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みじかいのまとめ




「暇だ」
「帰れさ……」
「野球拳する?」
「なんでだよ」
「争いたい気分だから」
俺の「帰れ」は無視された。まあそうでしょうね。航介が帰らないのに朔太郎と瀧川が帰るわけないよね。2人が航介を連れて帰る状況になったら、俺自分の頭がおかしくなったのかと思っちゃうもん。まあいいよ、もう店は閉めてるわけだし。良い子は寝る時間だもの。
しゅっしゅ!と拳を突き出してすげー弱っちそうなシャドーボクシングをしている朔太郎の提案で、野球拳大会が開催されることとなった。4人いるので、総当たりのトーナメント形式にするか、2対2のチーム戦にするかを話し合って、後者に決定した。なにをこんなことで真面目に話し合っているんだ?と疑問に思ってはいけない。正気に戻った奴の負けである。
「チーム名決めよ」
「たーちゃんとゆかいな仲間たちにする?」
「瀧川要素なくなってるけどいいの?」
「たーちゃんのたが瀧川のただから大丈夫」
「そしたら今度俺の要素なくない?」
「何言ってんだ!たーちゃんは都築忠義のメスの姿だろ!しっかりしろ!」
「都築忠義は生まれた時からずっと男なんですけど」
「えー、俺たちもチーム名決めようよ」
「なんでもいい」
「じゃあスーパーミラクルスペシャルファンタスティックビューティフルさくちゃんとゴリラマンでいい?」
「……ゴリラマンは嫌だな」
「じゃあラーメン大好きラーメンマンにする?スーパーミラクルスペシャルファンタ」
「長い」
ということで、航介と朔太郎、瀧川と俺になった。ぐっぱで決めたので、特に他意はない。じゃんけんは五回まで、脱がされた枚数が多い方の負け。脱いだ服は戻ってこないので、どっちが出てどっちに当てるかは戦略次第ということだ。全裸に剥く必要はないが、そっちの方が確実に勝てることは勝てる。
「航介がんばって!都築なんか皮まで剥いでやれ!」
「よし」
「怖、えっ?聞き間違い?」
「都築いけ!皮なんかくれてやれ!」
「俺もしかして味方いないの?」
一回戦、俺と航介の勝負である。なんか猟奇的な応戦が聞こえるけれど、無視しよう。じゃんけんぽん。

「嘘でしょ」
「やったー!航介つよーい!」
「イエー」
「イエーイ!」
「なにほぼ裸になってんだよ馬鹿!じゃんけん弱男!」
「俺も自分でもびっくりしてる」
5回中4回負けた。信じらんない。靴下を片側で一枚だと言い張ったものの、それでも両靴下と甚平上下が失われた。パンツと中に着てたTシャツだけにされちゃったんだけど。ていうか中にTシャツ着ててよかったよね。危うくパンイチだよ。早くも勝利の舞を踊っている朔太郎が、航介の背中をばしばし叩きながらせせら笑ってくる。
「ぷっぷー!航介は貞操観念の塊なのでこういうゲームには異様に強いんですー!野生の勘で勝てるんですー!」
「片靴下しか脱がせらんねえってどういうことだよ!」
「なんかわかんない、もうわかんない、わかんないうちに負けてたの、俺」
「都築ちょっと泣いてんじゃねえかよ!おい航介!」
「弱い方が悪い」
「この負けず嫌い!」
「さーて。もう勝ち確なんでね、さくちゃんが出るとしますかね。ざっこいざっこい」
「都築の仇はとるからな!」
死んでない。でも仇は取ってほしい。ということで、2戦目は朔太郎と瀧川になった。じゃんけんぽん。瀧川がグーで朔太郎がパー。
「イエーイ!」
「くそ……しょうがない……一枚くれてやるよ……」
「ちょ、え?ちょっと待って、瀧川?ねえ、えっ?なんでパンツから脱ぐの?」
「自分を鼓舞したい。後がないんだって追い詰められることで真価を発揮できると思う」
「それ一回ノーパン挟んでるけどいいの?」
「いい」
「真剣な目でそんな間抜けな……」
「くっ……そうくるとは……なかなかの強敵……戦うに不足なし……!」
「朔太郎が乗っちゃったじゃん」
「次負けたら俺もパンツから脱ごう!」
「航介!味方暴走してるよ!?いいの!?」
「都築腹減った」
「あ、おにぎりでいい?」
航介にじゃこおにぎりを作ってる間に勝負はついた。瀧川が2枚、朔太郎が3枚。瀧川の内訳がパンツと靴下、朔太郎が眼鏡とカーディガンとTシャツ。眼鏡って服なの?ていうか朔太郎上半身全裸になっちゃったけどいいの?普通もうちょっと脱いでも構わないところからやらない?本人がそれでいいならいいけどさ。
でもこれで、うちのチームは計6枚、あっちは計4枚だ。まだ勝機はある。2枚しか残ってない俺が出ると全裸の確率が高くなってしまうので、ズボンが脱げたら後がない瀧川が最後の一戦をすることになった。ズボンさえ脱がなければ、あと片靴下と上に来てる服が残ってるわけだし。
「いけー!航介!丸裸にしてやれ!」
「おう」
「俺にはもう……後がないんだ……!」
「なんとかして勝って!航介を脱がして!」
じゃんけんぽん。瀧川の勝ち。航介が渋々もう片方の靴下を脱いだ。これは本当に追い詰められた瀧川が航介の野生の勘を凌駕するのでは?うまくすれば勝てるのでは?

「負けたわ」
「クソ野郎。全裸恥ずかしくないんですか?」
「ううん。航介が全裸はかわいそうだからズボンは取らないでくれた。その代わり都築のTシャツを生贄に捧げた」
「ふざけんなお前!俺パンツになっちゃうじゃんか!」
「俺もズボンのみだから許して」
「ノーパンだけどズボンは履いてんのとパンツしか履いてないのどっちが惨めだと思う!?」
「航介マジで強いね」
「今日調子いい。じゃんけんで負ける気がしない」
「瀧川の全裸よりも航介の全裸の方が見たかったのに!」
「大差ねえだろ!」
「あるもん!バカ!うわあああ」
「あーあ、都築泣いちゃったよ」
「足寒いから靴下履きたい」


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