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月と敬慕




「洋?行くぞー」
「え、あ、うん……」
累ちゃんから返事が来ない。少し遡ると、
《今度の飲み会行く?》
《どうしようかな》
《来てよー 俺一人じゃつまんないよ》
《わかった》
というやりとりが残っている。それから、待ち合わせの時間とか、誰が来るかとか、そういうことを伝えて、今日。全部で五人、大学の時の友だちとの集まりなのだけれど、俺も累ちゃんも、そんなに社交的な方ではなかったから、ちょっと気まずい。累ちゃんが来てくれるから、行くって言ったのに。最後の俺からの連絡は、1時間前。用事があってだいぶ早く待ち合わせ場所についていた俺が、早く着きすぎちゃったから累ちゃんも早く来て、とふざけた感じで送った。既読もついてない。めんどくさくて無視されてるのかとも思ったけど、累ちゃんはアプリに未読のマークがついてるのが嫌いなので、それはない。むしろ、見てないのがちょっと不思議なぐらいだけど。まあ、1時間ぐらいなら、なんかちょっと忙しいのかな、と思った。急用ができちゃって、来れなくなったとか。そういう連絡が来ないのも、累ちゃんの性格をすると、考えられないけど。友人の一人が、もたもたしている俺の方を振り返った。
「どした?」
「うん、累ちゃんが……連絡つかなくて」
「累ちゃんて、ああ、土賀谷?珍しいな、来るの」
「来ないかも……」
「ふーん。店の場所だけ伝えとけば?」
「……うん」
珍しいといえばお前も来るの珍しいもんなー、と肩を叩かれて、その拍子にずれた眼鏡をかけ直しながら、曖昧に笑った。累ちゃんが来ないなら来なかったよ。そう、言えるはずもなく。
「あれ、確か洋、土賀谷と職場も一緒なんだよな」
「部署が違うけど……うん」
「仲良いなー。よく二人でつるんでたもんな」
「元気?」
「うん」
無駄な時間だ。と、思ってしまった。


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