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ゆうとかおる おまけ




「こないださー、かきたんがバイトの後デートしててさあ」
「はあ」
「あのー、前に店来たお姉さん!ヨシズミ覚えてる?」
「お姉さん?」
「いたじゃーん、きれーなお姉さん!なんで忘れんだよ!」
「覚えてねえよ」
「これだから脳筋は!」

「って、ミコトが言ってたんだけど」
「ミコトさん口軽っ」
かきたん、もとい、横峯がげんなりしている。ミコトはそういう話好きだから、それにあいつ口にチャックついてるタイプじゃないだろ。
俺がこの店で働き始めたのはしばらく前だが、ミコトも横峯も長い方だと思う。ミコトが「鹿波さん」と呼ばれていた頃を知っている身からすると、感慨深いものがある。いや、ない。そんなものはなかった。そも、同じ境遇であるはずのチーフは記憶能力がバグってるから覚えてないだろうし。
店には客も来なかったので、彼女か?写真あんのか?としつこく聞いていると、うんざりしたのか面倒になったのか、生返事だった横峯がこっちを向いた。
「まだ彼女じゃないです、なんで写真もないです」
「まだ。へー。へーえ」
「なんすか」
「なんでも。お前写真ぐらいあるだろ?こっそり撮るだろ、好きな人の写真とか」
「盗撮じゃないですか。ヨシズミさんみたいに犯罪者じゃないんでちょっと」
「スマホ貸せ」
「あー。あぃ、っいったい!いった、腕折れる!」
腕を逆さまに曲げたら、相当痛かったのかすぐに降伏した。ほんと打たれ弱いな、こいつ。ひょろでかいのに。暴力反対、とまだうるさいので反対側の腕を取ると、すぐにパスコードを開けてスマホを提出した。えらいぞ。先輩に逆らうんじゃない。
「どれ?お姉さん」
「ないですって」
「んだよ、つまんねーの。意気地なし」
「写真なんか撮らせてくんないんで……」
「だからこっそり撮れって。なに?デートってなにしたの?」
「お花見……」
「はー、欲がねえことで」
「そうですよ。あ、待って」
「待たない」
「返して」
「花見だな?」
「返っ、痛い痛い痛い、足潰れる」
自分からゲロってくれたので、写真を遡って花見の辺りを探す。ちゃんと一枚ずつ確認していくと、足を踏み潰されている横峯が、ひどい、鬼、悪魔、クソオタク、と弱々しく文句を言ってきた。失礼だな。もっと強く踏んでやろうか。
「お。あるじゃねえか、犯罪者」
「……普通、人のスマホそんなしっかり見ます……?」
「俺は見る。彼女のスマホも見る派だから」
「うわ重……」
「はー?お前望み高すぎだろ。こんなお姉さんがお前みたいなちんちくりんのクソガキと付き合ってくれるわけないだろ」
「う、ゔぶ、ぅ、顔掴むとか、人間のやることじゃない」
「お前よりかは俺の方が望みあると思うね」
「なんかキメてんすか?ぶぇっ」
「砕いてやろうか」
ぶつくさうるさいので、アイアンクローを決めておいた。学ばないやつだな。長いものには巻かれろって言うだろ、逆らえないんだったらへいこら頭下げとけ。
横峯が盗撮した写真は、桜を見上げている女の人を、さも桜を撮りました風に撮影してるやつだった。ずるいやり方だな。立派な盗撮じゃないか。そう告げれば、返事はなかった。また顔潰してやろうか。言われてみれば、顔に見覚えがあるかもしれない。よく覚えていないが。
「付き合えるわけねえだろ、馬鹿だなー」
「む、付き合えますよ、なんなんすか」
「無理だろ。夢見てんじゃねえよ、世界がちげえよ」
「じゃあ付き合えたら俺に謝ってください」
「ははは、謝ってやるよ。なんなら髪も刈ってやる」
「言いましたね」
「おーおー、可哀想だからな」



「なんでヨシズミ髪切ったの?」
「……………」
「ねー、ヨシズミー、なんで突然高校球児になっちゃったの?」
「……………」
「ミコトさん、ムービー撮ってください」
「なんで?」
「ほら、謝ってください。誠心誠意」
「ぐ……」
「なんでヨシズミかきたんに怒られてんの?」
「ちゃんと撮って、ミコトさん」
「うん。ねえ、なんで?ヨシズミどしたの?」
「後で理由教えてあげるから」
「言わなくていいだろ!こいつには!」
「なにそれ!あたしだけ仲間外れとか最低じゃね!?ヨシズミの筋肉オタク!」
「いいから早く俺に謝って」

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