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クリスマス戦線




「つづきくーん!」
「うお」
「……仲有嫁」
「こんばんわー!」
テンション高えな、おい。三連休初日、夜。飲んだくれのおじさんたちがいっぱいの中、高井珠子が突撃してきた。
「瀧川くんいつもいるじゃん」
「高井が俺がいるときにばっかり来るんだろ。あれ?高井って俺のこと好き?」
「うける」
「嫌いとか言われるより傷つくんだけど」
「どうしたの?帰省中?」
「うん。年始まで」
「おー。長いね」
「うん、要があんまりに有給とか使わないからおやすみ取らされたって」
「……ほんと使わなそう……」
「ナチュラルに社畜してそう」
「クソ真面目だかんなあ、あいつ」
「枝豆とー、揚げ出し豆腐とー、カルピスください」
「はい」
「飲まねーの?」
「お酒はいいやー」
「誰も持ち帰らねえから安心して飲めよ」
「えい」
「あっ目が!目!」
うっかり暴言を吐いた瀧川が、高井さんの目潰しによって死んだ。カルピスを出して、お酒弱いのにあんまり飲んだら悪い男にお持ち帰りされちゃうもんね、と高井さんが欲しいであろう言葉を吐けば、ねー!と頷かれた。
毎度のことながらなんだけどどうしてこの人しかいないの?彼女がいないから?と死体蹴りをしている高井さんに、それはそう、と頷きながら、朔太郎は会社の忘年会らしいし、航介は今の時期から市場が閉まるまで年始に向けて一年の中で一番の繁忙期に入る、と説明すれば、そうなんだ!と主に後者に対して目を丸くしていた。年末年始はお祝いのためにお魚がたくさん売れるらしい。お店自体はお休みでやっていなくても、おせちやらなんやら、祝い料理には事欠かないもんね。
「要も今日は会社の忘年会なんだー」
「へえ。だから来たの?」
「そお。ひまだから」
「クリスマスって夫婦になるとなにすんの」
「瀧川、生き返る時は生き返るって言って」
「生き返った。なあ、クリスマスってなにすんの」
「えー、夫婦だからってなにが違うわけでもなくない?カップルと一緒でしょ、子どもいるわけじゃないし」
「あ!分かったセッ」

不適切な言葉を大声で叫んだ瀧川のことは俺が酒瓶で殴った。高井さんがゴミを見る目で瀧川を見ている。今日はもう生き返らない方がいいぞ、瀧川。
「クリスマスプレゼントとか買った?」
「んー、プレゼント交換は毎年してる」
「なにあげるの?」
「今年は手袋!去年はネックウォーマーで、その前は帽子で」
「やっぱ防寒対策ものになっちゃうよねえ、時期的に」
「要は毎年すごい悩んで、結局あたしに欲しいもの聞きに来るんだけど、普通遠回しに聞くじゃん?もうそれが下手でさー、あはは」
「ああ、下手そう……そういうサプライズ、仲有めちゃくちゃ苦手そう……」
「なにもらっても、嬉しいのにねえ」
そう目を細めた高井さんがすごく幸せそうで、なんだかいいなあ、と思ったのでした。そろそろ帰ると身支度とお会計をした彼女に、何もらったか教えてね、と口約束をして見送る。お土産に、とサンタさんの顔のチョコを渡せば、嬉しそうに速攻頬張っていた。そんなすぐ食べます?
「……俺が悪かった」
「あ。生き返った、不適切な表現男」
「なんとかの6時間とか言うぐらいだからそういうことやるんだと思って」
「まだ不適切だなー、お前は」
「都築は24日の夜は?」
「オフ」
「そっか仕事、は!?お前今年いねえの!?なんで!?」
「出掛けるから」
「下半身が爆裂して死ね!!!!!」
「男の嫉妬って醜くない?」


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