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みじかいのまとめ





「こあくまみゆきの、いたずらだいすき〜」
「このタイトルださくない?」
「え?なに?……そういうことは言わなくていい?あっそう」

「今回のターゲットは清志郎でーす」
「清志郎におつかいしてきてもらいます。これもういたずらじゃないよね」
「企画を根底から覆すことは言うなと言われたので僕に言えることはもうありません」
「黙れっつったり喋れっつったり……なんなの?ここのスタッフは」
「せめていたずら感を出そうよ。背後から静かに近づいて大声を出すとかしよう」

「清志郎!!!!!!」
「わあああ」
「びっくりした?」
「びっ……くりした……」
椅子から転げ落ちた清志郎が、強張った顔のまま僕の手を取って座り直した。雑誌のインタビューとかいうよくある嘘で騙して座らせていたので、しょうがない。清志郎、疑うこととか知らないし。
「清志郎、僕のためにおつかいしてきて」
「いいけど、あ、カメラ?うん」
「そのまま買い物行ったらみんなに騒がれちゃうでしょ?変装しないと」
「うん」
こっちだよ、とメイク室に案内して、扉を閉める。逃げ出せないように入り口で待ってたら、スタイリストさんには強く言えない感じの戸惑う声と、「本当ですか?」「ほんとに?」「嘘じゃなくて?」って何回も聞くのが聞こえてきた。終わった清志郎の手を引いて、外で待ってるカメラのところへ連れて行く。
「ほら。清子、カメラに向かってちゃんと挨拶して」
「い、いやっ、こ、こんなことになるなんて、思ってなかったんですっ」
「清子。僕に隠れないで。飛び出てる」
「恥ずかしい……本当に恥ずかしい……」
「ギリスカートじゃないんだからいいでしょ。おつかい行ってきて」
「へ、変態だと思われる、女装趣味の」
「大丈夫。清子かわいいよ。ちょっとでかいけど」
「女装とか事務所NGじゃないんですか!?」
「NGだったら僕ライブでロリ服着てないよね」
車で目的地の近くまで行って、ここのこれを買ってきてね、と清志郎に頼む。最近できたたいやき屋さん。実物の写真も見せて頼んでいるんだけど、全く聞いてない。襟のリボンとかふわふわ広がるズボンとかに注意が完全に奪われてる。こんな上の空な清志郎見たことない。女の子にしては確実に大きいのですぐバレると思うけど、顔だけ見たらかわいいよ。車から降りるぎりぎりまでいやいやしている清志郎を半ば蹴り出すように追い出して、カメラの映像を覗く。事故らないか一緒に覗いてる気心知れたスタッフは、インカムでカメラマンとなにやらしゃべりながらこっちにも相槌を打ってくれている。上手く編集されて使われるでしょ。
「……意外と気づかれてない?てゆか、怪しすぎて避けられてる?」
「かもしれませんね」
「ヒールある靴にしなくてよかったよね。歩けなくなっちゃう」
「はは」
「あ。店の前ついた。……ついたよね?なんで入らないの?あの人……もー!ねえ、全然動かないじゃん。清志郎インカムつけてないの?」
「つけてますよ。はい」
「こら清志郎。ビビってないでちゃんとおつかいしてきて。たいやきいつつだからねっ」
「あ。行った」
「あは、あっはは、もうこれ絶対バレてる、超バレてる。キャーキャー言われてんじゃん、んははは清志郎の顔見たい」
車の中でげたげた笑ってたら、清志郎が帰ってきた。死にそうになってる。ウィッグも乱れてるし、服もくしゃくしゃしている。無言のままたいやきの箱を押し付けられて、丸くなってしまった。
「よちよち怖かったでちゅね」
「……みゆききらい……」
「でも清子かわいいよ。僕は好き」
「……………」
「今度デートする?」
「……………」
「清志郎の機嫌が治らなかったので、今回は終わりです。みゆきのだいすき……いたずら……違うな、悪魔が……なんだっけ?」
「こあくまみゆきのいたずらだいすき……」
「そうそれ。また次回ね」


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