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ありまとおべんと



「うちの母がですね、お前が一人暮らしをしているという話を俺から聞きまして」
「はあ」
「飯を食いに来ないかという流れになりまして、かなたも大分乗り気でして」
「ふうん」
「来ませんか、うちに」
「いや、別にいいよ。気持ちは嬉しいけど」
「来いよお!快諾しろよ!来てくれないと俺がかなたに怒られんだよ!」
「お気になさらずにって伝えといて」
「なんで頑なに来ねえんだよ!うちの飯うめえんだぞ!知ってんだろ!」
「知らないよ、お前んちの飯食ったことないよ」
「じゃあ食いに来い!お前の好きなもん作ってくれるから!」
「んん……ありがたいけど、申し訳ないっていうか……」
「なに食いたい?魚?肉?野菜?肉だな、お前は肉食わなきゃだめだ」
「かぼちゃ食べたい」
「から揚げにしてもらおう」
「さつまいもでもいいよ」
「んなもん自分で食え、肉に決定」
「有馬が食べたいだけじゃないの、ねえ、ちょっと」
そんな話から数日経って、現在俺がどこにいるかといえば、有馬の家の目の前でして。まだ六時前なのに辺りは真っ暗で、ちょうどよくお腹も鳴り出した頃で、夕飯には持って来いのタイミングだ。直前まで渋っていた俺を半ば無理矢理引きずるように家まで帰ってきた有馬は、すっからかんの鞄から引っ張り出した鍵をがちゃがちゃと回している。何故自宅の鍵を開けるのに手間取っているのかは、俺には全く理解出来ない。
「あれ、うん?これ鍵違うわ」
「はあ?」
「バイト先のだった。間違えて持ってきちゃった」
「大丈夫なの、それ」
「平気平気。弁当ちょっとピンポン押して、かなたは確実にいるから」
「なんでお前がしないの」
「鍵間違えたなんて恥ずかしいだろ、何年住んでると思ってんだ」
やっぱり恥ずかしいんだ、それ。言われた通りにインターホンを押せば、ばたばたと階段を駆け下りているらしい音と、はあい、なんて声がして。特に無計画だったので、なんと言っていいか分からずに言葉に詰まると、再びどたどたと走る音がして、玄関扉が勢いよく開いた。
「べっ、だっ、どうしたんですか!」
「……こんばんは」
「ただいまー」
「お、おか、えり……?」
どうやらとんでもなく驚かせてしまったみたいだ。頭の上にはてなマークをたくさん浮かべながらスリッパを出してくれたかなたちゃんにお礼を言って靴を脱げば、後ろから有馬が殴打されている音と声がした。なんで何にも言わないで連れてくるのあたしめっちゃ部屋着なんだけどっていうかまたなんかあったのかと思ったじゃん迷惑かけないでよ頭のネジ嵌め直せ馬鹿兄貴、だそうだけど、ていうかそれ全部俺にも聞こえてるけど、いいんだろうか。
主に腹に攻撃を食らったらしい有馬がぐすぐすと大人気なく泣きべそかきながら玄関で蹲っているのを綺麗に無視したかなたちゃんが、一歩廊下に入ったところで立ち止まっていた俺を中へと通してくれた。ぺたぺたとスリッパが鳴る毎にいい匂いがしてきて、お腹がきゅるきゅる鳴った。聞こえてしまったのか振り返って小さく笑われて、ちょっと恥ずかしいな。
「今日なんかご飯豪華だなって思ってたんです、あたし、来るなんて知らなくて」
「なんか突然で、ごめんね」
「いえいえ。どうせお兄ちゃんが無理言ったんでしょ」
「んー……まあ、大体そんな感じ」
「遠慮せずにいっぱい食べてってください、お母さんすごい量作ってたから」
「から揚げ?」
「お兄ちゃんがから揚げにしてって言ったんじゃん」
「やったな、肉だぞ弁当」
「肉くらい普通に食うから」
かなたちゃんがものすごい衝撃を受けた顔してるじゃないか、一人暮らしだって肉ぐらいいくらでも食う。腹を摩りながらついてきた有馬がにこにこしてるところからして、やっぱりこいつ自分が食べたかったからから揚げリクエストしたな。がちゃりとリビングの扉を開けて、荷物どうします?なんて聞いたかなたちゃんを見て、俺の部屋持ってっとくから貸して、とこっちに投げかけた有馬に鞄を渡しながら、そう思う。
机の上に並べられたお皿の数が多いのがなんだか新鮮で、ここどうぞ、と勧められた椅子に座りながらきょろきょろと辺りを見回す。台所からお皿を持って出てきた、有馬のお母さんが俺を見つけてにっこり笑った。うわ、笑った顔そっくり。
「いらっひゃい」
「……お母さん味見してたの?」
「うん、おいひい、ひょうれき」
「なんて言ってんのかわかんないよ」
「あ、の。お邪魔してます」
「ゆっくりしててね、あとちょっとで出来るから」
「ただいまあ。弁当の鞄、俺の部屋な」
「うん、ありがとう」
「はるかちゃん、お箸出して」
「えー、かなたがやれよ」
「かなたちゃんは弁当くんにお茶出して」
「あったかいのがいいですか?冷たいのがいいですか?」
「じゃあ、あったかいので」
「はあい」
かなたちゃんと有馬が台所へ引っ込んで、ちょこまかと忙しなく入れ替わる背中だけが見えた。話し声が全員もれなく大きいので、勧められた椅子に座っていても余裕で聞こえてくる。ていうか有馬、やっぱり親にはるかちゃんって呼ばれてるんだ。
「これ出してやれ、あいつ甘いの好きだから」
「やだよ!それお兄ちゃんが買ってきた歯磨き粉味のやつじゃん!」
「そうだ、はるかちゃん。それ自分でちゃんと処理してね」
「なんで!不味いからやだよ!かなた紅茶好きだろ、飲めよ」
「飲まないよ!美味しくないもん!」
「じゃあ弁当に出そう、あいつこんなん好きだから、もうすごい好きだから」
「お兄ちゃんが飲みなってば、これ不味いんだから」
「かなた一回飲んでみ。お湯入れてやるから、はい」
「やだったら、ねえ、嫌だ、飲まないってば!お母さん!」
「はるかちゃんが自分で飲みなさい!今日はお味噌汁無し!」
「えっ、なに、代わり?味噌汁の代わり?これ?」
「あっ違う、今日お味噌汁無かった。スープ無し」
「どっちにしろ無しなの?もしかして俺の分元々無いの?」
「弁当さん、これどうぞ。普通の紅茶なんで」
「あ、どうも」
「箸これ使って、あれ。なあ、予備の茶碗ねえけど、弁当の分」
「はるかちゃんの貸してあげなさいな」
「俺の茶碗は!?」
「なんか適当なの使えば、あっ、カレーのお皿にする?」
「平らな皿にご飯だけ盛ったら冷めない?ねえ、せめて深めのやつにしてよ」
「ライオンの可愛いやつ、はるかちゃんライオン好きだもんねえ。はい、これ」
「聞いてる?聞いてないね、俺の話は全く聞こえてないね」
「お兄ちゃんこれもあるよ」
「なんでうちにお子様ランチのプレートがあんだよ、子どもいねえだろ」
「はるかちゃん昔っからこれ好きだったのよー!」
「なあおい待っ、盛るな!それに俺の白飯を盛るな!やめろ!やめてください!」
「はるかちゃんちっちゃい頃はこれじゃなきゃご飯食べなくてねえ」
「お母さん、スープの器も人数分しかないよ」
「あ、そう?じゃあはるかちゃんの分を使いましょう」
「なんでだよ!なんでなんだよ!」
「だってお母さんのとかかなたちゃんのはちょっとねえ、弁当くん」
「えっ、あ、はい」
「はるかちゃんはマグカップでいいでしょ」
「お兄ちゃんは今日スープ無しなんじゃないの?」
「ああ、そうだった。そのクソ不味い紅茶、責任持って飲みなさい」
「クソ不味くはねえよ!もお!」
ほんとにそこまで言うほど不味くはないから飲んでみろ、と台所から出てきた有馬に突き出されたカップを傾けて、一口で返した。きっと作り方が悪いんだ、こんな味がするお茶ありっこない。突き返されたカップを不満げな顔で受け取った有馬が、一口飲んで静かに台所へ引っ込んでいった。なんで捨てるの、無駄にしないでよ、とそれぞれ怒る声が聞こえてきて、あいつシンクに流そうとしたんだな、と思う。
箸にお茶碗にスープに取り皿に、と机の上がいっぱいになっていく。本当にお子様プレートにご飯が盛り付けられているのを見た時には流石に吹き出してしまった。途中何度かなにか手伝うことはないかと立ち上がったものの、普段自分で全部やってるんだから今日くらいはサボっちまえ、なんてその度に有馬に言われ、椅子に逆戻りさせられて諦めた。それと全く同じ回数、隣に座ろうとした有馬がお皿を出していたかなたちゃんに静かに台所へと連れ去られては戻ってきて、いいからちょっとくらい手伝えとまた引きずられて行って。
「はるかちゃん、台所にいるならスープよそって」
「はいはい」
「お母さん冷蔵庫のサラダは?」
「出して、あっはるかちゃんそれ、すごく熱いからお鍋は持てないよ」
「あっつ!ちょっと!もっと早く言えよ!」
「やだもう、馬鹿ねえ」
「いつも台所なんて入んねえから、つか狭いじゃん。俺も弁当と座ってたい」
「でも、そもそも椅子がないから」
「えっ」
「はるかちゃんの席、弁当くんが座ってるでしょ。どうしよう」
「なんで俺の分を根刮ぎあいつにやるの!」
「お兄ちゃん、スープ」
「お兄ちゃんの居場所があの眼鏡に取られるかどうかの瀬戸際なんだ!」
「ソファー座れば?一人だけど」
「嫌だ!俺も一緒に飯食う!」
「かなたちゃんの部屋の、勉強机の椅子。あれお兄ちゃんに貸してあげなさい」
「やだあ、お兄ちゃんくさくなる」
「なんねえよ。おい、なに言ってんだ、かなたお前」
「それは仕方ないでしょ。後でファブリーズしたら平気よ」
「しなくても平気だよ!な!弁当!」
「えっ」
「えっ……」
「はるかちゃん、早くスープよそって」
「あ、はい、あっつ!」
「だからお鍋は持てないって言ってるでしょ!あんたはもう!」
馬鹿だなあ、はるかちゃんたら学習能力が無いのかしら、お兄ちゃんどうせ弁当さんにいつも迷惑かけてるんでしょ、と矢継ぎ早に母と妹に言葉で串刺しにされた有馬が、ふらふらと台所から出てきて器を机に置いて、そのままがっくりとしゃがみ込んだ。楽しそうでいいね、と話しかければ眼鏡の度数合わせて来いなんて叱られて、だって少なくとも俺には楽しそうに見える。こんなとこでサボんないで、とかなたちゃんに引き摺られて台所へ連行された有馬に手を振って、大人しく夕食を待つことそれから数分。
「いっただっきまーす」
「……いただきます」
「はいどうぞ」
結局かなたちゃんの椅子を借りたらしい有馬がぱちんと手を合わせて、その隣が一席空いたまま、いただきます。空いた席に目を向けた俺を見て、お父さんもうじき帰ってくるから先に食べてていいって、と座った有馬のお母さんが、遠慮しないで食べなさいね!なんてどかどか皿におかずを乗せてくれるので、ほとんどわんこそば状態だった。弁当そんなに食わねえけど、と有馬が助け舟を出してくれたのがだいぶ遅かったので、随分とお腹いっぱいにさせてもらえた。美味しいしあったかいし、なんていうか他人んちのご飯、って感じだ。店で食べるのとはまた違うし、家の味なんだけど、自分の慣れ親しんだものではなくて、不思議な気分。
もそもそと皿にてんこ盛りにされたからあげを口に運んでいると、見るに見兼ねたのかなんなのか、気づけば有馬が横からひょいひょいとつまんでくれていた。別に食べきれなくもないと思うけど、ものすごく時間がかかりそうなことは確かなのでとても助かる。特に気にも留めずほっといたら、なにしてんのお兄ちゃんやめてよ、とかなたちゃんが顔を覆った。
「食べるならこっちにたくさんあるじゃん……」
「ん?んむ、らって弁当のが」
「いっつもそうやってご飯盗ってるんでしょ!もうやだ、恥ずかしいなあ!」
「してねえよ!」
「弁当くん、足りなかったら言ってね。まだあるから」
「あ、大丈夫です。ありがとうございます」
「ただいま」
「おかえんなさい。弁当くん来てるのよ」
「ああ、いらっしゃい」
「お邪魔してます」
「お父さんおかえりー」
「ふぉはえい!」
「ただいま。かなた、おばあちゃんから手紙。はるか、靴くらい揃えなさい」
「ふぉろっはよ」
「揃ってなかったから言うんだ。一足外まで出てたぞ」
「んぐ、かなたが殴りかかってきたから出てっちゃったんだ」
「違うもん、お兄ちゃんが馬鹿だから」
「お兄ちゃんの頭が悪いのはかなたに殴られる理由にならないだろ!」
「ごめんなさいねえ、騒がしい家で」
「いえ、別に」
騒がしいっていうか、楽しい。俺には上も下もいないし、母親も父親もどちらかというと物静かだし、ご飯食べるだけでこんなに楽しいことなんて無かった。隣に住んでた幼馴染みとかその一家が一緒だったりすると急に三倍くらいに騒がしさが増したけど、それとはこれとはまた別というか。みんなでご飯食べてる時くらい仲良くできないの、あんた達はいっつもそんなんでもう、とお母さんに言われてそれぞれそっぽ向いて拗ねてる有馬とかなたちゃんを見て、ちょっと笑いそうになった。
もそもそとからあげ頬張りながら、ネクタイ外して座ったお父さんをちらちらと見る。かなたちゃんと有馬の顔立ちはそれなりに似てるし、お母さんの笑った顔はそのまま息子に遺伝してるけど、お父さんもこれはこれで似てる。でもなんか、どこが似てるとかって言うより、雰囲気が一緒の感じ。見ただけだと有馬みたいに喋り倒してげらげら笑ってるタイプじゃなさそうだけど、周りの空気が似通った匂いっていうか、上手い言葉が思いつかないけど。俺の目線に気づいたのか、草食動物みたいに白米食べてたお父さんがぱっと顔を上げて口を開いた。
「青森から出てきたんだったかな」
「はい。あり、えっと。はる」
「名前で呼ぶな」
「……だって、有馬じゃいっぱいいるから」
「でも」
「はるか、冷蔵庫に刺身があるぞ」
「とってくる」
「……はるかちゃんは名前関連めんどくさいからねえ」
「あの子からよく名前を聞くよ。夜ご飯なんか何度も作ってもらったとか」
「あ、それは、俺もやりたくてやってるっていうか」
「弁当くんお料理好きなの?お母さんも好き」
「お母さん時々変な創作料理して、すっごいまずいんだよ」
「かなたちゃん!そんなこと言わなくてもいいでしょ!」
「……料理は、割と好きです」
「おとん!刺身どこ!」
「無かったか?」
「……………」
「お父さん、お母さんが知ってるみたいだけど」
「お前……食ったのか……一人で」
「……気づいたらなくなってたのよ……」
それからしばらく、一人で親元離れて暮らすのってどうなんだとか、有馬は絶対ストレートで卒業出来ないとみんなが諦めてたのに俺がいろいろしたせいでその予想が外れそうだとか、色んな話をしてる内に夜ご飯は食べ切った。あんなにたくさんあったからあげが全部無くなるんだから、家族みんな割とよく食う方なんだと思う。だって俺全然食べれないし。
じゃあそろそろ帰ります、と椅子を立てば、え?帰るの?なんで?みたいな目を全員に向けられて一瞬面食らう。いや、もともと夜ご飯だけってつもりだったし、俺明日も一限からあるし、着替えとか無いし。
「お母さんお布団干しちゃったわあ」
「無理強いはしないけど、ゆっくりしていけばいいよ。なんなら車で送ろう」
「弁当泊まれよ、帰んのだるいだろ」
「え、いいよ、いいってば」
「俺の服でいいかな」
「はるかのが駄目だったら俺のを着ればいい」
「……弁当さん、ほんとに無理だったら帰ってもいいんですよ」
この人達言い出したら人の話なんか聞きませんよ、とかなたちゃんが遠い目をしているのを見て鞄を取りに行こうと踵を返せば、これかこれだったらどっちがいい?と早くも部屋着を二着ぶら下げた有馬が玄関前に立ちはだかっていた。いつ居間から出てったんだ、さっきまでここに座ってただろうが。
完全に逃げ場を塞がれて立ち尽くしていれば、せっかくなんだからゆっくりしていきなさい、と有馬母に座らされてしまった。でも明日一限からあるんです、ともう一度立とうとしてみて、玄関前から戻ってきた有馬の言葉に足を止めた。
「え?明日一限無いだろ?」
「あるよ、お前がいつも遅刻してるだけで」
「ないよ。休講案内出てたもん」
「え、そんなの知らない、掲示なかったし」
「サイトに出てたんだって。伏見が見つけたんだから間違いねえよ」
ちょっと待ってろ、と有馬が弄っている携帯を覗き込めば、確かに俺の見たことがない休講の案内が出ていて、でもこんなのこの前確認した時にはなかった。授業中もそんなこと一言も言ってなかったじゃないか、と有馬を見れば、臨時だから案内がぎりぎりだったんじゃねえの、先生にも休みたい時くらいあるんだよ、と適当極まりない返事しかもらえなかったので諦める。確かになんで休講になったかの理由が有馬に分かるわけないし、休みって書いてあるんだから休みなんだろう。
そしたら明日は三限始まりだ、と違う話に切り替えつつ何とか鞄を取りに行こうとすれば緩やかに進路変更されてお風呂場に案内されたので、だから帰るっつってんだろ、と抵抗する。そんななにもかもお世話になるわけにはいかない。帰るったら帰る、とばたばた有馬の部屋へ駆け込んで荷物を持ち、お礼を言おうとリビングの方へ行けばかなたちゃんとぶつかってしまった。
「うあ」
「あっ、ごめん」
「だ、いじょぶです……」
ぱ、っと顔を上げて俺の手にある荷物を見たかなたちゃんが後ろ手に隠したのは恐らく洗濯したてであろうタオルで、一瞬立ち止まった隙に有馬に鞄を引ったくられて、もう鞄の方を振り向いたらいいんだかタオルを受け取ったらいいんだか。ひょこりとリビングから顔を出した有馬母が、んもう早くお風呂入ってきちゃいなさいよ、なんなら二人いっぺんでもいいのよ、ととんでもないことを言い出した。
「え、っと、でも」
「開けてないパンツならあるぞ!」
「そうじゃない……」
「ビールもある!おとんのが!」
「……そうでもない……」
「つまみもある!弁当が作れば!」
「……………」
もういい、諦めよう。楽しそうで何よりだ。

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