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執着と終着



「……結局なにがあったんだかさっぱりだけどねえ……」
「いんじゃね、ほっとけば」
「そうねえ……」
くかー、と安らかな寝息を立てて二人転がっている座敷を見ながら、瀧川と目配せする。朔太郎になにかがあったこと、航介にもなにかがあったこと、二人でなにかをどうにかしたこと、は分かるけれど、それより深いところは全く分からない。話が見えない。もしかしたら何も無かったのかもしれない、とすら思う。
航介と朔太郎が二人揃ってうちに来たのが、まだ開店前のことだった。珍しくも半べその朔太郎が、素直に殊勝にいじらしく、迷惑かけてごめんなさい、と俺に頭を下げた。それを見ていた航介が、嫌わないでください、と同じく頭を下げたので、俺はその場で倒れるかと思った。人間、想定外過ぎることがあると、本気で意識が遠くなるらしい。ふらついた俺を見てやんややんや騒いだ二人に、頭を下げられるようなことは何もしてないです、ていうか頭下げるようなことしたんだったらその詳しい説明を今すぐ早く、と手のひらを返したら、そっぽを向かれた。お前ら、何をしに来たんだ。
それから、二人はずっと居座って、どうでもいい話とろくでもない話とくだらない話をオンパレードで繰り広げ、しばらくした頃何も知らない瀧川が普段通りに来て、上り口で航介と朔太郎の姿を確認してその場で驚きのあまり滑って転び、酒瓶を数本お釈迦にした。この請求は誰にすれば良いのだろうか。そして再び身にもならない話が始まり、いつの間にか朔太郎が寝てて、航介が座敷に朔太郎を運んで、そのまま隣で寝入ってしまったのだ。ぐうぐうすやすや、と言った様子で、幼い子どものように眠る二人は、そうするのが当たり前のように指を繋いでいた。そこだけ見ると美しいけれど、航介の頭は朔太郎の肩に半分乗ってるし、朔太郎の足は航介の下腹部に乗ってる。絡み合ってるんだか重みを押し付けあってるんだか微妙なところ。
「いいんじゃない、いつも通りで」
「都築さん、涙目ですよ」
「花粉症です」
「うける、超嘘じゃん」


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