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みじかいのまとめ





ラブホに来てシャワー浴びて出てきたら、でかい音でAVが流れてた時の心境を述べよ。
「……………」
「あ。りっちゃん」
「……なにしてんの?」
「ふいんきづくり」
雰囲気もクソもない。でっかいテレビがあるからこの部屋がいい、と珍しく言うからその通りにしてやったのに、まさかとは思うけど自分がAVを見たいがためだったのか。言うこと聞いて損した。ていうかこれ、金かかるんじゃないの?なに勝手に見てんの。許可を取れよ、せめて。多分どうせ俺が出すんだから。
「りっちゃんも見なよ、おもしろいよ」
「せめて興奮しろよ……」
「演技が棒すぎてうけんだもん」
「音がでかい」
「音ちっちゃくすると女の子のでかい喘ぎ声しか聞こえないんだよ」
「それでいいだろ」
「えー。そうかなあ」
喉が渇いて、ペットボトルを傾けながらぼんやり見ていたら、先にシャワーを浴びたきり頭にタオルを乗せたままの悠が、こーふんしてきた?と聞いてきた。しない。これ以外に見るところがないので目が向いているだけだ。本読んでていいならそうする。
「もうちょっとマシなの見ろよ」
「だって、つけてみたらこれだったから」
「もう消せば」
「せっかくだし最後まで見たい」
「なにがせっかく……?」
「男がじゃまっけだなー」
全然見る気がしなかったので、デリバリーメニューとかを適当に見てたら、終わったらしい。下手に飯の写真を見てしまったから腹が減ってきた。当の悠はといえば、ベッドに伏せたままリモコンをいじりながらぺたぺたと足を振っている。次のを再生されたらたまったもんじゃないので、リモコンは取り上げた。
「あー」
「終わり。もっと上行って」
「もいっこ見たい」
「もう見ない」
「どう見ても女子高生じゃない女子高生痴漢モノがおもしろそうだったのに」
「楽しみかたが歪んでんだよ」
「そお?」
首根っこを掴んでベッドに対して正位置になるように倒せば、まだぶちぶち言ってた。もういいわ。AV女優は女子高生じゃないんだから女子高生に見えないのなんてしょうがないだろ。今時の女子高生なんかよっぽど大人っぽく化粧してんだからむしろ大差ねえわ。そう言いたかったが、話に乗ると面倒なのでやめた。無駄な手間はとりたくない。服の裾に手をかけて引っ張り上げれば、脱がそうが触ろうが一定のところまでは普段どおりにぽけっとしている悠が、あとそおいえばね、と口を開いた。ちょっとぐらいは集中してほしい。あと雰囲気。
「中出し気持ちいいっていうけど、ほんとなのかなー」
「知らん。黙れ」
「今のやつで女の子がゆってた。気持ちいいから中に出してって」
「本当にはしてないだろ」
「そだけど。りっちゃんしたことある?」
「ない」
「したことあれよお、聞いた意味ないじゃん。俺もないけどさ」
「……………」
めんどくせえなほんとこいつは。女とセックスする時もこうなのか?そうだとしたらこれを受け入れられるような相手、どんな奇特な女と付き合ってきたんだよ。言いたい文句が山ほどありすぎて黙り込むと、同時に手も止まったので気づいたのか、悠が体を起こした。
「したことあった?」
「……なんでお前はしたことないんだ?」
「え。まだパパになりたくないから」
「普通そうだろ。同じ理由だよみんな」
「りっちゃん危ない橋渡ってそうじゃん」
「そういう橋は渡らないことにしてる」
「えー。気になってたのにー」
「ゴムがない分気持ちいいんだろ。はい以上この話終わり」
「だあってあんな薄っぺらいんだよ?そんな変わる?あでも女の子は中びちゃびちゃになったらわかんのかなあ、自分で濡れんのとは別じゃん?」
「……………」
「ねー。聞いてんのりっちゃん」
しつこいしうるさいしめんどくさい。イライラしてきた。レンタルできるところに猿轡があったら今すぐ借りたい。ねえねえねえってば、と爪先で蹴られて、足首を掴んだ。
「お」
「じゃあ中出ししてやるからどっちが気持ちよかったか終わってから教えて」
「……えっ?え、や、そういうこと言いたいんじゃなくて」
「うるさい」
「んぶ、ひが、おれ、だすほーが、やいひゃかったんらけろ」
「はいはい」
片手で頬を押し潰したら、少なくともなにを言いたいかわかる範囲で言葉が不明瞭になったので、多少マシになった。



「もうりっちゃんとラブホ来ない」
「無駄に金がかかるからこっちだって二度とお前と来たくねえよ」
「……お腹痛い」
「悪いもんでも食った?かわいそうに」
「いつか同じ目に遭えばいいのに……」


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