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☆すてらびーた☆




かみさまの、振り返りタイムだよー。設定集、って言ったらいいかな?では、いってみよー。
牡牛座の男の子、ある。「他の星のみんなと仲良くする」もとい「誰彼構わず全員抱き潰す」ことを目的としてかみさまに作られた彼は、純粋で、無垢で、何事にも一生懸命で、何も知らなかった。しかしそんな彼も、まあなんやかんやあった末、今のところは二人とよろしくやった使用済みの男の子なのである。出会ったそれぞれ、スピカに、コリンカに、ポールに、たくさんのものをもらったあるの精神は、たった数日で驚くべき成長を遂げた。このまま、いろんな相手と関わって、たくさんのものを吸収しながら、優しいままで、かわいいままで、全てを手に入れる傲慢な王様になってもらいたいな、とかみさまは思っている。全てを服従させ、全てを傅かせ、全ての上に君臨し、全てを愛し、全てを守る、そんな王様に。彼に与えられた特権は「かみさまの本棚の使用権」と「身体年齢の成長」。言い換えれば、莫大な知識を得られる権利と、成長に伴う魔力量や体力、身体能力の発達である。何も知らない彼は、全てを知り全ての頂点に立てる皇帝となれる。そんな大仰なものだと、あるは知らないけれど。
乙女座の男の子、うーん、女の子、男の子か。名前はスピカ。遥か昔に掛けられた愛の呪いによって、女神の成り代わりがやめられなくなった。女の子のふりをしていれば、愛してもらえる。愛を切に求める彼からすると、そんなに甘美な誘惑はなかったのだろうと思う。今現在、無知なあるに愛を誓われたスピカは、彼との愛を愛おしみ、それを守り抜くために、そのためだけに、生きている。スピカに与えられた特権は、「自身が作ったものを食べた相手が強くなる」こと。増強と回復、癒しの力。愛に生きる彼らしい、相手を立てるスキルだ。この先もしも、彼が成り代わりを捨て、本当の自分として生きることができるようになったのならば、「自身が作ったものを食べた相手が」に限らず「彼が想う相手全てが」にそのスキルは変化していくのだろう。それがいつになるかは、分からないけれど。かみさまがスピカにあげた一番最初の特権は、それだからね。早く思い出してもらえたらいい。
双子座の男の子、ポール。片割れ、半分、未完成。二人で一つの彼だけれど、あるはまだポールとしか親しくしていない。コリンカとは元々親交があったらしく、軽口を叩き合う様子がよく見られる。神獣騒動の時も、かみさまも力は貸したけど、コリンカと二人でほんとよくやってくれたよ。そんなポールの特権は「知っているものなら召喚できる」ことだ。詠唱も魔法陣も無しに、指揮者のように手を振り上げて振り下ろすだけで、オーケストラくらいなら余裕で召喚できる。ポールの場合はその能力を、「音楽を奏でる」ことに全振りしている。だから、彼の特権はそっちが真なのかもしれない。しかし、たったそれだけ、と思われがちだが、音が聞こえるということは聴覚という感覚器を使っているということであり、「聞こえる」ということは、その力を莫大な物に置き換えれば「感覚器を壊せる」ということに繋がる。声でワイングラスを割る、なんて話もあるだろう。ましてや、動物の体には多少なりとも水が含まれる。それが無くとも、そもそもにして、詠唱も魔法陣もなしに召喚術を使える、という時点でかなり戦闘向きの力なのだけれど。
山羊座の、コリンカ。コリンカはまだ、あるに対して、秘密を抱えている。まあその秘密はあとほんの少しでばれてしまうこととなるのだけれど、それはそれとして。主人公のあるが知らないのに、そっち側は知ってるって、おかしいじゃない?だから、あとで。あるから見たコリンカは、頼れるお姉さんだ。かみさまから見たコリンカも、頼れる年上、って感じではある。ただ、コリンカにはコリンカの事情ってやつがかなり多重に重なっていて、ただのお助けキャラとしては濃すぎる裏を抱えている。その事情は、後々あるが暴き出して晒し上げてくれるだろう。だから、特権についても、秘密を明かすその時に。
獅子座のレオ・カマーマル。魚座のピスケス。蠍座のカルディア。他にもかみさまはいろいろ増やしていくつもりだけど、カルディアは今大変な時期だから、コリンカですら存在を知らない。それはサードシーズンってことで、今はセカンドの話をしよう。
チュートリアルで、スピカとポールはもうあるのお手付きになったわけだ。さて、その話の最後に時間は巻き戻る。ポールによく似た灰色の髪の男の子。あるに向かって、殺意を持った多重召喚を繰り広げてきた彼は誰なのか。あるはこのままずたずたのぼろぼろになって死んでしまうのか。でもまあそれじゃあ話がどうにもならないので、そりゃあ誰かが助けに来るけど、候補だって三人くらいしかいないけど、その誰かって誰なのか。気になる続きは、このあとすぐ!
チートな設定がたくさんついてるんだから、あるにとっては生きてるだけでイージーモード。だからそんなもんはすっ飛ばして、いきなりハードモード、いってみよー。





かみさまの本棚には、なんでも揃っている。例えば図鑑。例えば空想の物語。例えば経済書。例えば伝記。一番最後の伝記は、特に面白かった。とある人間の一生を描いた一冊。じぶんは人間の形をとっているけれど到底普通の人間ではないし、それは他の星々のみんなも同じ。人間には出来ないことが出来る代わりに、人間にはなれない。生身の、本物の人間に、じぶんは会ったことがないのだ。人間の痛み、人間の感情、そういうものを知った気になれる手段の一つが、伝記だった。そして、一冊の本であるからには、終わりがある。そこに書かれた人間の死で幕を閉じるのだ。ゆったりと死に近づく者もいれば、激動の果てに処刑される者もいた。どうして傷つけ合うんだろう。きっと、誰にも理由はあって、譲れないものがあって、その果てに、相手を攻撃するに至るのだ。今の、じぶんと、宙空に君臨する彼のように。
伝記を読んでいて、一つ思ったことがあった。串刺しって痛そうだなあ、と。しかし、今現在の様子を鑑みるに、彼はじぶんを数多の武器で串刺し滅多刺しにするつもり満々らしい。じぶんにはそれを防御する手段もなければ、対抗策もない。人間じゃないから死なないかもしれないけど、きっと想像を絶するくらい、痛いんだろうな。嫌だなあ、と思うと同時、本では得られない「痛み」という新たな感情に、ちょっと喜ぶじぶんがいた。だって、こうだろうな、と思ったことしか、なかったもんだから。
以上、ポールさんによく似た男の子が手を振り上げて降ろした直後のコンマ数秒でじぶんの頭を駆け巡った、所謂死に際の辞世の句ってやつである。しょうもないなあ、我ながら。

「……あ、れ?」
痛くない。痛いってことを知らないから痛くないんだとしたら、生き物として欠陥だと思う。咄嗟に閉じた目を開くと、じぶんを中心に薄青の直方体が組み合わさって、そこに弓矢やら剣やら斧やらその他諸々がぶっ刺さっていた。てことは、これがなかったらじぶんに刺さってたってことか。怖。
「……魔法は使えないんじゃなかったの」
「つ、つかえません……」
「は?そんな高等術式組んどいて、そんな嘘通用するわけないじゃん」
「じぶんがやったわけじゃ」
「キミのことはそもそも嫌いだけど、嘘つきはもっと嫌いなんだ。だから二回殺す」
「ひええ……」
また話を聞いてくれないタイプの人だ。ごう、と吹き荒れた風に灰色の雲が渦巻いて、じぶんを囲う直方体が揺らいだ。なんでこんなことになってるか知らないけど、これがなかったらあれが刺さっちゃうんだから、頑張ってくれ、お願い。もうどうしようもなくて半笑いで空を見上げたじぶんの後ろから、お茶しに来たよ、とでも言わんばかりの平静な声がした。
「やー。派手好きだなあ、トールくんは。ちなみにその超高等ハイパーマックスウルトラものすごい最高かっこいい防御術式は、この私、コリンカさんが組んだものなんだけどね」
「……コリンカ」
「コリンカさん!」
「うんうん、あるクン、拍手」
「あっ!はいっ!」
「そうそう。崇め讃えてね。私はすごいんだって、私ならなんでも出来ちゃうんだって。なんたって頼れるお姉さんだからね?」
ぱちぱち。自分のしたことをすごく強調してくるけど、コリンカさん、そんなに褒めて欲しかったんだろうか。いっぱい拍手しておこう。散歩中みたいにゆっくり歩いて来たコリンカさんは、煌めく刃たちを見ても動じないまま、いつも通りににこにこしてみせた。
「……コリンカ。それを解いて」
「やだね」
「キミとボクの仲だろ」
「そうなんだけどさー。あるクンってば面白いから、トールくんにけちょんけちょんのスクラップにされたら困っちゃうわけ。せっかくスピカくんも安心できる拠り所を見つけられたわけだし」
「じゃあ、キミも死んでくれるの」
「いやいや?知ってるだろ、トールくん」
「……知ってるよ」
「そう!私は誰にも負けない!トールくんじゃあ、私に勝てない!傷一つ与えられない、何故なら私は全ての攻撃を避けられるから!」
「うわ。もう。三つもかけやがった」
「さーあ!やれるもんならかかっといで!今日のコリンカさんはちょっと強いぞう!」
「ふぎゃんっ」
がん、とか、ごん、とか、そういう音だった。およそ踏み切りの音じゃなかった。じぶんは衝撃で跳ね飛ばされて、目をしぱしぱしてるうちに、コリンカさんは星みたいに飛び上がって、空を駆け巡る。コリンカさんの跳ね上がりの勢いで陥没してクレーターみたいになってしまった地面が目に入って、頰が引きつった。えっ。こわい。なにこれ。
さっきまで優位にいたはずの男の子、ポールさん、じゃなくて、トールさん、っていうのか。トールさんは、今や完全に迎撃側だった。まるで空を駆けるように飛び回るコリンカさんが、容赦なくトールさんに殴りかかり蹴りかかるので、攻撃云々より、召喚した武具でそれを防御するのが手一杯、って感じ。刃物相手に殴ってるはずなのに、コリンカさんは全く傷ついていない。むしろ、いっそ小気味良いくらいにばきばきと、砕いていく。その度にきらきらと舞い散る欠片が綺麗だ。二人があまりにも飛び回るので、こちらとしても流れ星を見ているような気分である。完全に部外者だし。
「……ちっ」
「おやすみの時間だよ、トールくん!」
眉根を寄せたトールさんの頭の天辺に、コリンカさんの一ミリも容赦ない回し蹴りが入って、隕石みたいな勢いで彼が落っこちて来た。その爆風で、大きな木の葉っぱが一枚も残さず飛び散ったし、じぶんのところまで石飛礫ががんがん飛んで来た。どんな勢いだよ。トールさん、粉々になっちゃったんじゃないのか。ふう、と一仕事終えた感じでふんわり降りて来たコリンカさんが指を鳴らすと、じぶんの周りにあった直方体が消え失せた。
「これが完全勝利だよ、あるクン」
「オーバーキルでは……」
「いやあ、トールくんが負けてくれたのさ。私が三つも上乗せした時点でね」
「……?」
「うん。いろんな説明もしっかりしたいところだし、トールくんとポールくんの間柄についても話したい気持ちはあるんだけど、まあ聞いておくれよ、あるクン」
「はい」
「もう限界。足がくがく。倒れて良い?」
「はい。……はいっ!?」
「私、今から、色んな枷を解く。多分、ていうか絶対にあるクンはびっくりすると思うけど、あんまり驚かずに、そうだな、スピカくんのところまで運んでくれたら嬉しい。ああ、その前に、トールくん、今はもうポールくんかな?気絶してるはずだから、あの木の下にでも寝かせといてやってくれ。そのまま放置じゃかわいそうだし」
「まっ、え、待ってください、えーと」
「あるクンのやること、そのいち。あの辺に落ちてるポールくんを、そこの木の下にお姫様抱っこで移動」
「はい、えっ、お、お姫様抱っこで!?」
「そのに。今からぶっ倒れる私を、スピカくんのところまで運ぶ。お姫様抱っこで」
「お姫様抱っこで……」
「そのさん。これが一番大事」
「は、はい」
「どんな私でも、嫌いにならないでくれよな」

トールさんは、銀色の髪だった。恐らく彼が墜落したであろうところには、金色の髪の、ふにゅふにゅと呑気な寝息を立てる、ポールさんが転がっていた。傷一つないのはもちろん、埃一つついていない。うーむ、と寝返りを打った彼を抱き上げようとして、じぶんでは力不足なことに気づいて、でも、がんばって抱っこした。足ががくがくしたけど、お姫様抱っこでがんばって運んだ。だって、コリンカさんとの約束だから。
言われた通りに、一つも葉っぱがなくなった大きな木の下にポールさんを寝かせて、さっきの大喧嘩の弊害でぼろぼろになった花畑を、コリンカさんの元へ戻る。さっきのポールさんのように、安らかな寝息を立てているようには、およそ到底見えない。むしろ生きているのかどうかすら曖昧なくらい無音を貫くその体は、じぶんの知っているコリンカさんのものではなかった。どこがどう違うかといえば、例えば、元々コリンカさんはじぶんよりも背が高かったけれど、今のコリンカさんは、それよりもっと大きい。髪の毛は短くなって、どこか柔らかかったシルエットが四角くなった。この際ばっさり言おう。女の子だったはずのコリンカさんが、男の子になっている。頼れるお姉さんが、お兄さんになってしまった。しかも、よく耳を澄まさないと呼吸が聞こえないくらい、弱った状態である。
しかし、じぶんは、コリンカさんと約束したのだ。スピカさんのところまで、どんな見た目であれ、コリンカさんを運んでほしい、と頼まれたのだ。お姫様抱っこで。そう、お姫様抱っこで!

絶対に使わないと決めていた大人スイッチを使ってしまった。悔いしか残らない。がんばれば15歳のじぶんでもお兄さんのコリンカさんを運べたような気がする。火事場の馬鹿力、だっけ。そういうやつを発揮すればよかった。どのくらい大きくなればいいのか分からなかったから、とりあえずプラス10歳しておいた。男の子になったコリンカさんよりも上じゃないと運べないかもしれないし、それよりも上になると魔力量は上がるけれど体力は伸びないから。しかしながら、玄関扉を開けて出迎えてくれたスピカさんにはまた悲鳴を上げられたし、引っ込んだかと思ったら怪しいボトルを持って半脱げですっ飛んで来たし、違うって弁明するのがどれだけ大変だったか。前に抱いてるコリンカさんが見えないってスピカさんの目は最早どういうことだよ、意味が分かんないよ。
「お困りなのかと思って」
「困ってます!どう見ても助けを求めに来てるじゃないですか!じぶんよりやばい人がいるでしょう!」
「ああ、コリンカさん」
「ああ、じゃなくてー!」
「懲りない人ですね、もう。またそんなになって」
「へ……?」
「お入りください。あるさんの身体を元に戻すのは後でゆっくりやるとして、コリンカさんを治しましょうか」
どうぞ、と中に案内してくれたスピカさんは、前に通してくれた部屋を通り過ぎて、奥の重そうな扉の鍵を開けた。そこは多分、スピカさんの研究室で、いろんなものが雑多に置いてあって、ゆらゆらと揺らめく紫色の煙を吐き出す煙管とか、澄んだ緑色の液体が火にかかってたりとか、した。ここであの危ないクッキー作ったんだな、きっと。ここに寝かせてあげてください、と簡易ベッドを作ったスピカさんが、思い切りよくコリンカさんの服を剥いだ。
「きゃああ!」
「なんであるさんが恥ずかしがるんです?」
「いきなり脱がすから!」
「治療です。服があったらできません」
「……それ、こないだじぶんにも同じこと言って……」
「え?」
「きゃああ!何してるんですか!」
「だから、治療です」
ざす、と痛そうな音がして、スピカさんがコリンカさんのお腹をぶっ刺した。よく見えないけど多分内臓がぐちゃぐちゃですねー、と普通に言われて、もっとこう、透視するとか、そういう魔法的な手段で人体の中身を覗くことはできなかったんだろうか、と思う。血がすごい。あらら、ってスピカさんが拾って戻したそれはどこの部分の臓物だろうか。ふむふむ、とコリンカさんのお腹の中を掻き回していたスピカさん曰く、「魔力を一気に使いすぎです。耐えられなかった柔らかいところから破裂してる感じなので、内臓が一番にやられてますね」だそうで。あれだけ飛び回って刃を防いで傷一つなく、言葉を借りるなら正に、完全勝利したわけだから、そりゃあ弊害はあるだろうけど。
「……あの、コリンカさん、どうなっちゃうんですか」
「すぐ良くなりますよ。この人、こんなんしょっちゅうですから」
「そうなんですか?」
「はい。その話は、わたしなんかが話すより、本人から聞いた方がいいかもしれませんけど。よい、しょ」
「あれ、スピカさん、お腹、くっつけちゃっていいんですか」
「大丈夫です。おかしな呪いがかけられてないかの確認だったので、あとは枯渇した魔力を足してあげれば平気です」
お腹の穴をちくちくして塞いだスピカさんが、ふわりとコリンカさんに布をかけた。お布団代わりかな、と思ったら、これ以上魔力が逃げないように、とか一応意味があるらしい。スピカさんにはちょっと笑われた。
「あるさん、お手伝いしてもらってもいいですか?」
「はい」
「わたしだけでコリンカさんの供給は厳しいので、そうですね。あるさんの片角、いただいてもいいですか?」
「はい。……か、片角?」
「粉々にして飲ませますから」
「えっ……えっ……?それ、じぶんは平気なんですか……?」
「多分」
「多分!?」
血は出た。多少。でも、角がもげても全然大丈夫らしいということは分かった。もう既にちっちゃいのが生えてきてるし。でも、うん、そっか……角って、折れてももげても、大丈夫なんだ……爪みたいなもんなのかな……。
スピカさんの献身的で案外適当な看病により、コリンカさんはすぐに目を覚ました。起き上がって、じぶんたちを見てにっこり笑ったコリンカさんに、とりあえずにこにこ返したら、喉が潰れてるからって笑顔でなんとかしようとしないでいいから早く説明しなさい、とスピカさんに怒られていた。騙された。しばらくすると、治癒が進んだのか、コリンカさんはいつも通り喋れるようになったけれど。
「いやー、あるクン、悪かったね。重たかったろ、この体」
「あ、でも、じぶんも大きくなったので……」
「うんうん。スピカくんはこれに、ほうほう」
「うふふ」
「何に重ねてるんですか!やめてください!」
「わたしの時はもう少し幼さがあって、それも素敵でした。今も素敵です」
「ほうほう」
「やめなさい!」
「じゃあまずその晩の話から」
「わたしから脱ぎました」
「コリンカさんなんか助けなければよかったです!」
「ひでえやつ。ははは」
さて、と仕切り直すように膝を叩いたコリンカさんは、ぺこりと頭を下げた。迷惑をかけて申し訳ない。全てにおいて説明が足らずに驚かせて悪かった。許してくれとは言わないし、怒りたいなら怒ってくれて構わないから、これからも仲良くしておくれ。そう訥々と言われて、必要なのは最後の一言だけだなあ、とぼんやり思う。コリンカさんが黙ってることに、意味が無いわけがない。何某かの理由があって、じぶんに隠していたのだ。今回それが諸々明らかになって、それによって、そりゃまあじぶんだってちょっとくらいは怖い思いをしたけれど、怪我をしてぼろぼろになったのは、結局のところコリンカさん一人な訳で。じぶんには、何を咎める権利もない。今から説明してくれるいろいろなことだって、本当に言いたくないなら、言わないままでもいいくらいだ。それでも、じぶんは、コリンカさんと、スピカさんと、ポールさんと、なんならさっきじぶんのことを殺そうとしていたトールさんとだって、仲良くしたいだけだから。
「……うん。うん、そうだね。あるクンが、そういう人だから、私は君を守ったんだ」

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