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<テルゆひ> 惑星の花嫁

 名前を呼んだ遊飛は、この先どう言葉を吐けばいいのか分からずにいた。なぜ。どうして。遊歩のそっくりなベルギャー星人がいるのかと。
 そして、遊歩の名前を呼ばれた少女は何度か瞬きをした後、こてんっと軽く首を傾げる。

「確かに私はユアムだけど、何処かで会ったかな?」

 そう返答するユアムと名乗る少女に、遊飛は全て理解をした。この子はきっと、遊歩の前世になるのではないのかと。遊歩ではない事に、遊飛は袖で涙を拭っていく。そして遊飛は無理して笑顔を向けて、

「いや、初めましてだ」

 そう返した。遊飛は子供を引き渡そうと、下ろしたと同時にユアムが急に遊飛へ顔を近づけた。
 鼻先同士がぶつかるのではないかと言うくらいの至近距離に、遊飛は肩を震わせて驚いた表情をする。その中、ユアムは少しだけ目を細めて不思議そうな表情をしていた。

「なんだろうね?君から私達と同じ気配を感じるんだヨ」
「俺から?」

 同じ気配というのはどういう意味なのか。遊飛は少し戸惑っていると、背後にいたテルが隣へと並んで問い掛けられる。

「ベルギャー星人と関係があるのか?」
「え、うーん……友達ならいるけど……」

 関係性と言えば、一緒にいるユウディアスが該当する。その事を遊飛は伝えると、ユアムは首を横に振った。

「ううん。この気配は、外部との接触によって起きているものじゃないんだ」
「えっ?」
「うっすらだけど君自身から気配があるんだヨ」

 そうはっきり伝えるユアムに、遊飛はますます訳が分からなくなる。自分自身からユウディアスと同じ、ベルギャー星人の気配があるという事。ユアムの言葉を振り替えながら、どんなに考えても最終的な答えは同じへと導かれていく。
 まさか、ありえるのか。と、遊飛はそう思いながら、頭の中で得た答えを口に出す。

「俺、ベルギャー星人の血が流れているのか?」
「多分。本当にほんのりだけどね」

 遊飛の言葉に頷くユアムに、自分の出生に秘密があった事に驚いた。過去にご先祖様の本とかに、そう言った詳細がなかったからだ。だが、先祖代々、宇宙人のトラブルに関して起業していた一族だ。自分達の血に他の種族が混ざっている可能性だってあり得るだろう。
 驚きのあまりに遊飛は言葉が出ずにいると、テルは目を細めて遊飛を見下ろした。

「ベルギャー星人と地球人のクオーターということか」
「クオーター?」

 あまり聞きなれない単語に、遊飛は片言の様に聞き返す。今のテルは教えてくれるのかどうか、様子を見ていると、ユーヒが背後からハグしてきた。

「人種の異なる血が4分の1流れている人って意味だよ」
「へー」

 ユーヒの解説に遊飛は分かった声を上げていると、遊飛の前に立っていた子供は遊飛のズボンを掴んで引っ張ってくる。どうしたのかと遊飛は子供の方へと視線を向けると、ユアムの方へと向かってほしいという無言の圧を感じた。

「どうしたんだよ?」
「多分、私達の宇宙船に乗らないか?と言いたいんだヨ」

 「だよね?」とユアムが子供へ問い掛けると、子供は強く頷いた。それを確認したユアムは視線を遊飛へと変え、右手を差し伸べた。

「遠い同胞のよしみだし、私達が君を地球へ連れていくヨ」

 ユアムの言葉に、ユーヒとテルの顔つきが変わった事を遊飛は気がついていない。
 差し出された手を掴めば、遊飛はテルとユーヒとはここでお別れになる。だが、遊飛は未来から来た人間だ。今の時代の地球へ帰還したとして、この時代に知っている人は誰も居ない。
 この誘いをどう断るべきだろうかと、遊飛は思い悩んでいると、子供が遊飛の足へと引っ付き上目遣いで見つめてくる。

「この子も君のそばに居たいみたいだし」

 そう言われてしまうと、これから断るのが申し訳ない気持ちになっていく。遊飛は苦しい気持ちの中、力を抜くように両肩を下げて眉をハの字にし、口を開いた。

「嬉しい話だけど、断るよ」
「おやっ、なんでかな?」
「俺にはまだ、やるべきことがあるんだ」

 遊飛はそう答え、足元にいる子供の頭に手を置き、優しく撫でる。

「折角誘ってくれたのに、ごめんな」

 遊飛はそう謝ると、子供は両手を広げて遊飛に抱き着いた。ギュッと遊飛の服を握り締め、離れたくない意志が伝わってくる。
 そんな光景を見ていたユアムは頬に手を当て、困った表情をする。

「おやおや、随分と好かれたネ」
「そうみたいだな」

 離してもらうようにお願いしてみても、子供は全然手を離す気はなかった。むしろ、このまま身動き取れないままぐずられてしまったら、どうしたらいいのだろうか。
遊飛はそう思いながら、隣にいるテルの視線や背後にいるユーヒの視線も痛々しく感じた。
どうにかしたい。でもどうすればいいのか、遊飛は困った表情をしながらユアムの方へと視線を向ける。それに気がついたユアムは、子供の方へと駆け寄り、優しく両肩へ手を置いた。

「私達はまた出会うと思うヨ」
「だな。だから、いつかまた会おうぜ」

 遊飛がそう言うと、ようやく子供は納得してくれたのだろうか。ふてぶてしい表情で掴んでいた手を離し、ユアムの方へと移動した。
 今にも泣きそうな表情である子供に、遊飛はズキッと心を痛む。いつか会える約束をしているが、その時はきっと目の前の子供はどれぐらいの成長をしているのか、それとも記憶が薄れて忘れてしまうかもしれない。
 少し寂しさを感じながらも遊飛はユアムと子供から離れ、先に歩き始めたユーヒとテルの元へと向かおうとした時、「ねぇ!」とユアムに声を掛けられ足を止める。

「そういえば、名前を聞いてなかったね」

 ユアムにそう言われ、遊飛は偽名を名乗ろうとしたがそれを止めた。そして、後ろへ少し振り返りユーヒとテルの距離を確認した後にユアムと子供の方へと近づき、

「俺は王道遊飛。また何処かで会おうぜ」

 二人にしか聞こえない声で、本当の名前を名乗った。ニコッと笑顔を向け、何歩か後ろへ下がった遊飛は片手を上げて振りながら離れていく。
 少し駆け足で、テルとユーヒの元へと走った遊飛は「お待たせ」と言い、二人の間に並んだ。

「さぁ、出発だ!」

 遊飛は明るくそう言い、進もうとしたが急に腕を掴まれ動きを止められる。少しバランス崩れそうになったが、多分ユーヒが掴んだのかもしれないと振り返る。
 少しだけユーヒに注意しようと思った遊飛だが、掴んだ相手がわかった瞬間、硬直してしまう。掴んだ相手はテルであったのだ。
 眉間に皺を寄せ、いかにも不機嫌っぽそうなテル。また小言でもされるのかと遊飛は困っていると、テルの口が開いた。

「何故、故郷に帰れるのに断った」
「えっ?」

 お説教ではなく、質問を投げられるとは思っていなかった。遊飛は首を傾げ、つい間の抜けた声を出してしまう。
 それが癪に触ったのか、テルの眉間にさらにシワが寄せていったのが見える。遊飛は何度か瞬きした後、思った事を口に出そうとする。

「だって、俺はお前達との旅が楽しいし」

 この返事だけで納得してくれる訳ないとは、遊飛はそう思っている。だが、伝えられる言葉はこれしか思い浮かばなかったのだ。
 遊飛は少し視線を下へ向け、目を細めながら、

「それに、帰れても……意味ないしな」

 そう小さく呟く。誰にも聞こえていないことを願い、遊飛は繋がれている手を解いて顔を上げる。

「さ、この話は終わり!」
「まっ……」

 これ以上、何も言わないことを決めた遊飛はテルの声を聞かずに歩き出した。それがテルとユーヒも伝わったのか、この先の話題は触れることは無かった。

 ◇◇◇

 ユーヒと遊飛が先に歩いている後ろ姿を、テルは眺めながら目を細める。ユーヒは楽しそうに何か話しており、こうして笑顔になっているのは良い事なのはテルも分かっている。
 だが、何故か胃辺りがモヤモヤする感覚に襲われる。それは必ずユーヒの隣にいる存在を見ている時である。

「なんだ、この感覚は」

 いままで感じた事ないものに、テルは悩んだ。ユーヒの前では笑顔を向け、ベルギャー星人にも優しく接しているのに、「何故、自分には向けてくれないのか」という言葉を漏らしてしまう。
 テルは自身の口から出した言葉に驚き、軽く息を吐きながら軽く首を横に振る。

「何を言ってるんだ、私は」

 こんな事を思ってしまうのは初めてであり、どうすればいいのか分からなかった。
 あの地球人がどうなろうと、自分達の旅について行くと選択したならば、それは自己責任となる。そう考え、テルは後を追っているとユーヒの歩みが止まった。

「あっ」

 何かを見つけたような声を出すユーヒ。それに反応したテルはすぐにユーヒの元へ近づき、ユーヒが見ているその先を眺める。
 テルが見えたのは岩で作られた神殿のような遺跡だった。

「ここで合ってますか」
「うん。間違いないよ」

 そう返事をするテルは顔を上げ、空の様子を伺う。赤く染っている夕焼けから、徐々に紺色のグラデーションが掛かっているのが見える。
 数時間後には夜へと切り替わると分かり、テルは遊飛とユーヒへ視線を向ける。

「今夜はここで野宿し、朝一に向かいましょう」

 テルの言葉に二人は頷き、それぞれ準備する為に動き出した。

 ◆

 ユーヒが別の所へ行っている間、テルは遊飛と共に焚き火の準備を進めている。遊飛が枝を折っている作業を眺めていたテルは、あることに気がついた。

「おい、包帯が解けてるぞ」
「あっ本当だ」

 解けている包帯の隙間から見える赤いライン。昨日、自分が傷つけた傷跡だ。血は止まってるが、それでも皮膚のまわりは赤く腫れている。
 それを見たテルは立ち上がり、遊飛の元へと近づき手を伸ばす。

「結び直してやる」
「えっ?」

 間の抜けた声を出す遊飛に、テルは眉間に皺を寄せる。もう一度、同じ事を言うのが面倒だと思い、遊飛の肩を掴み後ろへ向くように誘導させる。

「アンタ一人じゃできないだろ」

 そう伝えると遊飛は「じゃあ、お願い」と大人しくゆだねる。そんな遊飛にテルは内心もやついた。胃のあたりが胸焼けするような感覚に、これがなんなのか理解できないまま、遊飛の包帯を手に取る。
 手際よく遊飛の首まわりを巻いていき、その細くて健康的な肌を眺めながら、テルは思っていることを口に出す。

「何故、警戒しないんだ」
「なんでだよ?」
「私はアンタを殺そうとしたんだぞ」
「でも、結び直すって言ってくれたの本心だろ?」

 質問を質問で返され、テルは内心モヤモヤする。こんなにも細い首、片手で掴めば簡単にへし折ることも出来る。
 しかも無防備にうなじを見せていることに、テルは眉間に皺を寄せていく。「わかっていない」と自然と声を出しながら、テルは遊飛の肩を掴み、そのまま勢いよく地面へと押し倒す。
 そして遊飛の上に跨り、地面に縫いつける様に遊飛の肩を押さえ付けたテルは見下ろした。

「それが仇になるのを、いい加減に学べ」

 ここまでやれば相手は怒り、自覚はしてくれるはずだ。身勝手な行動も、怪我もすることは無いと。
 そうテルは思い、遊飛の顔を覗き込む。その同時にザワッと心が騒ぎ、テルは目を見開く。

「何故、赤くなってる?」
「っ!」

 遊飛の頬がリンゴのように赤く染めあげていることに、テルは疑問しか感じられなかった。その頬染めは怒りからのものでは無い、何か羞恥によるものの様なものである。
 テルの言葉にすぐ両腕で顔を覆い隠す遊飛。それに何故かムッとしたテルは、遊飛の両腕を掴み引き離そうとする。

「顔を隠すな」
「やだっ!」
「いいから見せろ」
「やめ、見るなぁっ!」

 抵抗する遊飛にテルは無理矢理引き離し、隠している顔を見る。先程とはまた違う、瞳に涙で潤ませており、力を入れすぎていたのか息を上げている遊飛。
 その表情を見たテルは、背筋から電流が流れる様な痺れを感じた。

(なんだ、この感覚は……弱者を捩じ伏せている背徳感を、私は感じてるのか?)

 ゾワゾワする感覚に、テルは不思議に思った。アースダマーの力を目の当たりにした時とはまた違う。別に遊飛から不思議な力を感じ取った訳では無い。
 それなのに、テルはいま遊飛の表情に何かを感じている事に、疑問を抱き始める。

(何故、こんなにも私は……いろんな表情を見たいと思っているんだ)

 他に何をしたら表情が変わるのか、テルはとても興味を抱く。どうすればいいのか、テルは思い悩んでいると、背後から気配を感じる。

「こーらっ!ユウをいじめちゃ駄目だよ!」
「「っ!」」

 ユーヒの声にテルは一瞬、掴んでいた手の力を緩める。その隙を逃さなかった遊飛はテルを押し退け、慌てて立ち上がった。

「お、俺!少し夜風に当たってくる!」
「おいっ!」

 そそくさ逃げるように去っていく遊飛に、テルは手を伸ばして掴もうとした。だが脱兎のごとく、遊飛は姿を遠のいていき、テルは深く溜め息をついた。
 後頭部に手を当て、掻きながらテルは半目状態でジッとユーヒを見つめる。

「わざとですよね」
「だって、君の表情ヤバかったよ。まるで獣の様だった」
「そんな表情はしてませんよ」
「してた。可哀想に怖がらせちゃってさ」

 そう言いながらユーヒはテルの隣に座った。そしてユーヒは「話が変わるんだけどさ」と、テルに声を掛ける。

「ユウが言ってた「意味ないし」って言葉さ、どういう意味だと思う?」

 ユーヒの問いに、テルは数刻前の事を思い出す。あの時の遊飛の寂しそうな表情、悲しい声、その先の話を聞いてほしくないと言いたげな拒絶の気配。
 自然と右手を握り締めるテルは、目を閉じ軽く首を横に振った。

「知らないです」
「知らないって……」
「地球に帰れても、帰る場所がないんじゃないんですか?」

 そう返すと、ユーヒは少し前のめりし、上目遣いでテルを見つめる。

「だったらさ、ユウを仲間にして一緒にいればいいんじゃない?」
「それはダメです」
「なんで?ユウの事は警戒しなくてもいいじゃん」
「地球人だとしても、貴方の力によってどうなるか分からない」

 テルはそう返すと、ユーヒの唇は尖らせている。

「そんな理由付けしてさ、あとから嫌われても僕は知らないからね〜」
「別に私は嫌われても、何も感じないですよ」
「ユウが走り出したら、直ぐに追いかけたの君だったくせに」
「貴方のペットが粗相を起こさせない為です」

 何か探ろうとしてくるユーヒに、テルはこれ以上聞いてくるなと意を伝える様な目線で睨みつく。
 だが、ユーヒはそんな目線に怖気ず、むしろ笑みを向けながら話題を止めようとしない。

「いつもの君なら、僕以外は気にとめずに無視するくせにね〜」
「…………」
「素直にさ、心配だったって言えばいいのに」
「何故、私が地球人の心配なんか」

 ユーヒが何を言いたいのか理解出来ず、テルは肩を竦めながら即答する。その答えを聞いてから、ユーヒの表情は笑顔から哀れみの様なものへと変わっていく。
 何か可哀想なものを見ているかのような目線を向けるユーヒに、テルは眉間に皺を寄せる。

「なんですか、その表情」
「ん〜、なんでもな〜い」

 そう軽く返事をし、ユーヒは立ち上がる。ゆっくり歩き出し、遊飛が逃げ込んだ方角へと向かっていくユーヒを見たテルは声を掛ける。

「追い掛けるんですか」
「うん」

 ユーヒは返事をし、そのまま向かっていき姿が見えなくなった。テルは追い掛けようと思ったが、焚き火も見ていないといけない。もしかすると、すれ違って遊飛が戻ってくる可能性もある。
 テルはそう結論付け、数分待って戻ってこなかったら動こうと判断する。それが、間違いであった事を知るのはまだテルは知らない。

 ◇◇◇

 遊飛の気配を辿りながら、ユーヒは歩き進める。微かに感じる、遊飛のアースダマーの気配を。

「あっちだね」

 テルは気がついていなかったが、ユーヒは気がついていたのだ。遊飛の中にアースダマーの力が宿っていることに。
 微力ではあるが、遊飛も自分と同じアースダマーの器であること、素手で触れた際に感じ取っていた。
 歩みを一旦止め、ユーヒは顔を上げて星空を見つめる。暗闇の中で光り輝く星々を眺め、ある一つの小さく今にも輝きが消えそうな星を見つけたユーヒは目を細める。

「そっか、僕の命は残り僅かなんだね」

 そう呟き、ユーヒはグッと手を握り締める。だがそれも一瞬であり、すぐに力を抜いたユーヒは苦笑いをこぼす。

「出来れば、僕の代で止めたかったんだけどなぁ」

 冷たい風が吹き、ユーヒの髪の毛をゆっくり揺らす。毛先が頬を撫で、星を見つめ続けながらユーヒは少しだけ視線を横へと移動させ、もう一つの星を見つめる。

「それでも、ユウなら僕の夢を叶えてくれる」

 綺麗なオレンジ色の光を輝かせる星を眺め、ユーヒはハッと何か気がついたような仕草をする。

「もしかして、ユウと出会わせるためにやったの?」

 その問いは誰も答えることはなく、ユーヒは星を眺めるのを止める。顔を下げ、止めていた足を再び動かす。
 ザッザッと地面とブーツの擦れ合う音を響かせ、ユーヒは遊飛の背中を見つける。両膝を抱えてるのか、小さく見えるその背中に、ユーヒはゆっくり近づいて声を掛ける。

「ユウ」
「ユーヒ」

 隠していた顔を上げる遊飛に、ユーヒは「隣いい?」と問い掛ける。遊飛は軽く頷き、了承を得たユーヒは遊飛の隣へと座った。
 目の前には先程見ていた遺跡があり、一緒に眺めながらユーヒは黙り込んだ。遊飛が何か言いたげな表情をしていたからだ。静かに夜風を当たりながら待ち続けていると、遊飛の唇が動き始める。

「俺、二人が旅してる理由、聞いてなかったなって」

 遊飛の問いに、ユーヒは一瞬の瞬きをする。そして、ユーヒは遺跡の方へと視線を向ける。

「僕達はある遺跡を探して旅してるんだ」
「遺跡?」
「そう、さっき見たあの遺跡」

 そう言いながらユーヒは遺跡に向けて指差す。

「あれは、僕の力をどうにかしてくれる場所でもあるんだ」
「力……」
「うん、アースダマーって言うんだ」

 ユーヒがそう言ったと同時に、遊飛から砂利の音が聞こえる。アースダマーの単語を聞いて驚いてたのだろうと、ユーヒは察した。
 遊飛はどこまでアースダマーを知っているのか分からないが、ユーヒは少しでも知恵を与えようと語り続ける。

「宇宙一つ生み出すくらいの膨大な力で、僕はその力を使って少しでも他の惑星を救いたいんだ」
「……その力、全部使ったらユーヒはどうなるんだよ?」
「なんともないよ。普通になるだけ」

 この時の自分は、ちゃんと笑顔になっているのかユーヒは分からなかった。心配掛けさせないように、ユーヒはなるべく気持ちが顔に出さないよう気をつける。

「彼はそれを見届ける為に、僕のそばに居るだけなんだ」

 全てを語り終えたユーヒは指差していた手を下ろし、少し足を動かして姿勢を直す。そして、ユーヒは遊飛と顔を合わせるように向ける。

「さてと、次は僕がユウに質問するね」

 ここからが本題と言うかのように、ユーヒは遊飛に問いを投げようと口を開く。

「君は僕達に何か隠し事してない?」

 その言葉と同時に、遊飛の瞳が大きく見開いた。図星を突かれたと思っているのか、それとも秘密を知られたと思っているのか。なんて言えばいいのか分からず、戸惑った表情をして目を泳がしている遊飛。
 ユーヒは安心させようと手を伸ばし、遊飛の頬に触れて優しく親指で頬を撫でる。

「大丈夫だよ。僕はわかっているから」
「っ!」

 そう伝えると遊飛の瞳はゆっくり閉じた。何か考えているのか、ユーヒは見つめ続けていると、意を決したような表情で瞼を上げた遊飛は唇を動かす。

「俺、実は……」

 遊飛が語り出したと同時にユーヒはゾワッと嫌な感覚が襲い掛かる。とても不吉で、今すぐこの場から逃げ出せと本能が騒ぎ出す。
 ユーヒは立ち上がって遺跡の方へと視線を向けると、鼓動してるかのように遺跡が輝き出す。ドクン、ドクンと脈打つ鼓動。まるで生きてるような遺跡に、ユーヒは立ち上がった。

「ユウ、逃げよう!」

 遊飛を立ち上がらせようと、ユーヒは遊飛の手を掴むとお互いの身体が光り輝き出す。
 紫色の光にユーヒと遊飛はコレが何の光なのかすぐに分かる。

「アースダマー!」
「ユウ!僕の手を離さないで!」

 こうなってしまえば、今は遊飛と離れ離れにならないようにするしかないと、ユーヒは掴んでいる手を強く握り締める。眩い光にユーヒは目を瞑り、身体が重力に逆らうかのように軽くなっていき、ユーヒと遊飛の姿は消えていった。

2023/12/31
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