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ハッピーサマータイム


「で、海に行って来るね」
「はいはい。行ってらっしゃい」
「お兄ちゃん、海行くの」
「うん。お友達と」
「いいなあ……」
うっかり漏れた、っぽい。違うの、いいなじゃない、いいのはいいんだけど、悪い訳じゃないんだけど、と失言を取り繕おうと慌てている友梨音に、海行きたい?と聞けば、口をもにゃもにゃさせていた。行きたいって言ってもいいのに。さちえも、じゃあ今度みんなで行きましょうか、って言ってくれてるし。
「でも、ええと、ゆり、海行ったこと、あんまりないから」
「じゃあきっと楽しいよ。みんなよりもっと楽しいかもしれないよ」
「……そうかなあ……」
「家族みんなで行きましょうよ、お弁当も作って、みんなで」
「……いいの?」
「なにが?」
「だってお兄ちゃん、今度お友達と行くんでしょう?何回も海に行くことになっちゃうよ」
「海は何回行っても楽しいもんだよ」
「んん……」
あんまり行ったことない、のが引け目なのかもしれない。俺もそうだけど友梨音も、お父さんと二人だった時間が長いから、あんまりお出かけした思い出がないのだ。それは確かになんとなく、他の家と違う気がして、口がもにゃもにゃする気持ちも分かる。友梨音はそもそも引っ込み思案な性格だから、余計にそう思っちゃうのかな。じゃあ、こうしよう。
「ねえ、さちえ、友梨音。お兄ちゃん、ちょっと思うんだけど」

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