このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

だから好きだって言ってるじゃないですか!!!




「脱いだ」
「……………」
「もういい?寒い」
「……………」
「聞いてんのか」
「……俺の声は入れたくないので……なんかもうちょっと喋ってください……ていうかうわこの角度エロ……」
「はあ?」
嫌そうな顔をした秋さんが、嫌そうな声を上げた。もうちょっと下から撮りたい、やっぱ斜めからが良い、と一人で画角を調整しながら舐めるように撮り続けていたら、もう嫌だ、終わりにする、離せ、とソファーから降りようとしはじめた。ちょっと待ってくださいよ!まだ全然終わってませんよ!って無理矢理腕を掴んで止めたら、振り払われた。振り払えてないけど。
「喧しい。もう充分だろ」
「まだ足りません!ていうか俺今触っちゃってる!ひええもうこの手離したくない一生」
「この欲深人間、離せ。顔面殴るぞ」
「嫌です!どうぞ!」
「どっちだよ」
秋さん、俺に遠慮してるんだろうか。さっきから逃げようとしてるけど、俺が追いついて防げるぐらいでしか抵抗してくれてない。優しい。これはいわゆる同意ってことかな。清志郎も、嫌がる女の子相手に酷くするのは悪い人がすることだって言ってた。でも御幸は、口では嫌っていうこともあるけどそれ以外でいいよって言ってたらそれはいいよってことなんだって言ってた。秋さんは俺からそんなに真剣に逃げようとしてないし、ってことはあんまり嫌がっていないし、口では嫌がってるけどそれは照れ隠しってやつなのだ。多分そう。動画モードにしたままのスマホをソファーの隙間に置いて、秋さんの上に座り直す。
「触ってもいいですか?」
「今俺の腕掴んでるこれはなんなの?」
「別の場所も触りたい」
「気持ち悪いから嫌です」
「嫌が嫌です。秋さんくすぐったがりとかじゃないですか?俺は首がこそばゆくてだめなんですけど」
「うわやめろ冷たい!」
「え?俺体温高い方ですよ、もっと触るんで冷たいとか言わないでください」
べたりと胸板に手をつけたら、すごい勢いで文句を言われた。やめろ離せと手首を掴まれたものの、気を遣ってくれているのであんまり痛くないし、手首を掴まれても触る分にはなんの問題もなかった。あんま運動できないみたいなこと言ってたの聞いたことあったけど、ある程度はちゃんと鍛えられててかっこいいなあ。よこみねくんはひょろひょろだって言ってた。今度見してもらお。そんなことを考えながら指先を下に下ろしていけば、もう嫌だ離せどっか行けってまた文句を言われた。足がばたばたする度に上にいる俺は揺れるので、ちょっと面白い。
「じゃあマッサージだと思ってください」
「そんな手つきのマッサージがあるわけないだろうが、やめろその指!」
「だってちょっと肉がある。揉める」
「肉なんかない!」
「ありますよ。あ、わきとかくすぐったくないんですか?こちょこちょー」
「バカ、くすぐったくない、もう充分遊んでやったろ!」
「え?今まで遊んでくれてたんですか?嬉しすぎる……泣きそう……延長お願いします」
「人呼ぶぞ!」
「俺は構いませんけど。お腹の方とかくすぐったいかもですよ、ほら」
「やだやめ、っ!」
「……なんで口塞ぐんですかあ?」
俺の手首を掴んでいた手が、ぱっと離されて、秋さんの口を覆った。ここですか?と聞きながら指先でそっと擽ったのは、脇腹の下の方。ぶんぶん首を横に振られたけど、その反応は却って逆効果だと思う。わざと爪の先っちょで、かりかりと弱く引っ掻けば、背中に膝が飛んできた。だからそれ逆効果だって。
「ここがくすぐったいんですか?もっと上の方は平気っぽかったから……」
「ぅ……」
「くすぐったいのって、気持ちいいらしいですよ。テレビで見ました」
ベルトのぎりぎり、下の方。ぺったりと手のひらを押し当ててあっためたり、わざとそおっとゆっくり触ったり、しつこく指先でこしょこしょし続けてみたり。パターンを変えて何度も繰り返しているうちに、背中をばしばし蹴っ飛ばしてた膝がだんだん大人しくなった。疲れちゃったのかな。もしかしたら後で背中は痣になってるかもしんないけど、しょうがない。だって今の方が大事だからね。
「秋さん。ね、手外してくださいよ」
「……………」
「嫌なんですか?声聞きたいです。思いっきり笑った方がすっきりしますよ。あ!俺別に、他の誰にも言いませんから、秋さんが脇腹だけくすぐったいこと!ね?」
「……………」
「なんでそんな睨むんですかあ」
「っぅ、ひっ」
「あは。下の方がだめなんですね」
親指を伸ばして、臍の下、ズボンぎりぎりのところを爪の先で擽ったら、ようやく一瞬だけ手が緩んで声を聞かせてくれた。下腹もくすぐったいのかな。この辺よりもっと下、ズボンが邪魔でくすぐれないよな。どうしよっかな、って思いながら手を止めたら、その一瞬を狙ってたらしい秋さんが体を起こして逃げようとしたので、全体重をかけて押し倒した。うーん、やっぱり手加減してくれてるんだろうな。俺がステージに立つ仕事をしているからかもしれない。いい人だ。
「手ぇつーかまーえたっ、えっへへ、えへへぇ」
「離せバカっ、この、くそっ」
「口押さえてなくていいんですか?いっぱいくすぐっちゃいますよー」
「!」
「む。あ、なんかいい匂いする。香水ですか?なんの香水使ってるんですか?あ違う、タバコかな?うーん、両方かなあ、んー?」
「ひ、気持ち悪い、お前ほんと、出るとこ出たら俺勝つからな!」
俺の脅しに秋さんが手を口元に持っていって、そしたらバランスが崩れて俺の顔がちょうど秋さんの首筋に寄って、なんかいい匂いがしたので嗅いでたら怒られた。だって気になる。なんの匂いだろう?甘いわけじゃないけど、けむくさいわけでもない。一瞬落ち着いた木っぽい匂いがした気がしたんだけど、別の匂いもする。俺の下で暴れる秋さんにうまく乗りながら首筋から髪の毛とか肩にかけてふんふん匂いを嗅いでいたら、いつのまにかぐったりしていた。よく分かんないけど嗅いでたらお腹空いてきた。
「またくすぐっていいですか?」
「……もうやめてください」
「じゃあ最後にするからあとちょっとだけ」
「……………」
「お願いします、ねっ、お願いお願い、そしたらもう一人でご挨拶に来ませんから、秋さんが嫌ならもうしません、それでいいです?」
「……………」
じとりと疑わしげな目で見られたけれど、黙って待ってたら、それが確約できるならあと少しだけどうぞ、って嫌そうに吐き捨てられた。よかったー。じゃあ、
「っちょ待っ、なにしてんだ、このバカ」
「え?ベルトを外してます」
「は?脳味噌溶けてるんですか」
「だってさっきベルトのぎりぎりが一番くすぐったそうだったから、別にパンツまで脱がすわけじゃないですし、ライブの時はパンツまで脱いでるじゃないですか」
「それはそれこれはこれって知ってる?知らないかバカだから」
「汗かいてますよっ、拭いたげますねっ」
「あ、ぁ?は……?もう訳わかんない……」
何故か汗が輪郭を伝っていたので服の袖で拭いたら、こめかみに手を当てて目を閉じていた。拭いた袖の匂いを嗅いだのはちょうど見えていなかったようでよかった。絶対これも怒られるからな。さっきと同じ匂いはしなかったので、多分香水とかの香りなんだろう。後で教えてもらおう。他人のベルトなんて外したことがなかったので、多少時間がかかったけれど、なんとか緩められた。達成感。
「できましたっ」
「……ああそう……」
「疲れてます?あ、そっか、帰るとこだったのに、俺が来ちゃったから……」
「分かってるなら解放してほしい」
「すぐ終わらせるので思いっきり笑ってくださいね」
「……………」
静かに秋さんが自分の口に手を当てた。笑って欲しかったのに。恥ずかしいのかな、しょうがないか。別にパンツの下に用事がある訳じゃないので、緩めたズボンは脱がしたりしない。少し下がって足の上に座り直して、臍から下に向けてつうっと宙で指を走らせたら、まだ触ってないのに足が揺れて面白かった。ほんとにくすぐったいんだ。
まずはそおっと触って、ちょっとずつ。かりかりと片手では下腹に爪を立てながら、もう反対の手で脇腹をゆっくりなぞった。笑わないように我慢してるからなのか、時々足が跳ねる。顔が見たかったけれど、口を覆っている手が目元まで隠してしまっていた。残念。突然ぎゅって力を込めてくすぐってみたり、触るか触らないかのところでふわふわさせてみたり。呼吸に合わせて上下するお腹が、我慢して息を詰める度にびくりと震えては戻る。おもしろい。両方の指で股関節に向かって伸びている凹みをこしょこしょしてたら、ばしりと手が降ってきた。片手で口元を押さえてる秋さんが、ふーふー言いながら眉を顰めてこっちを見ている。
「ふ、はあっ、っも、ういいでしょ、っ」
「えー。秋さん手ぇあったかいですね」
「だ、っれのせいで……」
「そのまま撫でてください」
「嫌だ」
「あ!そういうこと言う!」
「っぁは、っ!ぅ、んん、っぐ」
もう、どこがくすぐったくて、どうしたら頑張って我慢しなきゃいけない感じになるのかは、分かった。脇腹のやらかいとこと下腹のぎりきりでまとめてこしょこしょしたら、秋さんが慌てて俺の頭にあった手を自分の口元に持っていって、ぎっとこっちを睨んだ。でも目元が赤くなってるからあんまり怖くない。するすると身体を撫でながら上がって、胸元にもたれかかりながら口を開く。
「ね。もうちょっとだけ遊んでください」





「……御幸……」
「艶かしい声出さないで」
「欲求不満じゃなかった……」
「エロくない夢見た?」
「……遊んでもらう夢見た……でもちょっと、ほんとにちょっとだけいかがわしかった……」
「じゃあ欲求不満だよ。なんか適当なのダウンロードして使いな」
「違う……ちが……俺別に……そういう目で見てるわけじゃなくて……」
「そういう目で見てなくてもえっちな夢ぐらい見るよ。僕と天秤にかけるぐらい好きなんでしょ」
「うん……」
「……てことはいずれ僕でもエロい夢見るってこと?」
「えっ?」
「だってそうじゃない?そういう目で見てないけど僕と同じぐらい好きな人のえっちな夢を育は見てるんだよね?」
「そ、そう」
「じゃあそういう目で見てなくてその人と同じぐらい好かれてる僕のえっちな夢もいずれ見ちゃうじゃん……」
「いやっ、み、見ない!それは見ない!」
「明楽ぁ、育が僕のことすけべな目で見る」
「やめて!お願い!それすごい嫌だしそもそも違うし明楽に怒られるし俺御幸のことは本当にそんな目で見たことないから!」
「なんかそこまで否定されるとむかつくんだけど」
「だって……だってほんとに御幸のことそんな目で見たことない……信じて……」
「ほんとに?一瞬も?絶対?」
「……絶対」
「今嘘ついたでしょ」
「ついてない!」
「一瞬ぐらいはあるでしょ!僕かわいいもん、しょうがないよ、でもそれはそれとして明楽に報告します」
「やめてくださいお願いします!なんでもしますから!」


5/5ページ