リンクヴレインズにログインしたら、何故か犬になっていた<プレイメーカー編>
『助けて!プレイメーカーが野生化してリンクヴレインズで暴れ回ってる!』
「「はっ?」」
AiのSOSコールを受信したリボルバーとソウルバーナーは、何を言っているのか最初は理解できなかった。
とりあえず話を聞いてみると、これまでの犬化ウイルスの原因はAiが作ったパーティープログラムだったらしく、今回はそれを使ってプレイメーカーに入れたらしい。
だが、意識まで野生化してしまったプレイメーカーは完全に野獣となり、野山を掛けるようにリンクヴレインズを走り回っているそうだ。
「まったく。闇のイグニスは私をただの便利屋だと思っているのか」
「今回ばかりは俺だけじゃ、どうにも出来ないみたいだしな」
デュエル途中であったが中断し、リボルバーとソウルバーナーはAiが送ってくれたプレイメーカーがいる場所へと向かっていた。
本来だったら手を組みたくない相手だが、状況が状況のため、ソウルバーナーは少しだけリボルバーを睨みつける。
「だから俺はプレイメーカーの為に我慢する」
「我慢しているならば帰ればいいだろう。私一人でなんとかしてみせる」
「お前一人で任せた後、プレイメーカーに何かしないか見張る義務があるんだよ!」
犬化したプレイメーカーを沢山撫でたり、構ってあげたり、色々とする可能性が高いだろうとソウルバーナーはそう言うと、それを言われたリボルバーは軽く肩を竦ませて笑った。
「ふっ。お前こそ、あの時の様にプレイメーカーを愛でたいだけだろう」
「あぁ愛でたいね!滅多にプレイメーカーを可愛がるなんて、なかなか出来ない事だしな!」
プレイメーカーはどんな犬種にされているのか、リボルバーもソウルバーナーも内心では楽しみにしていた。
可愛く威嚇をしているポメラニアンだろうか。それともチワワだろうか。どんな姿でもきっと可愛らしいのだろうと、ようやく指定されていた場所に到着したと同時に二人の頭上に大きな影が覆われた。
「グルルルルルルルッ!」
二人の目の前にいたのは人一人踏み潰されるのではないかと思うくらいの超大型犬が、ドス低い声で唸りを上げて威嚇していた。
「ソウルバーナー」
「なんだよ」
「私の見間違いだと思いたいんだが、あれは犬ではなく狼だと思うんだが」
「犬というより狼だな。しかもあれだあれ、も〇の〇姫の犬神様みたいな感じだな、デカさ的に」
もう一度、二人は目の前にいる狼を眺める。
この狼がAiが言っていたプレイメーカーなのだろうかという確認だ。
確かにプレイメーカーの特徴的である赤毛と黄色毛であり、鋭い瞳も綺麗な翠色であった。
そしてリボルバーはリンクセンスで伝わってしまう。目の前の狼は確かにプレイメーカーだという事を。
「私達は小型犬だったのに、何故プレイメーカーは大型犬なんだ!いや、あれを大型犬と言っていいものなのか!」
それでもリボルバーは納得出来なかった。
自分達はAiによって小型犬にされていたのに、プレイメーカーだけ違う事になっているのを。
同じく納得していなかったソウルバーナーだが、プレイメーカーを眺めながら両手をポンッと叩く。
「可愛い系よりカッコイイ系の方が勝ったか、それともハノイの騎士を壊滅させる為に考えた結果なのかもな!」
「ハノイの騎士は壊滅された後だぞ!」
確かにまだ復讐時代のプレイメーカーだったらこの姿にはリボルバーも納得しかけた。
ハノイの騎士絶対に潰す状態であり、その意志がこの形へとなるならば狼になるのも、身体も大きくなっている事も。
「そう言いながら、プレイメーカーはまだ怒ってる可能性はあると思うけどな」
「グッ……」
思い当たる点がありすぎてリボルバーは何も言えなくなっていると、目の前に立っているプレイメーカーはさらに目つきが悪くなり唸りを上げ続けていた。
「グルルルルルルルッ」
きっと話し掛けても人間の言葉は伝わらない可能性が高いと判断したソウルバーナーは、両腕を組みながら隣に並んでいるリボルバーへと問い掛ける。
「んで、どうするよハノイの騎士のリーダー様はよ」
「致し方ないが、コレを使って確保するしかないだろう」
事前に用意していた捕縛用プログラムを出したリボルバーは、内心謝りながらプレイメーカーへ向けて起動させ放つ。
複数の鎖がプレイメーカーへと向かっていくが、対するプレイメーカーも前足に力を入れて屈み、そして口を大きく開いて何本の鎖へと噛み付きそのまま砕いた。
「なっ!データプログラムを噛み砕いただと!?」
「さっすがプレイメーカー!リボルバーの思惑通りにならないそのスタイル!痺れるぜ!」
「褒めている場合か!」
捕縛用プログラムが使えないとなると、他に捕まえる方法のプログラムを作り上げなければならないと、リボルバーは急いで次のを作成へ取り掛かろうとした。
それに気がついたプレイメーカーは目を見開き、二人に向けて「ガウッ!」と方向を放つ。
耳が痛くなる程の音と激しい振動と強い風。
一瞬だけふわっと宙に浮いた二人だが、何とか地面へと踏み止まり、耳鳴りする耳に手を当てて軽く頭を横に振った。
「いってぇ……!軽い咆哮で、この威力かよ!」
「まずいな。このままでは色んな箇所でデータが破損していくぞ」
咆哮の衝撃によって周りのものが破損しており、もしこのまま立て続けの咆哮をされてしまうと、リンクヴレインズのサーバーが崩壊してしまう可能性が高くなっていた。
どうにかプレイメーカーをなだめさせようと考えるが、近づこうとするだけでも次の咆哮を構えており、迂闊に近づくことが出来なかった。
「あそこまで警戒心出しまくりだと、変に刺激してまた暴れられたら困るな」
こんな面倒くさい事をしたAiに舌打ちをしたリボルバーは、どうすればこんなにも警戒心の塊となって威嚇しているプレイメーカーを大人しくさせられるだろうかと考える。
すると、同じく考えていたソウルバーナーは何か思いついたのか「あぁ!」と声を上げながら指パッチンした。
「そうだ!一つだけプレイメーカーを大人しくする方法がある!」
そう言いソウルバーナーはデュエルディスクを使って連絡を取り、その連絡を受けた相手は事情を大体把握してリンクヴレインズへとアクセスする。
ログインしてした人物を見たリボルバーは、少し驚いた表情をして口を開く。
「貴方は」
そう、リンクヴレインズへログインしてやってきたのは草薙であった。
草薙は二人の後ろにいるプレイメーカーの姿を眺めながら、少し苦笑いをこぼしてリボルバーとソウルバーナーの方へ視線を変えた。
「事情はソウルバーナーに聞いたが……本当にデカイなプレイメーカー。俺なんかでいいのか?」
「草薙さんならプレイメーカーの心を開かせられるかと思って!」
確かに草薙ならプレイメーカーの心を開かせられるかもしれないと、リボルバーも納得していた。
プレイメーカーを陰ながらサポートし、共に戦ってくれた大切なパートナー。
たとえ野生化していたとしても、草薙なら気がついてくれるのではないかと考えていた。
そんな期待を向けられている当の本人は自覚しておらず、もう一度プレイメーカーの方へと視線を向けて眺めていた。
「いや、でも今のプレイメーカーは野生化した狼だろ?俺で対応出来るか?」
そう話しているうちに伏せして唸っていたプレイメーカーがゆっくりと立ち上がった。
そして、のしのしとゆっくり草薙の元へと近づいてきた事にリボルバーとソウルバーナーは少しだけ後ろに下がり、もしプレイメーカーが草薙へ牙を向けた時の対策準備を進めていた。
「ぐるるる……」
少しだけ唸りながらプレイメーカーは鼻先を草薙へと近づかせる。
スンスンっと匂いを嗅いでおり、少しだけ生温い鼻息を感じていた草薙は少しだけ下がり、なるべくプレイメーカーの視線と合わせようと顔を上げた。
「よう、プレイメーカー。俺だけど、わかるか?」
大きな瞳に映る自分を見つめながら、草薙は勇気を持ってプレイメーカーに声を掛ける。
このままぱくりと食べられられないだろうかと、草薙は内心冷や汗かいていたが、ギラギラしていたプレイメーカーの瞳が少しずつ柔らかくなっていっている事に気がついた。
喉奥から聞こえていた唸り声は徐々に小さくなり、プレイメーカーは草薙の背中へと周り、伏せをして尻尾を草薙を包み込むように前へ出したのだ。
「凄い、ふかふかだ」
ふかふかな毛並みの尻尾に触れ、草薙はまるで柔らかいシルクに包まれているかのような気持ちになっていた。
そんな見事にプレイメーカーを大人しくさせた草薙の勇姿を眺めていたソウルバーナーはガッツポーズをしていた。
「やっぱり草薙さんなら出来ると思ったぜ!」
「やはりかと思っていても、複雑な気持ちだ……」
あんなにも自分達には警戒の塊で咆哮もし、いつその鋭い牙と爪を向けられるのかと内心ヒヤヒヤしていた。
にも関わらず、草薙だけはこんなにもリラックスした状態であり、リボルバーにとっては悔しいような悲しいような気持ちでいっぱいいっぱいであった。
「あのさ、まさか……プレイメーカーが元に戻るまで俺はこのままの状態か?」
尻尾によってホールドされている草薙は身動きが取れず、どうするべきなのか二人に声を掛ける。
声をかけられたリボルバーは申し訳なさそうな表情をした。
「闇のイグニスがいま解除プログラムを作っています。それまで待っていただけますか」
「いや、まぁそれはかまわないけど、店の方が……」
「それなら俺が代わりに店番します!」
元気よく手を上げたソウルバーナーに、これはもう頼むしかないかと草薙はお願いすると、なんとリボルバーも店の手伝いをすると言ったのだ。
ソウルバーナーは嫌な顔をしていたが、人手が増えるのならばありがたいと思った草薙はお願いし、二人はログアウトして姿を消していった。
そして、二人がいなくなった同時に草薙は、プレイメーカーの尻尾を触れながら内心感じていた疑問を投げかけた。
「なぁ、いつまで狼のフリをしているんだ。プレイメーカー」
草薙の問い掛けに、プレイメーカーの瞳は草薙へと向けて固く閉ざしていた口を開く。
『気がついていたか』
聞こえたプレイメーカーの声に、ちゃんと言葉が話せるのかと草薙は一瞬驚きながらも、すぐに表情は柔らかくして微笑んだ。
「そりゃ親友だから気がつくな」
『そうか。そういうものなのか』
草薙の返答に嬉しかったのか、耳をピクピク動かし尻尾は微小に揺らしているプレイメーカーに、草薙は(素直で可愛いな)と思った。
本当なら頭を撫でてやりたい気持ちだが、大きさの違いによって難しいと考えた草薙は、目の前にある尻尾を優しく撫でた。
『元に戻ったのはついさっきだ。それまでは本当に野生化していた』
「そうか。でも、なんでリボルバーとソウルバーナーにはあんなに威嚇していたんだよ」
草薙の問い掛けにピクッと動かしていた尻尾を止め、プレイメーカーは目を細めて「ぐるる……」と、軽く唸った。
『あの二人には反省が必要だと思ってな』
「反省?」
『こっちの話だ』
尻尾を少しだけ荒く左右に振るプレイメーカーを眺めていた草薙は、なんとなく彼の心情に察しながら内心苦笑いをする。
(本当はリボルバーやソウルバーナーにも撫でてもらいたい気持ちもあったんじゃないのか)
だが、それを素直に出さなかった理由はきっと何かがあったからなのだろうと、草薙はそう思いながらその分、こうして甘えてきてくれているプレイメーカーを可愛がってあげようと目下の部分に触れて優しく撫でた。
愛おしそうに優しく撫で続けていくと、少しずつだがプレイメーカーの瞼が眠たそうにゆっくり下がりかけていることに気がついく。
「眠いのか?」
『色々とありすぎて疲れた……』
「ならゆっくり休め。たまにはこれくらいの休息は許されるだろ」
「今は犬なのだから」と、草薙の優しい声にプレイメーカーは襲ってくる睡魔に身を委ね、ゆっくりと瞼を閉じて少しだけ顔を草薙へと擦り寄せる。
『すまない草薙さん。巻き込んで……』
「気にすんなよ。お休みプレイメーカー」
完全に眠りに入ったプレイメーカーを優しく撫で続けていた草薙は微笑み、全身に感じる柔らかい毛並みと温かい体温に目を細めた。
「うん、やっぱりふかふかだな」
プレイメーカーの眠気に釣られたのか、草薙も少しだけ眠くなっていくのを感じた。
Aiがプログラムを持ってくるまで身動きが出来ないのならば、このまま眠ってしまうのもいいかもしれないと、草薙も力を抜いてプレイメーカーへ横たわり目を瞑って眠りへと入っていった。
『プレイメーカー、草薙!待たせてごめ……あり?』
解除プログラムが完成したAiは、プレイメーカーと草薙がいる所へ向かって行くと、無防備で穏やかに眠っている姿を見て目をぱちくりしていた。
『あらら、こんなに幸せそうに寝てる二人って珍しくね』
そう言ってAiは二人の寝ている姿を撮影し、そのデータを後日草薙に渡した事は、プレイメーカーは知らなかった。
そして、その後のAiはまだ知らないだろう。
元に戻ったプレイメーカーの絶対零度の寒さに、本気で今日が己の命日になってしまうのかもしれないという経験をする事を。
また、別の話ではあるがプレイメーカーが狼化していたその日のカフェナギは、色んな意味でSNSで話題が持ち上がり、バズっていた事は遊作と草薙が戻ってきた後に知る話であった。
END
「「はっ?」」
AiのSOSコールを受信したリボルバーとソウルバーナーは、何を言っているのか最初は理解できなかった。
とりあえず話を聞いてみると、これまでの犬化ウイルスの原因はAiが作ったパーティープログラムだったらしく、今回はそれを使ってプレイメーカーに入れたらしい。
だが、意識まで野生化してしまったプレイメーカーは完全に野獣となり、野山を掛けるようにリンクヴレインズを走り回っているそうだ。
「まったく。闇のイグニスは私をただの便利屋だと思っているのか」
「今回ばかりは俺だけじゃ、どうにも出来ないみたいだしな」
デュエル途中であったが中断し、リボルバーとソウルバーナーはAiが送ってくれたプレイメーカーがいる場所へと向かっていた。
本来だったら手を組みたくない相手だが、状況が状況のため、ソウルバーナーは少しだけリボルバーを睨みつける。
「だから俺はプレイメーカーの為に我慢する」
「我慢しているならば帰ればいいだろう。私一人でなんとかしてみせる」
「お前一人で任せた後、プレイメーカーに何かしないか見張る義務があるんだよ!」
犬化したプレイメーカーを沢山撫でたり、構ってあげたり、色々とする可能性が高いだろうとソウルバーナーはそう言うと、それを言われたリボルバーは軽く肩を竦ませて笑った。
「ふっ。お前こそ、あの時の様にプレイメーカーを愛でたいだけだろう」
「あぁ愛でたいね!滅多にプレイメーカーを可愛がるなんて、なかなか出来ない事だしな!」
プレイメーカーはどんな犬種にされているのか、リボルバーもソウルバーナーも内心では楽しみにしていた。
可愛く威嚇をしているポメラニアンだろうか。それともチワワだろうか。どんな姿でもきっと可愛らしいのだろうと、ようやく指定されていた場所に到着したと同時に二人の頭上に大きな影が覆われた。
「グルルルルルルルッ!」
二人の目の前にいたのは人一人踏み潰されるのではないかと思うくらいの超大型犬が、ドス低い声で唸りを上げて威嚇していた。
「ソウルバーナー」
「なんだよ」
「私の見間違いだと思いたいんだが、あれは犬ではなく狼だと思うんだが」
「犬というより狼だな。しかもあれだあれ、も〇の〇姫の犬神様みたいな感じだな、デカさ的に」
もう一度、二人は目の前にいる狼を眺める。
この狼がAiが言っていたプレイメーカーなのだろうかという確認だ。
確かにプレイメーカーの特徴的である赤毛と黄色毛であり、鋭い瞳も綺麗な翠色であった。
そしてリボルバーはリンクセンスで伝わってしまう。目の前の狼は確かにプレイメーカーだという事を。
「私達は小型犬だったのに、何故プレイメーカーは大型犬なんだ!いや、あれを大型犬と言っていいものなのか!」
それでもリボルバーは納得出来なかった。
自分達はAiによって小型犬にされていたのに、プレイメーカーだけ違う事になっているのを。
同じく納得していなかったソウルバーナーだが、プレイメーカーを眺めながら両手をポンッと叩く。
「可愛い系よりカッコイイ系の方が勝ったか、それともハノイの騎士を壊滅させる為に考えた結果なのかもな!」
「ハノイの騎士は壊滅された後だぞ!」
確かにまだ復讐時代のプレイメーカーだったらこの姿にはリボルバーも納得しかけた。
ハノイの騎士絶対に潰す状態であり、その意志がこの形へとなるならば狼になるのも、身体も大きくなっている事も。
「そう言いながら、プレイメーカーはまだ怒ってる可能性はあると思うけどな」
「グッ……」
思い当たる点がありすぎてリボルバーは何も言えなくなっていると、目の前に立っているプレイメーカーはさらに目つきが悪くなり唸りを上げ続けていた。
「グルルルルルルルッ」
きっと話し掛けても人間の言葉は伝わらない可能性が高いと判断したソウルバーナーは、両腕を組みながら隣に並んでいるリボルバーへと問い掛ける。
「んで、どうするよハノイの騎士のリーダー様はよ」
「致し方ないが、コレを使って確保するしかないだろう」
事前に用意していた捕縛用プログラムを出したリボルバーは、内心謝りながらプレイメーカーへ向けて起動させ放つ。
複数の鎖がプレイメーカーへと向かっていくが、対するプレイメーカーも前足に力を入れて屈み、そして口を大きく開いて何本の鎖へと噛み付きそのまま砕いた。
「なっ!データプログラムを噛み砕いただと!?」
「さっすがプレイメーカー!リボルバーの思惑通りにならないそのスタイル!痺れるぜ!」
「褒めている場合か!」
捕縛用プログラムが使えないとなると、他に捕まえる方法のプログラムを作り上げなければならないと、リボルバーは急いで次のを作成へ取り掛かろうとした。
それに気がついたプレイメーカーは目を見開き、二人に向けて「ガウッ!」と方向を放つ。
耳が痛くなる程の音と激しい振動と強い風。
一瞬だけふわっと宙に浮いた二人だが、何とか地面へと踏み止まり、耳鳴りする耳に手を当てて軽く頭を横に振った。
「いってぇ……!軽い咆哮で、この威力かよ!」
「まずいな。このままでは色んな箇所でデータが破損していくぞ」
咆哮の衝撃によって周りのものが破損しており、もしこのまま立て続けの咆哮をされてしまうと、リンクヴレインズのサーバーが崩壊してしまう可能性が高くなっていた。
どうにかプレイメーカーをなだめさせようと考えるが、近づこうとするだけでも次の咆哮を構えており、迂闊に近づくことが出来なかった。
「あそこまで警戒心出しまくりだと、変に刺激してまた暴れられたら困るな」
こんな面倒くさい事をしたAiに舌打ちをしたリボルバーは、どうすればこんなにも警戒心の塊となって威嚇しているプレイメーカーを大人しくさせられるだろうかと考える。
すると、同じく考えていたソウルバーナーは何か思いついたのか「あぁ!」と声を上げながら指パッチンした。
「そうだ!一つだけプレイメーカーを大人しくする方法がある!」
そう言いソウルバーナーはデュエルディスクを使って連絡を取り、その連絡を受けた相手は事情を大体把握してリンクヴレインズへとアクセスする。
ログインしてした人物を見たリボルバーは、少し驚いた表情をして口を開く。
「貴方は」
そう、リンクヴレインズへログインしてやってきたのは草薙であった。
草薙は二人の後ろにいるプレイメーカーの姿を眺めながら、少し苦笑いをこぼしてリボルバーとソウルバーナーの方へ視線を変えた。
「事情はソウルバーナーに聞いたが……本当にデカイなプレイメーカー。俺なんかでいいのか?」
「草薙さんならプレイメーカーの心を開かせられるかと思って!」
確かに草薙ならプレイメーカーの心を開かせられるかもしれないと、リボルバーも納得していた。
プレイメーカーを陰ながらサポートし、共に戦ってくれた大切なパートナー。
たとえ野生化していたとしても、草薙なら気がついてくれるのではないかと考えていた。
そんな期待を向けられている当の本人は自覚しておらず、もう一度プレイメーカーの方へと視線を向けて眺めていた。
「いや、でも今のプレイメーカーは野生化した狼だろ?俺で対応出来るか?」
そう話しているうちに伏せして唸っていたプレイメーカーがゆっくりと立ち上がった。
そして、のしのしとゆっくり草薙の元へと近づいてきた事にリボルバーとソウルバーナーは少しだけ後ろに下がり、もしプレイメーカーが草薙へ牙を向けた時の対策準備を進めていた。
「ぐるるる……」
少しだけ唸りながらプレイメーカーは鼻先を草薙へと近づかせる。
スンスンっと匂いを嗅いでおり、少しだけ生温い鼻息を感じていた草薙は少しだけ下がり、なるべくプレイメーカーの視線と合わせようと顔を上げた。
「よう、プレイメーカー。俺だけど、わかるか?」
大きな瞳に映る自分を見つめながら、草薙は勇気を持ってプレイメーカーに声を掛ける。
このままぱくりと食べられられないだろうかと、草薙は内心冷や汗かいていたが、ギラギラしていたプレイメーカーの瞳が少しずつ柔らかくなっていっている事に気がついた。
喉奥から聞こえていた唸り声は徐々に小さくなり、プレイメーカーは草薙の背中へと周り、伏せをして尻尾を草薙を包み込むように前へ出したのだ。
「凄い、ふかふかだ」
ふかふかな毛並みの尻尾に触れ、草薙はまるで柔らかいシルクに包まれているかのような気持ちになっていた。
そんな見事にプレイメーカーを大人しくさせた草薙の勇姿を眺めていたソウルバーナーはガッツポーズをしていた。
「やっぱり草薙さんなら出来ると思ったぜ!」
「やはりかと思っていても、複雑な気持ちだ……」
あんなにも自分達には警戒の塊で咆哮もし、いつその鋭い牙と爪を向けられるのかと内心ヒヤヒヤしていた。
にも関わらず、草薙だけはこんなにもリラックスした状態であり、リボルバーにとっては悔しいような悲しいような気持ちでいっぱいいっぱいであった。
「あのさ、まさか……プレイメーカーが元に戻るまで俺はこのままの状態か?」
尻尾によってホールドされている草薙は身動きが取れず、どうするべきなのか二人に声を掛ける。
声をかけられたリボルバーは申し訳なさそうな表情をした。
「闇のイグニスがいま解除プログラムを作っています。それまで待っていただけますか」
「いや、まぁそれはかまわないけど、店の方が……」
「それなら俺が代わりに店番します!」
元気よく手を上げたソウルバーナーに、これはもう頼むしかないかと草薙はお願いすると、なんとリボルバーも店の手伝いをすると言ったのだ。
ソウルバーナーは嫌な顔をしていたが、人手が増えるのならばありがたいと思った草薙はお願いし、二人はログアウトして姿を消していった。
そして、二人がいなくなった同時に草薙は、プレイメーカーの尻尾を触れながら内心感じていた疑問を投げかけた。
「なぁ、いつまで狼のフリをしているんだ。プレイメーカー」
草薙の問い掛けに、プレイメーカーの瞳は草薙へと向けて固く閉ざしていた口を開く。
『気がついていたか』
聞こえたプレイメーカーの声に、ちゃんと言葉が話せるのかと草薙は一瞬驚きながらも、すぐに表情は柔らかくして微笑んだ。
「そりゃ親友だから気がつくな」
『そうか。そういうものなのか』
草薙の返答に嬉しかったのか、耳をピクピク動かし尻尾は微小に揺らしているプレイメーカーに、草薙は(素直で可愛いな)と思った。
本当なら頭を撫でてやりたい気持ちだが、大きさの違いによって難しいと考えた草薙は、目の前にある尻尾を優しく撫でた。
『元に戻ったのはついさっきだ。それまでは本当に野生化していた』
「そうか。でも、なんでリボルバーとソウルバーナーにはあんなに威嚇していたんだよ」
草薙の問い掛けにピクッと動かしていた尻尾を止め、プレイメーカーは目を細めて「ぐるる……」と、軽く唸った。
『あの二人には反省が必要だと思ってな』
「反省?」
『こっちの話だ』
尻尾を少しだけ荒く左右に振るプレイメーカーを眺めていた草薙は、なんとなく彼の心情に察しながら内心苦笑いをする。
(本当はリボルバーやソウルバーナーにも撫でてもらいたい気持ちもあったんじゃないのか)
だが、それを素直に出さなかった理由はきっと何かがあったからなのだろうと、草薙はそう思いながらその分、こうして甘えてきてくれているプレイメーカーを可愛がってあげようと目下の部分に触れて優しく撫でた。
愛おしそうに優しく撫で続けていくと、少しずつだがプレイメーカーの瞼が眠たそうにゆっくり下がりかけていることに気がついく。
「眠いのか?」
『色々とありすぎて疲れた……』
「ならゆっくり休め。たまにはこれくらいの休息は許されるだろ」
「今は犬なのだから」と、草薙の優しい声にプレイメーカーは襲ってくる睡魔に身を委ね、ゆっくりと瞼を閉じて少しだけ顔を草薙へと擦り寄せる。
『すまない草薙さん。巻き込んで……』
「気にすんなよ。お休みプレイメーカー」
完全に眠りに入ったプレイメーカーを優しく撫で続けていた草薙は微笑み、全身に感じる柔らかい毛並みと温かい体温に目を細めた。
「うん、やっぱりふかふかだな」
プレイメーカーの眠気に釣られたのか、草薙も少しだけ眠くなっていくのを感じた。
Aiがプログラムを持ってくるまで身動きが出来ないのならば、このまま眠ってしまうのもいいかもしれないと、草薙も力を抜いてプレイメーカーへ横たわり目を瞑って眠りへと入っていった。
『プレイメーカー、草薙!待たせてごめ……あり?』
解除プログラムが完成したAiは、プレイメーカーと草薙がいる所へ向かって行くと、無防備で穏やかに眠っている姿を見て目をぱちくりしていた。
『あらら、こんなに幸せそうに寝てる二人って珍しくね』
そう言ってAiは二人の寝ている姿を撮影し、そのデータを後日草薙に渡した事は、プレイメーカーは知らなかった。
そして、その後のAiはまだ知らないだろう。
元に戻ったプレイメーカーの絶対零度の寒さに、本気で今日が己の命日になってしまうのかもしれないという経験をする事を。
また、別の話ではあるがプレイメーカーが狼化していたその日のカフェナギは、色んな意味でSNSで話題が持ち上がり、バズっていた事は遊作と草薙が戻ってきた後に知る話であった。
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