「レコーダー調子悪くない？」
「……………」
「昨日やってた音楽番組、俺クレジットに名前載ってるって、そこだけ見たいんだけど。朝見た時は撮れてたんだけどなくない？」
「……………」
「ねえ見てよ、これ、あーなんだ、タイトルまとめになってる……どうやって直すんだっけ」
「……………」
「聞いてんのお？どのボタン？青？」
「……………」
「黄色？どれ？」
「……もう許して欲しい……」
「は？」
時刻、午前10時。テレビの前、ソファーの上。伏見に昨日の夜スピード勝負で勝って、明日は休みだから午前中だけなんでも言うこと聞いてあげる券をもらって、せっかくだから二週間ぐらい前にネットで注文してたえっちな下着つけてもらっちゃおっかな〜えへへ〜とか思ってお願いしたんだけど、なんか思ってたのと違う。もっと恥ずかしがると思ってた。いや伏見が恥ずかしがるわけないんだけどさあ！特にこういう状況の場合！
「……リモコン貸して」
「うん」
「……………」
「あっ終わりまで飛ばして、いいもうこの辺全部その場にいた」
言いなりにリモコンを操作する。下着としての意味はほぼ為していないぺらっぺらの布とわけわからん紐だらけの上下セットを渡した時の「はあ。これすか」っていうあっさりしすぎた態度で察するべきだった。乗ってくれる時はもうちょっと可愛げがある。少なくとも前に着てくれた時には、わざわざ元の服を全部着込んだ上で、ちらっ♡とかやってくれた。流石に寒いからともこもこしたパーカーを前全開で羽織ってはいるのだけれど、それは全然いい。異論はない。もこもこ靴下ともこもこパーカーでうさぎちゃんみたいでかわいい。でもなんかもうずっと思ってたのと違う。
ていうかよくこんなほぼ全裸みたいな状態で俺の膝の上に乗れるな？こいつ。絶対その気があるって分かってて萎えさせるためにやってるよな？でも正直ここまで普通にされてて、夜ならまだしもこのド昼間からおっぱじめられるかと言われると、あの手この手で逃げられる未来しか見えないので伏見が大正解なのである。ていうかこの人、まさかとは思うけどじゃんけんで負けた時点から拗ねててこうなってるんじゃないだろうな。あり得る。めっちゃあり得る。なんだかんだ言って超負けず嫌いなんだよな、扱いが面倒なぐらいには。弁当と良い勝負だよ。ていうか膝の上で尻の位置を調節して座りなおさないで欲しい。ほぼ紐のパンツしか履いてないの忘れちゃった？上なんて男は必要ないのにブラつけてんだよ？しかもすっけすけのやつ。なんでこの状況で人に背中預けてのんびり座れんの？うわ太ももやっば。やっばなにこれ手ぇ挟んでいいかな。
「あ！ほんとだ、見てこれ、ここ」
「……ベッド行かない？」
「ちゃんと見て」
「はい」
テレビではなく伏見のことを見ていたのがバレたので、顎を持って無理やり前を向かされた。ごきん、って鳴ったんだけど、俺の首の骨平気？折れてない？



「ちなみに伏見が勝ったら俺なにさせられてたの？」
「睡姦」
「……ど……それは……どっちが……？」
「俺が寝てる方。寝付きが良くなる薬も買ってある」
「なんでそう変な方向に思い切りがいいの？」