複数
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定夢主はトリップしてます
現実の世界では新撰組の歴史とかゲームとかやってたりやってなかったりする夢主です
鬼の力は基本的にない方向ですが、あったりする場合もあります
一応帰る方法とか、探っていますけどある程度親密度を上がったら話しているでしょう
新撰組の人たちは嘘ではないし疑ってもないのでしょうが想像できないって事でそんな感じです
あと家族関係の話になっちゃうので意図的に避けています
オリジナル設定はその都度説明を入れる形にして行きたいと思います
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
山が鮮やかな赤化粧に包まれる頃。
京は夏の賑わいから落ち着いた雰囲気を醸し出していた
私も新撰組での暮らしに慣れてきて落ち着いた時に、出張していた近藤さんが新隊士を連れて帰ってきた。
中には平助がおらず、暗い顔をしていたのを見破られて恥ずかしかったのを覚えている。
いつでも帰ってきていいように布団を干して待っているのだから皆からおちょくられてしまっているのに知らぬ顔をしていた。
伊東さん達と新撰組の折り合えない空気を私は肌で感じていた。
隊士が増えた事により屯所が手狭になったのもあるけれど、理由がそれだけではないのはわかる。
(やっと慣れた人間関係なのに大変だなぁ…)
憂鬱になりながらも私は新隊士の人達との関係を頑張っていた。
伊東さんは言葉遣いの端々に新撰組に対する棘があるけれど、それを除けば良弁の立つすごい方なのだとわかる。
度々、勉強不足の私や隊士に説法してくれたりして、三樹三郎さんも鼻が高くしていた。
彼らの扱い方に手を焼いている幹部の人たちは口々に平助へ不満を漏らしていた。
私としては伊東さんは嫌味を除けば普通に話せる方なのでそこまで剣呑していなかったが、弟さんの三樹三郎さんもが厄介だった。
私の立場を不思議がって、藪蛇を突くようにチクチクと探ってくるので顔を合わせないようにするのに苦労していた。
あの食ってかかるような鷹のような目かどうも苦手だ。
度々、幹部の方々の背に隠れておどおどしていたのがさらに気にくわないらしくて、鷹が空を旋回して見張られているような感覚になっていた。
そんな中、私が山南さんの部屋へ本を借りに行った時だった。
山南さんの様子がおかしいので少し会話をしていたら
赤い水について事細かく教えてくれたけれど、あまりに重い話で受け止めきれなかった。
説得のかいもなく赤い水を飲んでしまい、豹変していく様を見て理解が追いつかないまま見ていた。
ぬっと腕が伸びてきて喉を握り潰されそうになる。
息ができずに、力が抜けていく中抵抗していたら山南さんは正気を取り戻し、私に小刀で殺すように仰る。
ここにいればいつかそういうことを体験するだろうと思っていたけれど、親身に思っている人を切るなどという行動はどうしてもできないで泣いてしまった。
山南さんはわかっているのだろう
私がそれほどの勇気もないということを。
山南さんはなんども狂気に飲まれないようにと歯を食いしばり、汗を掻き、気を失いかけつつ私に殺してと願ってくると心臓が絞られるほどつらくて泣いてしまった。
山南さんを止めるために小刀を抜かせまいと抑え込むことだけを考えつつ耳元で呻く音はいつでも鮮明に思い出せた。
大きなうめき声をあげて倒れた山南さんを受け止めると聞きつけた沖田さんが冷ややかな目を私に向けて山南さんを連れて行った。
暗闇の部屋の中に残された私はそこで誰にもこの悲しみを投げる存在がいない事に震えて孤独に泣いていた。
足音が聞こえて、私は怯えるように部屋へと身を隠しながら戻った。
怖くて仕方なく押入れの中へと身を滑り込ませて、静かに涙を流していると、部屋に誰かが入ってくるのがわかり、鳥肌を立たせ、震えた。
いけないものを見てしまったのだ。悪い事をしたのだとしたら私は。
そう考えると口元に手を当て声を漏らさないようにしていたがやがて襖が開いて、誰かがこちらを覗き込んでいた。
『全く、手のかかる子供だね君は…』
鬱陶しそうな声音で言われるものだから叱られたと思った体は硬直してしまい返事ができなかった。
『とりあえず出てきて。君には話をする義務があると思うんだけど。』
ほろほろと流れる涙を手の甲で拭いつつ、たどたどしい手つきで押入れから出ていく。
『泣かれると鬱陶しいんだけど。』
慣れた手つきで行灯に火をつけて沖田さんはあぐらをかいて座った。
私は少し離れて正座をしながら息を整える。
何かを話さないといけないと気持ちが急ぐほど呼吸は整えにくかった。
なんとか事の経緯を教えると、沖田さんはうんざりした顔をしながら薬と新撰組の関係を話してくれた。
話を聞きながら沖田さんの目をちゃんと見ようとしたけれど、何度か逸らしてしまった。
『山南さん。どうなっちゃうんだろうね』
そう呟かれた言葉に返事をすることができなかった。
沖田さんが部屋を出た後も一睡もできずにいて、朝早くから身支度を整えてウロウロしていたら井上さんと鉢合わせをした。
困った顔をしていたが一言無事だと言ってくれて、胸を撫で下ろした。
何かできることはないかと伝えたが、やんわりと断られて私は再び部屋へと戻り、二度寝をしてしまった。
そんなことがあったにもかかわらず屯所は西本願寺へと変わり、忙しさのせいで、なかったかのように扱われていた。
新居にまだ慣れないうちに平助が帰京してどんな顔をしていいか分からず、前みたいな関係には出来なかった。
平助だけではない、新撰組の人はいつでも私を殺せるし、山南さんは変になっちゃったしで私は、皆とへんな空気になりかけたので。心を落ち着けたくてみずから仕事を受けたりして何とか馴染もうとした。
『名無し』
『はっはい。何でしょうか』
『敬語はいいって言ってんじゃん……じゃなくて、どっか出かけない?』
『え?……なんで?』
『えっとほら、お前最近よく働いてるし……土方さんからも許可もらってるからさ』
土方さんという名前を聞いて背筋が凍る。
実質初めて刀を向けられた相手だ。
山南さんの騒動からなにもお咎めなしであったから変に勘ぐってしまう。
『まっまだ掃除終わってないし。また今度お願いするよ。』
『そんなのほっておけよ。他の隊士がするからさ』
一歩ずつ近づいてくる彼からもたつくズリ足で遠ざける。
『あのっそんな任せるのは良くないっていうか』
『たまには大丈夫だって。』
ここにいても外に出ても変わりはしないのにお手伝いしていればまだ自分に役割があるので死なないと私は思っている。
やめたら存在理由がなくなる。
地面が揺れてくる。
『そんなに俺と行くの嫌ならやめるけどさ……』
『そっそんなことないです。そうじゃなくてあの…』
嫌だとかだと彼を傷つけてしまう。
考えすぎて逆に頭が真っ白になってきた。
『じゃあ、行こうぜ。俺も気分展開したいし』
『う…うん。』
返事してしまった。
言ってしまったならことをすすめるしかない。
隣を歩くのはしのびなく三歩後ろから背中を見て歩いている状態だ。
この緊張の糸が張り詰めた微妙な空気が苦手である。
彼がいうには紅葉が綺麗な季節だからと北野天満宮へいこうと言われたのでついていくのだが、
この時代だと足で歩くしかないので息の詰まる時間は長いに違いない。
『っだーーーたえらんねぇ。なんか話しようぜ』
第一声に肩を揺らし驚いて沈黙を破られてたことに心構えてしまう。
『最近何か変わったことない?』
いち早くに出てくるのは山南さんの顔でまさか話題にするわけにもいかない。
『いえ、特に何も……』
しまった。会話を終わらせてしまった。
からと言って次に何かきりだせるほど勇気もない。
彼も口を結んでいる。私は心の中で謝罪した。
『今の屯所での生活どう?なれた?』
『あっはい…よくしてもらってますので……』
なぜか会話を続けるような言葉が出てこない。
『俺は坊主が近くにいる生活初めてだからなんかなれないんだよなぁ。つーか江戸から帰ってきたらめっちゃでかくなってんだもん。スッゲー驚いた』
『そうですね。立派な建物に変わりましたもんね』
ちゃんと声を聞くために自然と隣へと近づいていく。
平助の顔はよく見れないけれど。
『流石に掃除大変だろ?』
『まぁ………少しずつでもやったほうがいいので……』
朝起きてから皆で掃除をしてから隊務にかかるのだけれども、それでも毎日やっても足りないところが出るのでそこを私がちまちまとやっている。
『毎日やってるけど、掃除好きなの?俺ならほっぽり出して遊びにいくけどな。』
『別に…その…やることないですし…』
『やることないからって掃除とか洗濯しねーって。まぁお前のおかげでいろいろ助かってるけどさ,なんか遊びてぇとかないの?』
(何を言ってるんだ…遊んでなんかいたら殺されるのに)
言葉をのみこんで地面を見つめた。
『ないです…』
『なんかあるだろ?えっーと女の遊びなんてよく知らねーけどさ』
私だってこの時代の事はわからない。ましてや女の子と話す機会さえない。
屯所で雑用をしているほうが心休まる。
『えっと…ほんとに…ないです』
そうやって私は会話の初心者になりながらも目的地に着いた。
長い距離を歩きでいくのだから相当話し込んだはずなのに最後らへんはまた無言で歩いてしまう羽目になって最初よりかなり気まずい雰囲気で泣きたかった。
そして普段そこまで歩かない私は足腰が死にかけていた。優しい靴ではなく草鞋。足の裏までズキズキする。
(何時間経ったんだろう)
平助の方を見ると立派な足で立っていてとても休もうなんて言えなかった。
あたりを見ると紅葉しはじめた紅葉が並んでいて、一面赤い絨毯ができていた。
『うわーやっぱすげぇな』
現世でもここにきた事はある。だけどまだ人工の手が入っていないので違う顔色で素直に驚いた。
くるりと見渡し頭の中の映像と照らし合わせる。
少しだけ現世のことを思い出して胸が熱くなった。
『お参りしようぜ』
『はい』
最後の一踏ん張りで付いて行こうとしたら自分の足に引っかかってこけてしまった
『大丈夫か?』
すぐさま近寄ってくる彼になんでもない風を装う。
『やっぱ、休憩するか。』
少し歩くと移動式の屋台が来ていてそこらへんに椅子があるのでやっと腰を落ち着けられて一息をつく。
足首を触りながら痛みを確認する。
平助は饅頭とお茶を頼んでいた。なぜか私の分もあったので気がひける思いだった。
(どこかで切り捨てられるってことじゃないのかな。)
もみじに囲まれた空は澄んだ色をしていた。
一つ白い饅頭を掴み食べて見ると、
優しいアンコの味が身にしみた。
家族で旅行した時を思い出して、普段忘れていた有り難みを感じはじめた。
『うぇっ?!名無し?どうした?口に合わなかったか?』
『えっ美味しいです。すみません。食べちゃダメでしたか?』
半分食べてしまってから慌ててしまう。
『だって泣いてるから……』
『!?ゴッごめんなさい』
指で頬に触れたら濡れていて驚いて袖でこする。
ほんの一筋だけ流れていたのを気づけなかった。
『……なんか…俺でもよかったら話してくれていいんだぜ…?』
『…多分眠たかっただけです。ありがとうございます。』
いい人だと思ったけれど脳裏に残っている言葉たちのせいで差し出された手を握るような気分にはなれない。
『…無理に言えってわけじゃないけどさ……その、暮らして行く仲間なんだからもっとさ…気楽にしていいんだぜ。もっとこう……』
『すいません、心配かけました……』
顔を向ける事が出来ない
(なんでこんな言葉しか出てこないのだろうか)
多分今の台詞は合わない事はわかっている。
枝の先で揺れている一枚の紅葉が目に入った。
湯冷めしたお茶を飲み干すと彼が立ち上がるまで待っていようとするとまた声をかけられる。
『そんなにさ俺のこと信用できないわけ?』
『…別にそういうわけでは……』
『だってさ、ずっと顔見て話さねーし。誘いは断ろうとするし。そりゃ俺のせいなわけでもあるけどさ!』
怖い。そう思うと自分の手首に爪を立ててしまう。
『ご…ごめんなさい。気をつけます』
『そんな事言うなよ。頼むからさ。ちゃんと目を見て話そうぜ』
手首をぎゅっと握りながら恐る恐る平助の目を見て見る。
あまりにまっすぐで怖い。
『そんなに怯えなくても何もしないからさ、えっとその、普通に会話をさ…したいんだよ俺は』
『うん』
目を合わせていると悲しそうな顔をするので胸が痛んだ。
『…とりあえず歩くか…』
椅子の上に銭を置いて立ち上がったのに私も続いた。
まだ足は回復していないけど先ほどよりはマシになっていた。
京内は目の肥やしになるものばかりでキョロキョロして見る。
巫女さんや神主さんたちが箒で落ち葉を掃いていたり、
人々がお参りに来たり観光したりしている。
無言が続く。
あのような雰囲気からでは話題を出しにくいと思う。
(でもわたしからも話した方がいいよね)
意を決して喉に引っかかりながらも呟く。
『わ…わたしここにいちどきたことがある…』
『……誰ときたんだ?』
『かっ…家族で旅行に来たの。』
『へぇ。そりゃすごいな』
『あの時は夏で暑かった…それから』
つらつらと落ちのない思い出話をしているのを聞いてもらっている。
沈黙が怖くてただ言葉を紡いでいく。
『そういやお前、親のところに帰りたくないのか?…』
『…今は会えないよ。』
『………そっか。人それぞれ理由があるしな』
なぜか両親が殺されている気がするが弁明の仕方がわからなくてそのままでいいやと受け流した
なんだ。よく喋るじゃん。』
安心したように笑いかけられて少しホッとした。
『お前さ、もうあの薬のこと知ってんだろ?』
空を見てから唐突に話が始まる。
雰囲気からして真剣な話だろう。
彼が川のほとりの座りやすそうな石に腰をかけるとわたしも近くにある石に腰かけた。
『俺のいない間にいろんなことが起きててさ。うまく噛み砕けないままなんだ。』
『……そうですね』
『お前はさ。薬のことどう思ってるの?』
『……えっ。』
かなり直球で聞かれて冷や汗を書く。
答えを間違えようなら何をされるのだろうか。
『……その…えっと…』
『誰にもいわねぇし、なんもしねぇからさ。教えてくれないか?』
目を見て見ると本気で言っているような気がする。
『麻薬…みたいな存在です…なんというか…悲しい…ものだと思っています』
『悲しい…か…』
子供並みの感想しか出てこない。
『理由はわかってますけど…人は人でしかないので…どうなろうとも苦しむだけですから……』
再開した時の山南さんの顔がよぎる。
全てを見て来たかのような顔を。
『ごめんなさい……わたしが……止められていたなら…』
飲ませないように動くこともできたはずだ。
目の前で起きたのだから。
いまだに鮮明に思い出せる。
山南さんの声が耳元で再生される。
『…気にすんな、お前のせいじゃねぇよ。』
『私…私が……代わりになれたなら……』
『あんましそういうの俺、好きじゃない。』
『あっ……ご…ごめんなさい』
きっぱりと言われてから自分が失言したのに気づいた。
またやってしまった。いけないことなのに気づく頃はいつも手遅れ。
いっそ言葉を噤んで仕舞えばいいのではと思うが自分の悪循環に辟易としてしまう。
『……山南さんはそういうの望んでねぇのは間違いないからさ。あの人のことだ覚悟の上での行動だと思う。』
それは私もわかっている。だけれど思ってしまうのだ。
無性に。
『まぁ、俺も上手く、自分の中で整理ついてないからさ。そうなるのも分からなくねぇよ…』
よくよく考えたら、平助くんは浦島状態なのではないかと私は気がついた。
何か悩んでいる様子も最近見受けられる。
『俺もさ…薬の事は反対なんだよ。あんな人を化け物にしちまう薬。ないほうがいいに決まってる。』
平助くんは地面をにらみながらぶつけられない気持ちを抑えていた。
『だからさ。お前の意見聞けてよかった』
そう言って寂しそうに笑った。
『…わたし、変なことしか言っていないのに?』
『そんなことねぇよ。結構いいこと言ってたぜ?』
どこのセリフをとって言われているのか分からなくて首を傾げた。
平助は長いため息を吐くと参ったように吐露した。
『どうしたらいいんだろうな……』
わたしはどの問題に対してなのか明確に分からなくて返事ができなかった。
そもそもわたしに対しての言葉ではない気がした。
『よし、参ってから帰ろっか。』
『はっはい。』
立派な本殿に圧倒されつつ、手を合わせて祈る。
私は、神様に、平助の悩みの解決と新選組のことを祈った。
神様は、事後報告制だけれども。
頼めるのは神様だけなのだと、悲しくもそう思った。
end