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みじかいのまとめ




採寸して注文してた高校の制服が、出来上がった。受験がんばった。ちょっとレベル高めの、でも制服が可愛いとこ。学年カラーのリボンは赤だった。緑か青のパターンもあるってパンフレットには書いてあったっけ。ワイシャツと、指定セーター。ブレザーにプリーツスカート。革靴も新しく買ってもらった。通学カバンはまだだけど、どんなのにしようかな。
「おかーさん!」
「あらー、似合うじゃない。かわいい」
「ど、スカートどうかなっ、長すぎ?」
「そのぐらいがちょうどいいんじゃない?短すぎてもねえ」
「そうだな」
お父さんとお母さんに見せて、写真を撮ってもらった。写真を添付して理人にメールしてもらったら、すぐに返事が来た。かわいいって。似合ってるって。正直お母さんとコメントダダ被りだったけど、全然いい。立ったり座ったりブレザーを脱いだり着たりしてたら、諒太が来た。
「利香子なにしてんの?」
「制服!」
「でかくなったから買い換えたの?」
「ちげえ馬鹿」
「高校の制服が届いたのよ」
「へー。あれじゃん。なんだっけ。あのー、あれだよね」
語彙が馬鹿なんだけど。全然伝わってこないし。まさか「かわいい」を忘れちゃったの?日本人としてイかれてるでしょ。人差し指を立ててあのあれ言ってた諒太が、はっと思い出したようにこっちを見た。
「まごにもいしょー!」
「は?」

「利香子なにしてんの?」
「就活」
「スーツじゃん」
「就活だっつってんじゃん」
「まごにもいしょーだね」
「……諒太それさあ、絶対ずっと違う意味で使ってるからね」
「え!?」
「褒め言葉じゃないから。まさか家の外でも言ってないよね?」
「知らなかった……」
「高校生の時殴ったじゃん」
「利香子が急に機嫌悪くなって殴りかかってきたんだと思ってた……」
「そんなことしたことないし」
「あるだろ!」



よこみねとみやもととドラムの人が諒太のお墓参りついでにうちに来た。お仏壇に手を合わせてる間に、棚の上に並んだ写真を見ていたよこみねが指をさす。
「あ。利香子ふりそで」
「成人式の時の写真だからね」
「えー。ふーん」
「……いやなんかないの?」
「なんかて?」
「かわいいね〜とか。似合うね〜とか。いろいろあるでしょ」
「じゃあそれで」
「褒め言葉で後出しはなくない?」
「そお?」
ふむ、と数秒考えたよこみねが、手を打った。さも褒め言葉のように自身ありげな顔で言われて、つい笑ってしまったけれど。
「まごにもいしょう!」
「……ふ。それ、ふふ、全然褒めてないんだけど……」


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