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ハッピーサマータイム


「……お風呂ありがとう」
「んーん、狭くてごめんね」
海に行こうと言いだしたのは珠子で、朝早く出るからお泊まりパーティーしようって持ちかけ出したのも珠子で、真希はどうしても来られないから、あたしだけ珠子の家に泊まることになった。まあ、うちだけ少し距離離れてるし、海に向かう道のりで真希は拾えるし、仲有なんてほぼ隣の家に住んでるわけだし。新しい水着買っちゃったんだー、とフリルがついてて小さいお花が咲いてる水着を見せられて、うん、と頷く。さっきも見た。なんなら三度目だ。ひらひらでふわふわでリボン付きで、珠子っぽい。
「灯ちゃんの水着も見せてよお」
「どうせ明日見るじゃん」
「見せ合いっこしたいの!都築くんと一緒なんだから、どうせ灯ちゃんだって買い換えたでしょ!」
「買い換えてない」
「嘘つけー!」
「ほんとだし」
嘘はついてない。去年買ったやつだけど、気に入ってるから今年もそれでいい。それで、というか、それがいい。結構露出の高いビキニだから、上から被る編み上げのポンチョみたいなやつを脱げないのが難だけど。見せて見せて見せて、とお風呂上がりにくっつかれて、まだ少し湿った髪で珠子を濡らすのも嫌だったから、しょうがなく鞄から水着を出した。珠子のやつの隣に並べると、タイプが違いすぎてなにも言えない。見せろと強請った割に何故か無言の珠子を見れば、静かに顔を上げられた。
「……えろい……」
「は?」
「……水着の灯ちゃんと並び立ちたくなくなってきた……」
「なんなの」
気を取り直して。真希はどんな水着を持ってくるのだろうか、なんて話をしてるうちに、珠子の目がうとうと閉じ始めた。ベッドに転がっている珠子と、ベッドの端に座っているあたしなので、ベッドから降りて布団をかけてやる。いやー、と小さな抵抗が聞こえたけれど、眠気には勝てないらしい。電気も消してやろう。
「……あかりちゃあん……」
「なに」
「こっちおいでよ……まだおしゃべりしたりない……」
「寝なさい」
「じゃああたしがそっち行く……」
「なに、うわ」
どすん、とベッドからあたしが借りてる敷布団へ落ちてきた珠子をどうすることもできず、そのまま寝た。ちょっと暑かった。


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