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執着と終着



「……あ?」
朔太郎が、うちに突然来て、高校の卒業アルバムをいきなり開き、ページをめくり出したかと思うと、不審そうな声を上げて突然止まった。何を見てるのかと思えば、個人写真のところ。一人一人の写真の下に名前が付いてるあれである。
「……航介、すずめちゃん、覚えてる?」
「誰それ」
「鈴芽小唄ちゃんだよ!」
「どの人」
「いないんだよ!えっ、怖い、なにこれ!」
「じゃあ高校の時の知り合いじゃないんだろ」
「でも絶対いたんだって!めだかちゃんもすずめちゃんのこと知ってるはず、だって先輩先輩って懐いてたし」
「……目高って、あの、美化委員の子だっけ。先輩先輩って懐かれてたのはお前じゃん」
「違う!部活の先輩だよ!」
「じゃあなんでアルバムにいないんだよ」
「だから怖えって言ってんだよー!」
怖過ぎるからめだかちゃんに聞いてみよう、あっめだかちゃんの連絡先知らねえ!まもりくんなら知ってるかな、でもまもりくんに連絡してまともに帰って来た試しねえ!と朔太郎が一喜一憂している。その、すずめちゃんとやらを、俺は知らないので、なんとも言い難いけれど。
「すずめちゃんもめだかちゃんのこと知ってるんだよ!だから絶対存在はしたはず!」
「存在て」
「お化けだったらどうしようー!やだー!」
「最近会ったのか?」
「会ったよ!会いに会ったよ!」
「あ、いるじゃん。鈴芽小唄」
「えっ!?あっ、ほんとだ!良かった!ていうかここ航介のクラスじゃんか!お前!」
「安心と怒りどっちかにしてくれねえかな」
「いて良かった……おばけじゃなかっ……」
「……どうした?」
「……顔が違う……」
「え?」
「顔が違う。俺が最近会ったすずめちゃんじゃない。俺ずっと、名前の欄じゃなくて写真のとこ見てたんだ、だから気づかなかった」
「……化粧でもしてたんじゃねえの」
「そういうレベルじゃない……」
「……………」
「……えっ、えー、怖い、そっちのが地味に怖い……なんで顔違うの……」
それから朔太郎は、関係性がどうとか、顔と名前が無いとか、ヘアピンがどうとか、人気者がなんとか、ぶつぶつ呟いて顔を青くしていたけれど、俺はそっちのが怖いから特に突っ込まなかった。独り言が多すぎて気持ち悪い。
「ねえ!一つの仮説が生まれたけど!」
「俺今からラーメン食べに行く」
「えー、行く行くー」
「仮説はどうしたよ……」
「ラーメンの後でいい」



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