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執着と終着



「あ、もしもし?」
「……なに」
「テスト的な。なんだかんだ、あんまり使ったことなかったじゃない、この携帯」
「契約切れてなければ普通に繋がるだろ」
「だよねー。でもほら、急にかけたくなった時に繋がらなかったら、次こそどうにかなっちゃうかもしれないし」
「縁起でもねえな……」
「そういうもん握ってんだって思っといてよねー」
「はあ」
「でさあ、話したいことがあったんだけど」
「なに?」
「子どもができたって言ったらどうする?」
「……誰と?」
「それはおいといて」
「置いとけねえだろ。ちゃんと責任取れよ、ほっぽり出したら承知しねえぞ」
「ほお」
「ん?」
「じゃあ、子どもができるって言ったらどうする?」
「でき……結婚するのか?」
「しない」
「……できる、予定、ってこと?」
「未定」
「なんだよそれ……」
「まあ、うん、分かった」
「こっちは訳が分からない」
「俺が分かれば今のところはいいよ」
「はあ……」
「あと、そうだ。都築に謝らなきゃいけないんだけど、一人じゃ嫌だから航介も来て」
「なんで」
「着拒して、メールもラインも届かないようにして、一番遠ざけた。どうせ航介に繋がってるんだろうなって考えてたからなんだけど、悪いことしたなって今更思って」
「じゃあなんで俺とは直接連絡取れるように残しといたんだよ?」
「……え、いや、あの、それはさ……」
「あ?」
「それは、そういうのはいいじゃん!勇気が出なかったんだよ!お前を切るだけの!」
「……あっそ」
「あとさあ」
「長いな……」
「携帯投げるの止めてくれたの、嬉しかった」
「……うん」
「あと、呼んでくれたのも嬉しかった」
「うん」
「俺、色んなことで全部塗り潰して、無理やり今までのこと全部、忘れようとしてた。一回死んでやるぐらいのつもりでいた。しちゃいけないこと、たくさんした。それは謝る。ごめん」
「うん」
「無視もした。ぼろぼろなとこも見せた」
「なあ」
「はい?」
「何があったか、言わなくていいけど、誰に何を言われたかは教えろよ」
「……ん?どういうこと?」
「お前に、余計なことを吹き込んだ奴がいるだろ。誰だか知らないけど、そいつのことは許さない。怒る」
「だ、だめだよ、俺その人に怒られてるんだから」
「怒られて遊び呆けるっておかしいだろ」
「おかしいんだよ!俺の持ってる解決策って、忘れることしかないんだから!」
「……他にもあるよ」
「ないんだよ……」
「ある。10年前からずっと言ってる」
「……………」
「あるだろ」
「……相談しなくてごめんなさい……」
「宜しい」
「あと一つだけ聞いていい?」
「ああ」
「もっと前から相談してたら、こんなことにはならなかった?」
「ならなかった」
「……そう」
「今後も同じく、だけどな。早めに言ってくれれば、一緒に考えるし、一緒になんとかしてやるよ」
「一緒に」
「そう、一緒に。なに?一人がいいのか?」
「やだよ!巻き込まれてよ!」
「お前に一人で何とかさせるなんて怖すぎて見てらんねえよ」
「それどういう意味」
「眠い。おやすみ」
「ねえ待ってそれどういう」
「あっ」
「意味!ねえ!聞いてる!」
「子どもは割と好き」
「は、あ?ああ、航介が、ってこと?」
「おやすみ」
「えっ、ねえ?俺の質問には答えてくれないんだ?ねえちょっ」

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