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クリスマス戦線




「25日の夜って、もうあんまりクリスマス感ないよな」
「……そう?」
「明日になったらみんな大晦日に総入れ替えだろ?その準備が始まってる気がすんの」
は、と白い息を吐いた伏見が、イルミネーション真っ只中のクリスマスツリーの隣とは思えない言葉を零して、目を伏せた。昨日の夜は弁当と有馬とクリスマスパーティーをして、今日は普通の平日だから大学があって、それぞれバイトもあって、夜10時になってようやく二人きりで会えた。平日だからなのか、いつもよりも人が閑散としていて、確かにクリスマスの浮かれたムードは無かった。まあ、もうあと2時間でクリスマスも終わるしなあ。
「プレゼントは?」
「え、昨日交換こしたじゃん」
「はー。小野寺は俺にだけ特別なプレゼントをくれるのかと思って期待して来てやったのに」
「二つもプレゼント欲しいの!?強欲!」
「俺はお前にプレゼントはやらないけど」
「等価交換してよ!」
「はい。ん」
にこっ、と笑顔を向けられて、言葉に詰まる。お前、そういう時にそうやって自分の顔を使うの、よくないぞ。しかもプレゼントに値すると思ってやってるし。ナルシスト。ああその通りだよ、もらった気になっちゃうよ!
「……チャリなんだけど」
「えー。寒い」
「俺んち?伏見んち?」
「二択にしたところは褒めてあげよう」
「……三択目がほしかった?」
「やだ。明日一限からあるし」
「サンタさんやってよ」
「毎年飽きねえな、お前……なにが楽しいんだよ、俺にコスプレさせて」
「かわいいから」
「そんなこと知ってんだよ、ゔ、さむ」
一漕ぎ目で、伏見が首をすくめて縮こまった。結局うちに行くか伏見んちに行くか決まってないし。まあ、うちかな。伏見は自分の家に帰りたがらないので。
「うち今日みんないるよ」
「それがなに」
「……なにって……」
「小野寺のすけべ」
「俺まだ何にも言ってないでしょ!?」
「邪な気持ちが伝わってくる。あちらこちらから」
「うぐ……」
「ちゃんとクリスマスプレゼント買ってくれたらいいよ」
「えっ」
「イルビゾンテの財布」
「いくらすんだよ!」
「買ってくれたらこのまま家に帰らなくてもいいよ」
「はっ、えっ、い、いくら、ねえそれいくらするの!?」
「クリスマスの残り時間を金で買おうとしている。買春野郎小野寺」
「ああ!?」


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