藤堂平助 トリップ
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現実の世界では新撰組の歴史とかゲームとかやってたりやってなかったりする夢主です
鬼の力は基本的にない方向ですが、あったりする場合もあります
一応帰る方法とか、探っていますけどある程度親密度を上がったら話しているでしょう
新撰組の人たちは嘘ではないし疑ってもないのでしょうが想像できないって事でそんな感じです
あと家族関係の話になっちゃうので意図的に避けています
オリジナル設定はその都度説明を入れる形にして行きたいと思います
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梅雨の時期は不規則に雨が降る。
外に出られないくせに
湿気が強くて蒸し暑くなるから俺が嫌いな時期でもある
雨が降るときは見廻りもお休みで、幹部の皆で遊ぶか、
道場で鍛錬をするかに決まっているが
殆どのやつがカビが生えるほど怠けるのだ。
やることがないから仕方ないけど土方さんだけは相変わらず仕事をこなしている。
俺は、幹部の皆と遊んで負けたのでさらに憂鬱に廊下を歩いていると名無しが縁側に座ってじっと
中庭を見ているのを見つけた。
俺はなんとなく名無しの隣に座る
『何見てんの?』
雨が涼しい風を運んでくる。
『中庭を見てる』
雲が空を覆って霧が景色全体を曇らせている。
中庭には紫陽花の花や鮮やか紅色の牡丹が見事に咲いて、葉を濡らしている。
『中庭の何を見てるんだよ?』
『何……?景色…というより雨音を聞いてる』
『雨音…か。たまには聞いてみるのもいいかもしれないな』
名無しが不安げな顔からホッとした顔になる
最近こいつのことが少しだけ理解できてきた。
皆が変人扱いするけど良く付き合ってみれば
驚くほど素直で、優しい奴なんだということ。
不規則な雨音と、中庭の景色は確かに趣がある。
『今日は何してたんだ?』
『えーと、炊事して、廊下を乾拭きして、休憩中
平助は?』
『おれはー佐之さんと総司と一くんとで花札して遊んだ』
『勝ったの?』
『佐之さんや一くんには勝ったけど総司には負けたかな…』
『ふーん?花札かぁ…』
『名無しもやるか?』
『ルール…遊び方知らないから無理』
『教えてあげるって、あんなの簡単に覚えられるから』
『そうなの?』
『そうそう。ちょっと待ってろ、札とって来るから』
『うん?』
俺は駆け足で花札の閉まっているところを探して手に取りまた駆け足で名無しのところに戻る。
『これが花札、とりあえず部屋に入るか。』
目を丸くして花札をみている。
俺につられて部屋に入ってきて座ったのを確認すると目の前にカルタを並べていく。
俺が説明している間も食い入るようにみて脳に入れようとしている。
『なんか普通に難しそうなんだけど』
『そうか?とりあえずやってみようぜ,その方がわかり易いって』
『え?まだ覚えきれてないよ?』
『大丈夫、大丈夫。』
名無しの心配をよそに畳の上へ勝手に並べていく。
『え?こんなに並べるの?』
『これが普通だろ?』
『えっ?さっきのんーと?』
いざ初めてみると全く容量が分かってないのか
名無しはあれよあれよと文無しになるばかりで
頬を膨らましまん丸になって悔しがるばかりだ。
『もーわかんないし!!!平助はいじわるだし!!!やめる!』
負ける時のリアクションが面白くて
もう一回もう一回とやり続けていたら
機嫌を損ねてしまった。
『怒んなって、な?そうだ今度おはぎ奢ってやるからさ』
『……おはぎ』
機嫌を損ねても甘い物をちらつかせればすぐに目を輝かせるのはちょろすぎる。
『おはぎなら半分許してあげましょう。』
『半分?残りの半分はどうしたら許してくれんの?』
『んー残りの半分はー』
腕を組んで考え込む。なにを要求されるのだろうか。
目を合わせてくれるわけでもないけど顔を覗き込んで返事を待つ。
『お散歩したい。』
『散歩?散歩でいいのか?』
『うん、川が見たい。』
変なやつだ。川なんて見てどうしたいのだろうか?
『どうして?』
『カエルの鳴き声が聞きたいから。』
『かえるぅ?カエル…?まぁ、京の街中まで聞こえないけどさ?』
俺にはさっぱりわからない。カエルの鳴き声が聞きたいとかよくわからない。
一緒に行ってみればわかるのだろうか?
『なら傘さしていくか。』
『今から?いいの??』
『どうせやることないしな。このくらいの雨なら傘さしていけるって』
雨音はまだ静かなものだ。傘なしでもいいくらいの雨なら散歩くらいいいだろう。
玄関で下駄を二人分引っ張り出して履く。
久しぶりに下駄を履いたのかヨチヨチと足取り軽く
歩いて喜んで見せる名無し。
傘は一本しかなくて相合傘をするような形になってしまった。
肩を寄せ合って俺が傘を持って濡れないように傾けてやる。
雨で、店は閉まっていて京都は傘を差した人達が静かに行ったり来たりするだけだ。
パラパラと小さな豆が落ちる音がする。
名無しはというと辺りの景色を舐め回すように見て回っていた。
『あっ平助、ごめんね。濡れてる?』
『俺はいいよ、男だし。お前はバカだけど風邪引いたら困るからな』
『バカじゃないから!!!』
すぐにフグになる。柔らかそうな頬が怒りを逃してる。
『馬鹿っていうな!!!』
『仕方ないじゃん、馬鹿なんだから』
『そもそも藤堂さんには言われたくないもんね!!!』
『ぐっ…まぁ名無しよりかは俺の方が賢いし』
『平助の野郎!また何かやらかしたな!っていっつも説教受けてるくせに〜』
土方さんの真似をしながら言う。
はっとして、じっと見つめる。名無しは顔の上にハテナを並べている。きっと俺の下の名を口にした意識がないのだろう。
『いま』
『あっカエルの鳴き声が聞こえるよ!』
セリフを遮られた。二度訪ねるのも馬鹿らしくて飲み込んだ。
名無しは頑なに下の名を呼ばないけれどたまに呼ばれると心臓が跳ねるのはなんでなんだろう。
ゲコゲコとカエルたちの鳴き声が響き渡る。
きっと草むらの中にいるのだろう。
『落ち着くよね。カエルの鳴き声。実家でよく聴いてたから聞きたくなって』
名無しはいま新撰組で監禁状態だったのを改めて思い出す。
『……ごめんな。実家にいつか絶対帰らしてやるからさ。』
俺の顔に影ができる。
きっと裕福な家庭で愛されて育ててこられたのだろう。
きっと名無しの両親も心配している。いつかは返してやった方が名無しの為であるのは分かっているけれど、
複雑な事情には今すぐ俺ではどうにもできない。
『ごめん、別にそう言う意味で言ったんじゃないよ。
ただほんとに聴きたくなっただけだから』
『……そっか。でも帰らしてやりたいのは本心だからさ。覚えといてくれよな』
『うん。藤堂さんこの前も言ってたよ、それ。ちゃんと覚えてるから大丈夫だよ』
何を根拠に信じられているのかわからないけど
疑う心のない言葉は優しくて痛い。
口を閉ざしていると
『あっカエルだ。可愛い』
あんなヌルヌルしたヘンテコな形をしたカエルが可愛いのか…?
ただカエルを見ると野生の本能が刺激されて
捕まえたくなってくる。
『カエル捕まえてやるよ』
『いいっていいって』
身を呈して止められた。
『なんだよ。好きじゃないのかよ?』
『好きだけど捕まえなくていいから。』
『見るのは平気だけど触るのはちょっと苦手。』
『ふーん。お前が嫌なら捕まえるのやめるけど』
女らしい言い訳と弱点が知れて、少し心が浮く。
『触るの苦手とか意外と女の子なんだな』
『小さい頃は触れてたけどなんかヌルヌルがね…って女ですから!』
『ごめんごめんそう言うつもりで言ったんじゃないって普段そう言うところ見ないからさ。』
『……』
半目でじっと視線で刺される。
冗談に対する謝罪をすると小さなため息を吐かれた
普段は隊士に精一杯に男風を装ってるのから
女風になる事はあまりないのは知っている。
雨で湿った空気が鼻をかすめる。
『私の地元は田舎だったからもっとたくさんのカエルの声が毎晩聞こえてくるんだよね』
『俺も江戸に居た頃は聞いてた。』
『大勢で鳴いてるのに全然煩くなくて逆に落ち着いてくるの。でも今日は数匹しか居ないね。』
『あっ俺もなんとなくわかる気がする。』
雨で川の水が増えて濁り早く流れている。
野草は水滴を弾きながら濡れて行く。
地面はもう乾いたところもない。
『帰ろっか。藤堂さんありがとう。』
『あっあぁ。これくらいなら別に大丈夫だから』
先ほどより少し強い雨音に行きより早足になる。
二人で肩を濡らして帰る頃には袖の先が肌に吸い付いて居た。
end