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☆すてらびーた☆



「ただいま」
「早いな!コリンカ、ほんとにちゃんと話してきたの!?」
「話した話した。あのかみさま相手で長話してたら逆にくだらない話だって」
ポールさんがじぶんを落ち着かせようと、コリンカさんのドジ話を今にも始めようとしたところで、本人が帰ってきた。ちょっと続きを聞きたかった。楽器に触ったこともないコリンカさんがポールさんの真似をして、その後どうなったのか、気になる。だってさっきも、コリンカは見る目がない!とか言われてたし。まあ、しょうがないけど。
時間の流れが緩いということは、もしかしたらこの星の外ではそれなりに、コリンカさんとかみさまが話をつけてくる程度には、時間が経っているのかもしれない。さてさて、と座り込んだコリンカさんが、にっこり笑った。コリンカさんが笑ってくれると、安心する。
「結論として先に言うと、あるクンには、神代の力は行使できないそうだ。持たされたのは記憶だけ、というか、バックアップ的な扱いらしい」
「バックアップ?」
「そう。かみさまのバックアップ、のテスト、って言ってたかな。あるクンがうまく行けば、いずれは私たちにも、神話時代の記憶が順次配信されるってさ」
「配信!?そんな軽い感じで!?」
「うん。記憶と力を切り離すためのテストなんだろうね、あるクンは。あんなんでも、かみさま一人で全部覚えてるのは大変らしいよ?」
「はあ……」
「まあ、それなら、筋は通るけど……」
「ポールくんのことも褒めてたぜ、かみさま。神話クラスの魔力行使が為されるとどうなるのか、よく覚えてたってさ」
「……忘れるわけないだろ」
「うんうん。ま、それはそれとして、だ」
なにかあったっぽい、ことは察した。けど、深く突っ込まなくてもいいだろう。話すべきことなら、きっといつか話してくれる。そういう人たちだ。だからもう安心です、と膝を叩いたコリンカさんが、ポールさんを見上げた。
「じゃあポールくん、お祝いに一曲」
「きみ、音楽に興味ない割にぼくの演奏大好きだよなあ!」



「いえーい、かみさまターイム!」
「……かみさま」
「どうだい?仲良くやれてる?っつってもここから全部見てるんだけどねー。ポールが思ったより懐いたのは計算外だったけど、攻略しやすそうだとは思ってたから、想定内ではあるかなってとこだし」
「けいさん、そーてい?」
「あー、こっちの話、こっちの話。ちなみに一つ教えてあげると、コリンカはあるに重大な秘密を一つ隠してるぜ。スピカもポールも知ってる秘密を、君だけに隠してる」
「えっ!?」
「ふふー。仲良くやってくれよ、仲良く。すげー仲良く、もう毎晩一緒に寝るぐらい仲良く、ね」
「……みなさん、夜は自分の星で過ごすものだと……」
「そんなん誰が決めたのさ?少なくともかみさまは決めてないし、そんなこと言ってられない夜だってあるだろうしー?」
「……?」
「あはー、純粋なあるだからこその的確かつ迅速な攻略、かみさま超期待してる!ペンライト振って見てるから!」
「あの、じぶんは、なにをしたら」
「ある、スピカの料理は美味しかった?」
「え?あ、はい、とても」
「また食べたい?」
「そうですね。また遊びに行って、一緒にご飯でも、と」
「おっけー!スピカにはかみさまから特別メニューを教えておくよ!舌が蕩け落ちる程格別なやつ!」
「ありがと、ございます」
「じゃ、レオはがんばってるからいいとして、ピスケスにはよろしく言っといてー。あでぃおす!」



「は!」
目が覚めたら、じぶんの星にいた。雪崩を起こしそうな本の山、それ以外はなにもない、まっさらなじぶんの星。かみさまとさっきまで話してたような気がするけれど、夢だろうか。かみさまだから、夢に現れるくらいちょちょいのちょいなのかな。確か、ポールさんの星から帰ってきて、コリンカさんと別れて、本を読みながら今日のことを思い出しては頭の中で整理整頓して、そこまでは覚えているんだけど、それでうっかり寝てしまったのかも。
半分くらい本に潰されていたのか、軋む身体をこきこき鳴らしながら、立ち上がる。肩が重い。スピカさんやコリンカさんは自分の家があったなあ、と思い返して、羨ましくなる。欲しいなあ、家。どうやって作るんだろう。そんなことを考えながら手近にあった図鑑を本の山に積んだら、バランスが崩れたのかばさばさと倒れた。くそお。
本を積み直して、一応整理整頓していると、ゲートからチャイムが聞こえた。コリンカさんかな。残りの二人に会わせてくれるのかもしれない。本の山から顔を出せば、きょろきょろしているのは金色と赤いリボン。スピカさんだ。何か持ってるように見えるけど、もしかして、美味しいものかな。かみさまも、スピカさんにメニューを教えるって言ってたような気がする。でもそんなこと、どこで聞いたんだっけ。夢の中だっけ。まあいいか。じぶんを探してくれているのか、ゆっくり一歩踏み出して辺りを見回しているスピカさんに、声をかけた。
「スピカさん」
「ぁ、ある、さ……!?きゃあああああ!?ひっ、いやあああああっ!?」
「わああああああ!?」
瞬間、響き渡ったのは悲鳴だった。つられて大声を上げれば、スピカさんは腰が抜けたのかその場にへたり込んでしまった。駆け寄ると泣き出しそうな顔で重ねて悲鳴を上げられて、咄嗟に足を止める。どうしたんだろう、じぶんになにか、と身体を見下ろして、気づいた。
じぶん、こんなに、目線高かったっけ。


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