれを転がす。
「……飴?」
丸く固いソレは飴玉であり、いつの間に舐めていたのか気になったジューゴだが、もしかしたらタバコの苦味でお茶を一気飲みしている時に食べていたのかもしれないと悟る。
口渡ししたハジメは口についている唾液を舌で舐め取り、ジューゴの頬に手を添えて優しく撫でた。
「それなら苦くねーだろ」
「そうだけどよ……」
口の中にある飴を転がしながら、ジューゴはもじもじと身体を動かし落ち着かない様子をした。
そんなジューゴの態度にハジメは口角を釣り上げ、顔をジューゴの耳元へ近づける。
「そんなものより他のやつが欲しいか?ジューゴ」
耳元に囁きながら、ジューゴの腰から太ももへ撫で下ろすハジメの手。
名前で呼んでくれたことに耳も身体もぞくぞくと甘い痺れが走り、熱い吐息をこぼしながらジューゴは思っていることを口に出す。
「飴よりハジメが欲しい……ハジメ、トリックオアトリート」
「ハッ!上出来だ」
素直に欲を出したジューゴをハジメは褒めてやり、ジューゴを抱きかかえて立ち上がる。
向かう先はもちろん、仮眠室ーーー
「極上の菓子をやるよジューゴ」
そう、今日の中で一番の笑みを見せるハジメにジューゴは明日はきっと布団と友達になっている可能性が高いと思いながらも、嬉しく感じそれに応えるように強く抱き締めた。
おわり
当初はジューゴくんに何か仮装させようと思いましたが、囚人服ですでに仮装かと思い特に何も着せてなかったのが、ちょっと心残りでしたw
ここまで閲覧頂きまして誠にありがとうございました!
皆さん、Trick or Treat!
2017:10/31
手のひらを広げ、その手を差し出しながらそう呟くジューゴ。
看守室で書類の仕事をしていたハジメは作業の手を止め、差し出しているジューゴの手のひらを見つめながら、いつものように脱獄してここまで来たのかと思いながら舌打ちをする。
「てめぇ、人が忙しい時に脱獄すんな」
「だってこの時間、ハジメ一人じゃんか」
そう言って差し出している手のひらをもう一度、ハジメの方へ突き出す。
「だからハジメ、トリックオアトリート」
どうやらお菓子を本当にあげなければ帰る気がないジューゴに、ハジメはちょうど星太郎から貰っていた飴をやってさっさと帰らせようとポケットに手を突っ込んだがその動きを止めた。
あることを思いつきポケットに入れていた飴は出さず、ハジメはニヤリと笑いながらジューゴの方へ体を向かせるように椅子を動かす。
「じゃあイタズラしてみろ」
「えっ?」
「菓子がねぇからイタズラしてみろって言ってるんだ15番」
足を組み、煽らせるように突き出した人差し指を数回折り曲げるハジメ。
まさかそんなこと言われるなんて思わなかったジューゴは、少し瞳を揺らめかせた。
「イタズラ……して、いいのか?」
「お前が先に言ったんだろ「トリックオアトリート」ってな」
そう言われてしまいジューゴはどうしたらいいか悩み、口元に指を当て考え始めた。
やはりなにも考えてなかったのかとハジメは焦っているジューゴの姿を見ながら、勝ち誇ったかのように笑を零した。
「まっ、てめぇにイタズラなんて大したことないと思うけ……」
発している言葉を打ち消すように唇に何かが重なり止められる。
目の前には目を瞑っているジューゴの顔があり、唇から感じる柔らかく温かい感触はきっとジューゴの唇なんだろう。
あまり自分からキスしてこないジューゴが、己の意思でキスをしている。
触れるだけのキスをし、唇を離したジューゴは顔を真っ赤にしながらあさっての方角を向く。
「コ、コレでいいだろ……」
恥ずかしくハジメの顔が見れなかったジューゴはこのままお菓子を貰わずに逃げようかと思った矢先、突然手首を掴まれそのまま勢いよく引っ張られハジメの胸元へ抱き寄せられる。
驚きながらジューゴは顔を上げた瞬間、口を塞がられた。
「んぐっ?!」
重ねられている唇を舌先で割り込み、歯並びを舐められる。
身体を震わせ、驚きで口を開いてしまうと閉じるより先にハジメの舌が中へ入り込む。
「んっ、あっ……んんっ……ふぁっ!」
しつこく絡まれる舌。
離さないと言ってるかのようにきつく絡みつき、撫でてくる舌先はどこも甘い痺れを感じていく。
流れ込んでくる唾液は飲みきれず、口端からこぼれ落ちているが、必死に呼吸をしているジューゴは気づいていなかった。
「んー!んんっ!ふんんんっ!」
ビクビクと身体を震わせ、呼吸が追いつかず限界に近くなったジューゴはハジメに気づいてもらうよう必死に手で胸元を叩く。
それに気がついたハジメは名残惜しそうに、最後はジューゴの舌を引っ張り、その舌先を口の中へ含み「ちゅるっ!」と音を鳴らし離した。
ジューゴの舌先から伸びる唾液の糸はプツリと切れ、顔を赤く染め息をあげ吐息を漏らしたジューゴは「うっ!」と顔色が赤から青へと変色する。
「にっげえええええ!」
口の中がタバコの苦い味にジューゴは叫びながら、机の上にある湯のみに手を伸ばし、湯のみに入っているのお茶を口に含み飲み込む。
一気に飲み干し、空となった湯のみを机の上へ置いたジューゴは大きく息を吐き捨て、キッ!と涙目でハジメを睨みつける。
「ハジメ!いつも言ってんだろ!タバコ吸いたてのときはキスしたくねぇって!!」
一本くらいのタバコの味だったらジューゴはまだ我慢はできた。だが、ハジメはヘビースモーカー。
吸いたてのハジメはタバコ一箱分を吸い尽くしており、とてもではないが舌の味がとてつもなく苦かった。
そこため、ジューゴは吸いたてのハジメからのキスは拒否っており、薄くなるのを待っているのが日常であったが、今回はちょうと吸いたての時にディープなキスをされ口の中は異様なくらいの苦味が襲い掛かったのだ。
当の本人は特に反省する顔もなく、むしろ馬鹿にするように鼻で笑っていた。
「あんなんがイタズラに入るかよガキが。イタズラはこれぐらいやらなきゃダメだろ」
「これのどこがイタズラだ!うぇぇ、まだ苦い味がする……」
手の甲を口元につけ擦りながら顔色悪くしているジューゴ。
そんな態度が気に食わなかったハジメはジューゴの手を掴み、口元から引き離しそのまま自身の顔をジューゴの顔へ近づかせ軽いリップキスを送る。
「おまっ!また!」
「いいから口開けろ」
もう片方の空いてる手を使い、ジューゴの唇に親指を当て開くよう指示するハジメ。
鋭い目つきで見つめられてしまい、視線を外せられないジューゴはゴクリと生唾を飲み込み、うるさく鳴り響く心臓の音が全身へ響き渡る。
苦い味は嫌いだーーー
でも、ハジメとのキスはーーー
気持ちいいからどうでもよくなってしまうーーー
頬を赤く染め自然と口を開いたジューゴに、ハジメはフッと軽く笑いその唇を覆うように食らいつく。
口腔に差し込まれた舌に、またあの苦い味がくるのかとジューゴはそう思っていると、口の中で広がった味は苦味ではなく甘味。
なぜ甘い味がするのか不思議に思っていたが、集中しろと言われるように舌を甘噛みされる。
「んんっ!」
それですらも気持ちよく感じてしまうなんて、自分はマゾなんではないのかと思ってしまうジューゴだが、いまはこの口付けに集中しようと舌を動かす。
少し動かすと、ハジメの舌も応えるように動かし絡みついてくれる。
それがジューゴにとって嬉しく感じ、もっとハジメの気持ちに応えたいと自然と腕はハジメの後頭部に絡ませる。
ハジメも逃がさないようにジューゴの腰に手を当て、自身の身体へ密着するように引き寄せた。
互いの胸は重なり、互いの心臓の鼓動を感じ合う。その心臓の音は心地よく、でも口から聞こえる水音は卑猥っぽくジューゴは恥ずかしく感じていた。
それでも、胸元から感じるハジメの心臓の鼓動はいつもよりうるさく響いている。
よかった、ハジメも感じてもらってるーーー
それがなによりも嬉しく、もっと喜ばせたい気持ちが溢れ出てきていると、ハジメの舌から丸い何かを押し込められる。
ころんっと歯に当たったそれは、ふんわりと蜂蜜の味がし、ジューゴは口を離し中に入っているそれを転がす。
「……飴?」
丸く固いソレは飴玉であり、いつの間に舐めていたのか気になったジューゴだが、もしかしたらタバコの苦味でお茶を一気飲みしている時に食べていたのかもしれないと悟る。
口渡ししたハジメは口についている唾液を舌で舐め取り、ジューゴの頬に手を添えて優しく撫でた。
「それなら苦くねーだろ」
「そうだけどよ……」
口の中にある飴を転がしながら、ジューゴはもじもじと身体を動かし落ち着かない様子をした。
そんなジューゴの態度にハジメは口角を釣り上げ、顔をジューゴの耳元へ近づける。
「そんなものより他のやつが欲しいか?ジューゴ」
耳元に囁きながら、ジューゴの腰から太ももへ撫で下ろすハジメの手。
名前で呼んでくれたことに耳も身体もぞくぞくと甘い痺れが走り、熱い吐息をこぼしながらジューゴは思っていることを口に出す。
「飴よりハジメが欲しい……ハジメ、トリックオアトリート」
「ハッ!上出来だ」
素直に欲を出したジューゴをハジメは褒めてやり、ジューゴを抱きかかえて立ち上がる。
向かう先はもちろん、仮眠室ーーー
「極上の菓子をやるよジューゴ」
そう、今日の中で一番の笑みを見せるハジメにジューゴは明日はきっと布団と友達になっている可能性が高いと思いながらも、嬉しく感じそれに応えるように強く抱き締めた。
おわり
当初はジューゴくんに何か仮装させようと思いましたが、囚人服ですでに仮装かと思い特に何も着せてなかったのが、ちょっと心残りでしたw
ここまで閲覧頂きまして誠にありがとうございました!
皆さん、Trick or Treat!
2017:10/31