武市
武市さんから勤王まんじゅう作りを頼まれて1年が経った。
前の年より武市さんと顔を合わせる機会が格段に増えた私にとってそれはもうハッピーな1年だった。
武市さんの個人的な来店も以前より増えて、カウンター越しの会話はまるで友人のような距離感のそれになれたと思う。
それだけで私は相当幸せだし、たとえこのままの距離感でも十分満足だ。
なのに、こんなに嬉しいことがあっていいんだろうか。
「土曜日ですか?はい、空いてますけど、えっと…?」
「もし良かったら一緒にどこか出かけないか?」
「えっ」
店内の椅子でさっき買ったばかりの和菓子を食べている武市さんの言葉に、和菓子を並べていた手が止まる。
何かいま、とっても嬉しい言葉を聞いた気がする。
「実は友人から映画の券を貰ったんだ。君が良かったらの話だが、どうだろう、観に行かないか?他にも行きたいところがあればどこでも連れていこう」
好きな人からの休日のお出かけのお誘いにとてつもない嬉しさで固まって一向に返事をしない私を見て、武市さんは答えを真逆に捉えてしまったらしく途端に目線を斜め下に伏せてしまった。
「都合が悪いだろうか」
「えっ、あっ、いやあの違います!行きたいですっ!ぜひっ!」
「そうか?よかった」
思わぬ誤解に慌てて前のめりで返事をすると武市さんは悲しげな顔から一変して、顔を軽く綻ばせた。細めた灰褐色の瞳と目が合った。
途端にはうっと心臓が掴まれる。
武市さんの笑顔ってやっぱり破壊力が高いんだもんなあ……。
しばらくすると武市さんは嬉しそうな雰囲気で「楽しみだ」と言い残してくれて店を出ていった。
その姿を見送るまで私はドキドキしっぱなしだった。
友人になれただけで嬉しいのに、休日にお出かけなんて、もう誰に感謝したらいいのか分からないくらい嬉しくて、胸がいっぱいになる。
「た、武市さんとお出かけ…!しかも休日に…!こ、これってデートみたいじゃ…!?うぁぁどうしよ〜〜っ!!」
そうして私は、武市さんとの約束の日を迎えるまで、毎日が楽しくて仕方なく、あっという間に待ちに待った土曜日を迎えたのである。
土曜日、私は武市さんが車で迎えに来てくれると言ってくれたから店の前で待っていた。
武市さんは私よりうんと年上でかっこいいから、背伸びしておしゃれなんかしたりして。
早く会いたい気持ちと、けれどどこかおかしなところあったらどうしようと何度も店のガラスで自分の姿を確認したりするが、今更なにも変えられないのでとにかく落ち着くために深呼吸した。はぁぁ心臓がやばい。
それにブーンと車が近づいてくる音がする度にドキッとしてしまう。
武市さん、もうすぐ来るかな……。
「田中君すまないが今日は留守居を頼めるか。私は出かけてくる」
本部の廊下ですれ違いざまに告げられた言葉に新兵衛は足を止める。
するとすぐに眉間のシワを深くし主君を咎めるような声色を発した。
「あの和菓子屋の娘とですか」
「ああ。……何か言いたいことがありそうだな」
武市も足を止め向き直って、けれど表情穏やかに紡いだ。
口角は僅かに上がっているが、されど瞳は冷ややかであった。
「……いえ。私に意見はありません」
本当か?と視線を向けられるも新兵衛は無言を貫いた。
「とてもそうは見えんが…まあ、君がそう言うなら私も無理に聞き出すような真似はせんよ」
「……」
「行ってくる。留守を頼んだ」
武市が再び足を進め外に向かう後ろ姿を、新兵衛は痛々しい表情で見つめていた。
◇
「君はこういうところによく来るのか?」
武市さんと映画を見終わった後に入った可愛らしいカフェで注文を終えると、武市さんにそう尋ねられた。
「あっはい!パフェとかケーキが好きで…それに洋菓子からなにか私の新作に生かせるものがないかなって研究もあったり…」
ちょうど今日も季節のイチゴのパフェを頼んだけど、子供っぽいと思われたかなと思うと少し恥ずかしくなった。
今日はずっと隣に武市さんがいるから映画を観てる間も内容より武市さんの方が気になって集中できなかったし、今もカフェで向かい合っているとほんとにデートみたいで早鐘が止まらない。お願いだから帰るまで持って欲しい私の心臓。
「あっ、いやっでもこんなこと言ってますけど結局は甘いものが食べたいだけですかね!」
「ははっ、私も洋菓子は好きだが、私のような男の身ではなかなか入りにくいものだから、君と来れて良かった。できることなら他の店も君と来られたら嬉しい」
「へっ?!」
そう言って照れくさそうに微笑む武市さんを真正面に受け止めてしまって、心臓が鷲掴みにされたみたいに変な声を出してしまった。
わ、私も武市さんと色んなカフェに行きたいです…!武市さんと甘味巡りしたいです…!そう言いたい言ってしまおうかと意気込んだら、「お待たせしました〜」と店員さんがパフェとケーキを持ってきてくれた声に重なってしまった。
うあぁタイミング逃したぁぁと落ち込むけど、美味しそうな甘いスイーツに目を奪われて周りに花を咲かせる武市さんがかわいかったのですぐ気分も元通りになった。ゲンキンな私である。
武市さんはケーキで私はパフェで、好きな人と一緒に食べるといつもより美味しい気がした。
「このパフェすごく美味しいです武市さん…!あの、一口食べませんか?」
だから、あっと思い切ったことしてしまったと気づいた時には私はスプーンにパフェを乗せて武市さんに差し出していた。
予想通り武市さんは目を丸くして驚いていたから、自分のしたことに途端にカッと顔が熱くなって汗まで吹き出してきて、「ご、ごめんなさいなんちゃって」と下げようとしたけど、大きな手にスプーンを持つ手を掴まれて。
「頂こう」
パクっと私のスプーンに武市さんが食いついて、いわゆるあーんの形でパフェを食べた。
「うん」
「へ、ぁ」
あーんだとか関節キスだとか色々整理できなくてスプーンを下ろせないまま固まる私を他所に武市さんは口の端についたクリームを指で拭うと、私を見てふっ、と口角を上げて悪戯な笑みを浮かべた。
「甘いな。君に食べさせて貰ったからだろうか、一段と美味しいよ」
なんて言うから。
「〜〜〜!!!」
私はボンッとゆだってしまった。
それは反則ですって!!!!
「ぁ、え、」
武市さんの言葉と行動に、顔もスプーンを持つ手もどっと熱を持って火照っていく。ドッドッドと心臓の音が耳元で聞こえる気がする。意味のない言葉しか出せなかった。
「ふ、くっ…!」
「!?」
そんな私を見て武市さんは途端に口元に手を当てると顔を背け、肩を震わせて笑い始める。
「へっ……?!」
「す、すまない、いや、君が」
「わっ、私ですか?」
ふはっと堪えきれないといったふうに眉を八の字にさせて破顔する武市さんは楽しそうだが、私のことで笑っているのだと思うと私は恥ずかしいどころじゃない。
逸らした目線を私に戻す武市さんは、そんなに面白いのか若干頬を赤らめている。
「ははっ…君、苺みたいに真っ赤じゃないか」
「なっ、えっ、あっ、」
「君はかわいいな」
「かっ、かわ…?!」
なっなっなっ。
スプーンを落とさなかっただけ私は頑張った。
灰褐色の瞳が愛おしそうに細まって、口を開けて笑う彼の笑顔はどうしようもなく破壊力が高くて、心臓が限界に近かったからだ。
心臓が張り裂けてしまいそうなカフェでのおやつ時間が終わって、そろそろ時間だからと武市さんの車の助手席に乗って帰っていると、前を向いたまま武市さんが今日のことを話し始めた。
「映画の券のことなんだが、実は貰ったというのは嘘だ」
「……え?」
どういうことだろうと運転席の方に顔を向けたら、丁度信号で車が止まったところで、武市さんも私に顔を向け、照れくさそうに顔を綻ばせた。
「私が、君と観たくて買った」
意味を噛み砕いた瞬間、とっても自分に都合のいい言葉を貰ったことに頭が混乱に落とされる。
だってそれじゃあ、最初から武市さんが、私と。
一緒にお出かけしたかった、みたいな。
そんな、あまりにも私にとって幸せな言葉に顔がもう既にこれ以上ないほど熱を持っているのがわかった。
武市さんは私の反応に表情を和ませると、私が膝に置いていた手に自分の左手を重ねた。
「また誘わせてほしい」
手の甲に武市さんの大きくて硬い男の人の手を感じる。乗せられただけかと思いきや軽く包み込むように握られたから、びっくりしてそこから熱が上がっていく。
「えっ、あ、わ、私も、ぜっ是非」
握られた手を見、武市さんの顔を見、と慌てながら返事を返すと武市さんは嬉しそうに「ありがとう」と言って、握っていた手をゆっくりと離してハンドルに戻した。
「はっ、はい、…こっこちら、こそ…」
そうしたら信号が終わって武市さんは前を向いた。
ありがとうなんて、私の方がいっぱい言いたいくらい。
武市さんにお出かけに誘われて幸せな1日を過ごせたのに、またこの幸せが貰えるかもしれないなんて。
それからは、武市さんの言葉通り、武市さんにお出かけに誘われることが増え、私も勇気を出して武市さんのお時間がある時に誘ったりしていたら、2人でいる時間が去年よりもっと増えていた。
嬉しいかと言われたら勿論ほんとうに嬉しくて。
なんだがこんなに幸せでいいんだろうかと、今の状況が私にとってどれだけ嬉しい日々かを実感する毎日で、告白はできないままだけど振られてこの幸せが終わるくらいならこのままで全然良くて、けれど武市さんとの距離がぐっと縮まった1年だった。
前の年より武市さんと顔を合わせる機会が格段に増えた私にとってそれはもうハッピーな1年だった。
武市さんの個人的な来店も以前より増えて、カウンター越しの会話はまるで友人のような距離感のそれになれたと思う。
それだけで私は相当幸せだし、たとえこのままの距離感でも十分満足だ。
なのに、こんなに嬉しいことがあっていいんだろうか。
「土曜日ですか?はい、空いてますけど、えっと…?」
「もし良かったら一緒にどこか出かけないか?」
「えっ」
店内の椅子でさっき買ったばかりの和菓子を食べている武市さんの言葉に、和菓子を並べていた手が止まる。
何かいま、とっても嬉しい言葉を聞いた気がする。
「実は友人から映画の券を貰ったんだ。君が良かったらの話だが、どうだろう、観に行かないか?他にも行きたいところがあればどこでも連れていこう」
好きな人からの休日のお出かけのお誘いにとてつもない嬉しさで固まって一向に返事をしない私を見て、武市さんは答えを真逆に捉えてしまったらしく途端に目線を斜め下に伏せてしまった。
「都合が悪いだろうか」
「えっ、あっ、いやあの違います!行きたいですっ!ぜひっ!」
「そうか?よかった」
思わぬ誤解に慌てて前のめりで返事をすると武市さんは悲しげな顔から一変して、顔を軽く綻ばせた。細めた灰褐色の瞳と目が合った。
途端にはうっと心臓が掴まれる。
武市さんの笑顔ってやっぱり破壊力が高いんだもんなあ……。
しばらくすると武市さんは嬉しそうな雰囲気で「楽しみだ」と言い残してくれて店を出ていった。
その姿を見送るまで私はドキドキしっぱなしだった。
友人になれただけで嬉しいのに、休日にお出かけなんて、もう誰に感謝したらいいのか分からないくらい嬉しくて、胸がいっぱいになる。
「た、武市さんとお出かけ…!しかも休日に…!こ、これってデートみたいじゃ…!?うぁぁどうしよ〜〜っ!!」
そうして私は、武市さんとの約束の日を迎えるまで、毎日が楽しくて仕方なく、あっという間に待ちに待った土曜日を迎えたのである。
土曜日、私は武市さんが車で迎えに来てくれると言ってくれたから店の前で待っていた。
武市さんは私よりうんと年上でかっこいいから、背伸びしておしゃれなんかしたりして。
早く会いたい気持ちと、けれどどこかおかしなところあったらどうしようと何度も店のガラスで自分の姿を確認したりするが、今更なにも変えられないのでとにかく落ち着くために深呼吸した。はぁぁ心臓がやばい。
それにブーンと車が近づいてくる音がする度にドキッとしてしまう。
武市さん、もうすぐ来るかな……。
「田中君すまないが今日は留守居を頼めるか。私は出かけてくる」
本部の廊下ですれ違いざまに告げられた言葉に新兵衛は足を止める。
するとすぐに眉間のシワを深くし主君を咎めるような声色を発した。
「あの和菓子屋の娘とですか」
「ああ。……何か言いたいことがありそうだな」
武市も足を止め向き直って、けれど表情穏やかに紡いだ。
口角は僅かに上がっているが、されど瞳は冷ややかであった。
「……いえ。私に意見はありません」
本当か?と視線を向けられるも新兵衛は無言を貫いた。
「とてもそうは見えんが…まあ、君がそう言うなら私も無理に聞き出すような真似はせんよ」
「……」
「行ってくる。留守を頼んだ」
武市が再び足を進め外に向かう後ろ姿を、新兵衛は痛々しい表情で見つめていた。
◇
「君はこういうところによく来るのか?」
武市さんと映画を見終わった後に入った可愛らしいカフェで注文を終えると、武市さんにそう尋ねられた。
「あっはい!パフェとかケーキが好きで…それに洋菓子からなにか私の新作に生かせるものがないかなって研究もあったり…」
ちょうど今日も季節のイチゴのパフェを頼んだけど、子供っぽいと思われたかなと思うと少し恥ずかしくなった。
今日はずっと隣に武市さんがいるから映画を観てる間も内容より武市さんの方が気になって集中できなかったし、今もカフェで向かい合っているとほんとにデートみたいで早鐘が止まらない。お願いだから帰るまで持って欲しい私の心臓。
「あっ、いやっでもこんなこと言ってますけど結局は甘いものが食べたいだけですかね!」
「ははっ、私も洋菓子は好きだが、私のような男の身ではなかなか入りにくいものだから、君と来れて良かった。できることなら他の店も君と来られたら嬉しい」
「へっ?!」
そう言って照れくさそうに微笑む武市さんを真正面に受け止めてしまって、心臓が鷲掴みにされたみたいに変な声を出してしまった。
わ、私も武市さんと色んなカフェに行きたいです…!武市さんと甘味巡りしたいです…!そう言いたい言ってしまおうかと意気込んだら、「お待たせしました〜」と店員さんがパフェとケーキを持ってきてくれた声に重なってしまった。
うあぁタイミング逃したぁぁと落ち込むけど、美味しそうな甘いスイーツに目を奪われて周りに花を咲かせる武市さんがかわいかったのですぐ気分も元通りになった。ゲンキンな私である。
武市さんはケーキで私はパフェで、好きな人と一緒に食べるといつもより美味しい気がした。
「このパフェすごく美味しいです武市さん…!あの、一口食べませんか?」
だから、あっと思い切ったことしてしまったと気づいた時には私はスプーンにパフェを乗せて武市さんに差し出していた。
予想通り武市さんは目を丸くして驚いていたから、自分のしたことに途端にカッと顔が熱くなって汗まで吹き出してきて、「ご、ごめんなさいなんちゃって」と下げようとしたけど、大きな手にスプーンを持つ手を掴まれて。
「頂こう」
パクっと私のスプーンに武市さんが食いついて、いわゆるあーんの形でパフェを食べた。
「うん」
「へ、ぁ」
あーんだとか関節キスだとか色々整理できなくてスプーンを下ろせないまま固まる私を他所に武市さんは口の端についたクリームを指で拭うと、私を見てふっ、と口角を上げて悪戯な笑みを浮かべた。
「甘いな。君に食べさせて貰ったからだろうか、一段と美味しいよ」
なんて言うから。
「〜〜〜!!!」
私はボンッとゆだってしまった。
それは反則ですって!!!!
「ぁ、え、」
武市さんの言葉と行動に、顔もスプーンを持つ手もどっと熱を持って火照っていく。ドッドッドと心臓の音が耳元で聞こえる気がする。意味のない言葉しか出せなかった。
「ふ、くっ…!」
「!?」
そんな私を見て武市さんは途端に口元に手を当てると顔を背け、肩を震わせて笑い始める。
「へっ……?!」
「す、すまない、いや、君が」
「わっ、私ですか?」
ふはっと堪えきれないといったふうに眉を八の字にさせて破顔する武市さんは楽しそうだが、私のことで笑っているのだと思うと私は恥ずかしいどころじゃない。
逸らした目線を私に戻す武市さんは、そんなに面白いのか若干頬を赤らめている。
「ははっ…君、苺みたいに真っ赤じゃないか」
「なっ、えっ、あっ、」
「君はかわいいな」
「かっ、かわ…?!」
なっなっなっ。
スプーンを落とさなかっただけ私は頑張った。
灰褐色の瞳が愛おしそうに細まって、口を開けて笑う彼の笑顔はどうしようもなく破壊力が高くて、心臓が限界に近かったからだ。
心臓が張り裂けてしまいそうなカフェでのおやつ時間が終わって、そろそろ時間だからと武市さんの車の助手席に乗って帰っていると、前を向いたまま武市さんが今日のことを話し始めた。
「映画の券のことなんだが、実は貰ったというのは嘘だ」
「……え?」
どういうことだろうと運転席の方に顔を向けたら、丁度信号で車が止まったところで、武市さんも私に顔を向け、照れくさそうに顔を綻ばせた。
「私が、君と観たくて買った」
意味を噛み砕いた瞬間、とっても自分に都合のいい言葉を貰ったことに頭が混乱に落とされる。
だってそれじゃあ、最初から武市さんが、私と。
一緒にお出かけしたかった、みたいな。
そんな、あまりにも私にとって幸せな言葉に顔がもう既にこれ以上ないほど熱を持っているのがわかった。
武市さんは私の反応に表情を和ませると、私が膝に置いていた手に自分の左手を重ねた。
「また誘わせてほしい」
手の甲に武市さんの大きくて硬い男の人の手を感じる。乗せられただけかと思いきや軽く包み込むように握られたから、びっくりしてそこから熱が上がっていく。
「えっ、あ、わ、私も、ぜっ是非」
握られた手を見、武市さんの顔を見、と慌てながら返事を返すと武市さんは嬉しそうに「ありがとう」と言って、握っていた手をゆっくりと離してハンドルに戻した。
「はっ、はい、…こっこちら、こそ…」
そうしたら信号が終わって武市さんは前を向いた。
ありがとうなんて、私の方がいっぱい言いたいくらい。
武市さんにお出かけに誘われて幸せな1日を過ごせたのに、またこの幸せが貰えるかもしれないなんて。
それからは、武市さんの言葉通り、武市さんにお出かけに誘われることが増え、私も勇気を出して武市さんのお時間がある時に誘ったりしていたら、2人でいる時間が去年よりもっと増えていた。
嬉しいかと言われたら勿論ほんとうに嬉しくて。
なんだがこんなに幸せでいいんだろうかと、今の状況が私にとってどれだけ嬉しい日々かを実感する毎日で、告白はできないままだけど振られてこの幸せが終わるくらいならこのままで全然良くて、けれど武市さんとの距離がぐっと縮まった1年だった。