藤堂平助 トリップ
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現実の世界では新撰組の歴史とかゲームとかやってたりやってなかったりする夢主です
鬼の力は基本的にない方向ですが、あったりする場合もあります
一応帰る方法とか、探っていますけどある程度親密度を上がったら話しているでしょう
新撰組の人たちは嘘ではないし疑ってもないのでしょうが想像できないって事でそんな感じです
あと家族関係の話になっちゃうので意図的に避けています
オリジナル設定はその都度説明を入れる形にして行きたいと思います
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寒桜に、梅、そして桜が咲き始める頃。
私は生命が息吹始めた山の中を散策しては薬草を集めていた。
お薬が無い分、こうやってたまに薬草を取る事は大切な事である。
あと余ったら生活の足しにもできるのだ。
千鶴ちゃんから頂いた山菜や薬草の本を頼りに山の中を練り歩いていたときだった。
誰か倒れているのを見つけ、喉の奥で悲鳴をあげた。
乱世から身を遠ざけたけれど山に逃げてきた人がのたれ死んでいたりするのを見かけると身がすくんでしまうのだ。
それでもできる限り土に埋めてあげ、そこらへんの石を墓がわりにしていた。
帰って平助にでも頼もうか。
平助の無理している笑顔が頭をよぎる。
後ろに後ずさり別の道を行こうとしたらうめき声が聞こえた。
生きているとわかると、荷を下ろし、近寄って側で座り背中に耳を当てて心音を確認した。
ひっくり返して頬を叩くと青ざめた顔で目を回していた。
手の内には毒はないが灰汁の強い山菜があり、腹を空かせて食べたのだろうかと思った
とりあえず起こさないといけないと思い体を揺らして見たが呻くばかりで仕方なく渾身の力で頬を引っ叩くと赤い跡が残った。
『いってぇうっおえっ……』
『とりあえずみんな吐いちゃってください。』
背中を叩いて胃の中を空になるまで付き合うと少しは楽になったのか、吐き気が収まっていた。
竹筒に入っている水を渡して口を濯いでもらい肩を貸して家まで送る事にした。
男は何処かで見たような身なりをしていたが、気分が悪いのか伏せており、顔はよく見えなかった。
漸く家に着き、男を板の上に乗せると崩れるように横になっていた。
とりあえず干し芋と水を渡すとお礼を言い噛み締めながら食べていた。
すぐ食べれそうな山菜を手に取り刻んで炒めたものと
処方しておいた滋養にいい薬草を一つ手に取り、
湯に混ぜてお客さんの目の前に出した。
すまないと言いつつ箸を素直に進めている様を見ると犬がもう一人増えたような気がして笑った。
『はぁーー死ぬかっと思ったぜ。ありがとな』
『いえ、死んでなくてよかったです。』
外はもう鳥が巣に帰る頃で、平助が起きてくる頃だ,
『世話になった。邪魔するといけねぇから俺はここを出る』
『うちに泊まっていきませんか?ここら辺野良犬やイノシシが出るんですよ』
そう普通に告げるとお客さんは渋い顔をして、お言葉に甘えて一晩だけといった。
『じゃあ、主人に言ってきますね』
戸を開けると、まだ布団を抱いて寝ている平助がいた。
『平助ー、平助、起きて起きて』
『んあ……あっ?あぁもう夜か……』
私が頬に自然にキスをすると白い歯を見せて笑いかけてくれた。
『ん?誰かいるのか?』
『うんとね、行き倒れの人を拾ってきたの。一晩だけいいよね?』
『別に俺はかまわねぇけど……』
『あの、すいません今晩世話になる……』
『平助!?!?』『龍之介?!?!』
全員目を丸くして見つめ合っていた。
聞いたことがあると記憶の中を呼び起こした。
『龍之介……あっ!平助がお話ししてくれるよく殴られてた人だ』
平助が吹き出して笑うのと龍之介さんが怒るのと同時だった。
『おい、平助。お前なんつー説明してんだよ』
『あっいや。ごめんごめん。でも間違ってないだろ?』
『大いに誤解を生んでんじゃねーか。』
怒ったついでに龍之介さんは少し泣きそうな顔をして、喜んでいた。平助も感慨深い顔をして笑っていた。
『そっかぁ。龍之介さんがくるとわかっていたならお魚撮ってきていたのに。』
『いやこいつにはそこまでしなくていいから』
『おいこら平助。しかしいい嫁さんだな。』
目があうと私は会釈をして平助のそばに寄ったら抱き寄せられた。
『お前だっていい相手いたじゃねーか。どうなんだ?』
『なっ。なんでお前がそんなことしってんだよ』
『ちょっと風の噂でな。そういう龍之介こそ俺をみて驚かないな』
『俺は……たまたま町で見かけたからな』
『町?龍之介、ここら辺に住んでんのか?』
『いや、まぁ話すと長くなるんだが』
『じゃあ私はお夕飯作ってきますね』
今日はお米をだして炊こう。そして干し肉も出してしまおう。
平助には秘密にしておいた徳利をだして酒盛りの肴を考えながら料理の準備をして言った。
何だかんだ男同士の会話を聞くのは好きだ。
女の私では、平助をああやって豪快に笑わせることはできない。
そうだ。食後に魚の干物を焼いてだそう。
豪華とは言えないけど、それなりの晩御飯ができて、食卓を並べた。
尽きぬ話題で盛り上がっている二人に呼びかけるまでご飯の前に座ることを忘れられていた。
『奥さんこれうまいな。米まで焚いてもらってなんか……申し訳ねーや』
『遠慮するなんで龍之介らしくねぇな。』
『夫の友人だもの。もてなさないとね』
『そういや、奥さんは平助のどこがいいと思ったんだ?』
平助と視線を交わしてかぁっと頬が熱くなった。
器も膝元に置いて何から話せばいいのやらと焦っていたら余計に見つめられて混乱してしまった。
『せ……誠実な所…とか?』
龍之介は吹き出して腹を抱えて笑っていた。
『そんな笑うことかよ!誠実だろ俺!』
『あのっおっちょこっちょいのへいすけっがっせっ、誠実ってあっーはっはっ!!』
床を叩いて転げてしまい、平助は歯ぎしりしながら怒っていた。
私は慣れない言葉を吐いてしまい、ボソボソとご飯を食べて心を落ち着かせていた。
一人ご飯を早く済ませてしまった後でも、二人は話に花を咲かせている。
最初はお互いぎくしゃくしていたのにその反動かもしれない。
男性に嫉妬するなんて思ってもみなかった。
お湯で温めておいた徳利の水を拭き取りお猪口を二つ取り出してお盆に乗せて持っていった。
『あっ、名無しどこにそんなもの隠してたんだよ!』
目を輝かせて尻尾を振っているのと同時に怒っていた。
油断したらいつも決めた量より飲んでしまう傾向があるのでこうして隠している酒がないか夫婦でいたちごっこをしている状態なのだ。
『大切なお客さんに感謝すること』
お盆を床に置いてお猪口を渡し、どうぞと酒を注いだ。平助はすでに自分でお猪口を持っていた。
いいお酒だけに声を漏らして喜んでいた。
『龍之介、またいつでもここに来いよ』
『お前それ、酒が飲みテェだけだろ』
『そんなにほいほい酒は出せませんよー』
『ちぇー』
『どこの家の嫁さんもおんなじだな』
そういえば一瞬しか見たことないので殆ど朧げなのだがとなりに女の子がいたのを思い出した。
『子鈴つってこいつが鼻の下伸ばして追いかけてた女だよ』
『鼻の下は余計だ。つーか、平助の方がデレデレじゃねーか』
『まぁ、好きだからな』
空になったお盆で顔を隠すと呆れたため息が聞こえた。
これでも一年過ごしている中なのに好きという言葉は熱い。
『子鈴は家で留守番してるだろうな』
しんみりとお酒を飲むと龍之介さんは想いを馳せていた。
『龍之介が旅賃ケチらなかったら今頃山降りて帰れてたのにな』
肩を揺らして笑っていた。
そういえば腹を空かせて倒れていたんだった。
『うっうるせぇ!いろいろごたついて予定が狂ったんだよ』
『ほんと、手際の悪いやつ。』
『平助に言われたかねーよ。奥さん聞いとくれよ、こいつな井戸で』
『おいその話はやめろって!!!酒取り上げるぞ!』
慌てて止めに入る平助をみてニヤニヤしながら話を進めていっていた。
みんな楽しく飲んだ後、布団は2組しかないので
片方は龍之介さんでもう片方は夫婦で寝ることにした。
イチャイチャしていたら咳払いして寝るように言われてしまい、顔が熱くなった。
翌朝、龍之介さんには笹の葉で包んだ握り飯を渡しておいた。
『今度からは野垂れ死ぬなよ』
『優しい奥さんがいるからな、今度もよろしくな』
『頼る気満々かよ。まっうちはいつでもいいけどな。
お礼は酒でいいからな』
『へいへい。酒は買い慣れてるから任せとけって』
平助と二人で見えなくなるまで見届けた。
『よかったね。また会えて。』
『あぁ。というか、龍之介だったからよかったけど変な拾い物すんなよ。危ねぇやつだったらまず俺を起こせよ』
『はーい。』
抱きしめると頭をポンポンと撫でられた。
『ありがとな…』
小鳥のさえずりと風のさざめきが春を匂わせていた。
end