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おはなし



「おーちゃん、お風呂はいろー」
「はい」
弊探偵事務所では、一緒にお風呂制度が導入されている。当番制よろしく持ち回りで、今日は誰と誰、もしくは一人、はたまた全員、と決まったサイクルに則って決まっているのだ。ちなみに今日はアンちゃんとおおかみちゃんの日。昨日は俺とアンちゃん、一昨日はおおかみちゃんと俺、一昨々日は三人一緒だった。一人で入る日だと俺が渋る、もとい下手をすると逃げるので、くさい!きたない!とアンちゃんとおおかみちゃんが怒り、一緒に入ってくれるなら…と結局三人一緒になる。そんな感じ。
しかし、アンちゃんとおおかみちゃんのお風呂タイムは長いのだ。てーちゃんさびしい。俺がそもそも風呂嫌いなのもあって制定された制度なのだけれど、俺は烏の行水なので、毎度毎度アンちゃんやおおかみちゃんにあの手この手でゆっくり風呂に入るよう引きとめられている。二人は恐らく長くお風呂に入ることを悦とするタイプの人間で、要するに長風呂プラス長風呂のコンビなので、俺が一人ぼっちに過ごす時間が長くなるのも致し方なしなのだ。いや、致し方なくない。さみしい。さみしいもんはさみしい。ほっとかないでほしい。いい年したおっさんの所長だって、我儘を言います。これにしちゃう?あれにしちゃう?と、入浴剤、って言ったらこないだ「違う!」とアンちゃんに髪の毛で絞められたっけ。なんだっけ、バスボム?なんか、かわいらしいやつ。その、バスボムとやらをきゃっきゃ選んでいる二人に、背後から声をかける。
「ねえ」
「ひゃあ!」
「なにー、てーちゃん」
「待って。おおかみちゃんめっちゃ可愛い声出たじゃん。もっかい」
「だ、っび、びっくりしたんです」
「もー、おーちゃんとアンちゃんは今から楽しいお風呂タイムなのー。てーちゃんお風呂いやいやマンでしょー」
「お風呂いやいやマンだけど、アンちゃんとおおかみちゃんが二人で楽しそうだと寂しくて死にそうマンでもあるんだ」
「それは……もう、がんばって耐えてくださいとしか……」
「覗いててもいいよお」
「いいの!?」
「いいよお。でも、アンちゃんもおーちゃんと二人でお風呂入るのすっごいすっごい、すーっごい楽しみにしてたんだから、てーちゃん静かにしててね?」
「うん!」
「呼吸の音は立ててもいいけど、それ以外の音立てないでね?」
「ハードル爆上げ!俺頑張るけど、ちなみにもし音立てたらどうなるの?」
「んー、アンちゃんのご機嫌が悪くなってー、てーちゃんの鎖骨が折れる」
「この暴力女!」

カップケーキ、の形をした入浴剤。俺は最初普通に食べようとして、アンちゃんにめちゃくちゃ叱られた。なんでもかんでも食べたら死んじゃうんだからー!だそうだ。うるせー、泥啜ってぴんぴんしてたくせに。
今日の俺は空気だ。アンちゃんとおおかみちゃんのお風呂タイムを見るため、何が何でも空気になるのだ。鎖骨折られたくないし。あったかいお湯が張られてて、ふわふわと湯気が揺蕩っている。ぷちぷちとシャツのボタンを外すアンちゃんに、ズボンのベルトを抜くおおかみちゃん。今更だけど、君たちには恥じらいとかないのね。いやまあ、俺もないけど。君らとお風呂入ってそういう展開になったことないけど。
「おーちゃん、外してえ」
「はいはい」
アンちゃんは、ブラのホックを一人で外すのが下手だ。入り組んだ構造の、誘惑用のやつは一人でするする脱ぎ着するくせに、普通のやつができない。なぜかって、力を込めすぎて壊すから。あーん!と泣き声でお風呂場から飛び出てきて、手には大破したブラジャーを持ってる現場を何度か見たことがある。もしかしたら、ただ甘えたいだけかもしれないけど。アンちゃんはなんでもできちゃうから。
「あんがとー」
「いえいえ」
「おーちゃんのパンツも脱がしたげよっか?」
「自分で脱げます」
「そかー」
この事務所を借り受けた時の条件として、アンちゃんが頑として譲らなかったのが「お風呂場は広いとこ」。血に塗れることもまあそれなりに多い彼女なので、体をきちんと綺麗に出来るように、というのもあると思う。ただ自分がゆっくりしたいだけなのかもしれないけど。だからここは、アンちゃんのお城だ。二人で入れる大きいバスタブには半身浴ができる段差付き、天井からはお星さまの照明がぶら下がって、大きい鏡はばっちり曇り止め、シャワーもなんかお肌にいいやつらしい。そしてこないだアンちゃんが勝手に呼んだ業者さんが、オーバーヘッドシャワーをつけたので、我が事務所で一番金がかかっているのは風呂場になった。
バスボムをそおっと湯船の中に入れたアンちゃんが、洗いっこしよー!とおおかみちゃんを椅子に座らせる。二人、ないしは三人でお風呂に入ることも多いので、風呂椅子も二つあるのである。
「アンちゃんがさきに洗ったげるねー」
「ありがとうございます」
「ん!おーちゃんのこと、ぴっかぴかのふわふわにしたげるから!」
いい匂いのボディーソープ。なんだっけなー、確かお肌にいいやつ。同じボディーソープを使っているのに、アンちゃんとおおかみちゃんはばらばらのいい匂いがする。アンちゃん曰く、「アンちゃんの匂いはその人が一番好きな匂いになるように弄くり回されてるんだよー」だそうなので、おおかみちゃんの匂いがボディーソープとシャンプーの匂いに近い。おおかみちゃんのスポンジは、おおかみの形をしている。アンちゃんのはハート形。俺のはかえるさん形。どこで見つけてきたんだか知らないけど、アンちゃんが折角用意してくれたので、みんなで使っている。おおかみの顔をもしゃもしゃと泡だてたアンちゃんが、おおかみちゃんの背中にスポンジを滑らせた。
アンちゃんの「洗ったげるー」は「検閲」を多分に含む。穴が空くほど隅々まで、自分の知らない場所に怪我がないか、調子が悪いところがないか、診られる。こないだなんか、いよいしょお!の声と共に背中の変なツボを押されて、はちゃめちゃに腹を下したけれど、ずっと胃がもたれていたのが解消された。どういうメカニズムかは分からない。今も、ふんふん鼻歌交じりではあるけれど、おおかみちゃんを表から裏から、前も後ろも余すとこなく、じろじろと眺めながら体を洗っている。されるがままのおおかみちゃんもおおかみちゃんだけど。最高のスタイルの全裸の美女に体洗ってもらって、その脱力っぷり、男として大丈夫?ちなみに俺は男としてダメ。
「あ。おーちゃん足の爪伸びてる」
「そうですか?」
「あとでやすりしたげる」
「自分でやりますよ」
「やなの!アンちゃんがやりたいの!」
「ふふ。ありがとうございます」
「あとねえ、足疲れてるから、お風呂の中でマッサージしようねえ」
「じゃあ俺もお返しにマッサージしてあげますね」
「んー、アンちゃんはー、おーちゃんにマッサージしてもらうより、ご飯を作って欲しい」
「そうですか?」
「そうなんですよお」
「じゃあ、お返しはそうしましょう。ねえ、アンさん、交代しましょうよ」
「んー、んー、もうちょっと」
「えー」
髪の毛も洗おうね、とこれまたいい匂いのシャンプーをおおかみちゃんの髪の毛に馴染ませたアンちゃんが、わしわしと泡だてていく。わしわし、という表現が間違いかも。アンちゃんは人を気持ちよくする術を知っているので、泡が入らないようにぎゅうっと目を閉じているおおかみちゃんも、多分気持ちいいはず。彼を拾ってきたばっかりの頃、おおかみちゃんの髪の毛をどっちがつやつやのとぅるんとぅるんに出来るかアンちゃんと勝負したけど、大敗した。ふわふわの泡で、おに!と二本角を作ったあんちゃんに、おおかみちゃんが呆れたみたいに可笑しそうに笑って、泡が流されていく。手で軽く水気を取った髪にはトリートメントを馴染ませて、アンちゃんとおおかみちゃんが交代。
「よし」
「おーちゃん、やさしくね」
「はい」
「うん、んー、んーふふ、うーん……」
「やさしいですか」
「……つよめ……」
アンちゃんが、真剣に頑張っているおおかみちゃんの手前、くつくつと控えめに笑っている。やさしくね、と言ったアンちゃんの言葉が届いているのかいないのか。毎度のことながら、おおかみちゃんに体や頭を洗ってもらうと、いやに力強いのだ。効果音として、わしわし、が似合うのはおおかみちゃん。がしがし、かもしれない。痛いわけじゃない。あー、綺麗にされてるなー、汚い古い皮膚は全部剥がし取られてるなー。って感じ。しかしおおかみちゃんはとってもがんばって真剣な顔をしているわけで、しかも、もうちょい優しく、とお願いすると、はい!と良い返事で了承してくれる。了承するだけで、手の強さは然程変わらないけれど。
「あーん、おーちゃん、アンちゃんのお胸もっと大事にしてよお」
「はい!」
「あはっ、あはははっ、くすぐったいぃ、おーちゃん!」
「でも、綺麗にしないと痒くなるんですよ。帝士さんよく頭掻いてるじゃないですか」
「てーちゃんノミいるから」
「え……」
いねーよ!流石にノミはいねーよ!鎖骨を折られるから声は出せないけど、全力でばってんマークを作ってやった。愕然、と言った顔でこっちを見たおおかみちゃんが、いないみたいですよ、とアンちゃんに向き直る。そおかもね、と適当に返しながらおおかみちゃんを抱きすくめながらこっちを見てにまにましているアンちゃんに、お前、自分がおおかみちゃんといちゃつくのを俺に見せつけたいだけだな、とようやく思い至る。くそ!眼福だよ!
「アンさん、俺に泡が」
「アンちゃんの身体やらかいー?」
「え?まあ、はい」
「もっと褒めてよお」
「髪の毛洗ってませんよ」
「ぶー!」
いちゃつきチャレンジ失敗。泡を俺になすりつけないでください、と、アンちゃんが思ってたのと違う反応を返したおおかみちゃんが、がしがし!とアンちゃんの髪の毛を洗う。こんがらがるー!とアンちゃんが悲鳴をあげるのもなんのその。アンちゃんの身体はやらかいなあ♡とかおおかみちゃんが言い出したら気持ち悪いでしょ。そういう欲ない設定にしてるんだから。誰の入れ知恵だよ!ってなっちゃうよ。俺か。
「お湯かけますよ!」
「ぶふぇ」
人の身体を洗っている時のおおかみちゃんは、何故かいきいきしている。何が楽しいのだろうか。そういえば、掃除とか皿洗いとか洗濯とかも好きだよね、おおかみちゃん。綺麗好きなのだろうか。アライグマか!かわいいな!
おおかみちゃんのトリートメントを流して、体と頭を洗うのはおしまい。髪の毛をタオルで巻いたあんちゃんと、頭の上にタオルを乗せたおおかみちゃんが、ふいー、と湯船に浸かる。ナチュラルにアンちゃんの足の間におおかみちゃんが座るのね。アンちゃんのお胸を背もたれにできる人間なんか、おおかみちゃん以外に見たことがない。むしろ見たくない。
「おーちゃん、なんか楽しいことあった?」
「んー」
「聞かして聞かしてー」
「この前、お買い物行った時に、レジのおばちゃんが、割引券をくれました」
「ラッキー!いえーい!」
「ふふ」
「アンちゃんのラッキーはー、こないだ食べたアイスがー、ハートの形だったこと!」
「らっきー」
「いえーい!」
ぱちゃぱちゃと薄桃色に濁ったお湯を叩きながら喜ぶアンちゃんとおおかみちゃんからは、普通のことを普通に喜び合うことが程遠かったので、何も口出しできなかった。嬉しかったことと、楽しかったことと、なんて指折り数えて、五つ先に言えた方が勝ちだよ!と報告し合う二人に、お風呂の時間が長い理由が分かった気がした。普通の真似をして、些細なことで喜んで笑って、今日もいい日だったなあ、一日楽しかったなあ、と眠りにつけることが、きっと二人には必要なんだろう。なんか泣けてきちゃう。帝士さん、歳かも。膝を抱えて二人を見ながらぐすぐすしていた俺に、アンちゃんが困ったみたいに笑って、手を伸ばした。
「もー、そんなに一緒にお風呂入りたかったの?泣き虫てーちゃんー」
「へ?いや、違、風呂には全然入りたくない」
「帝士さんったら。ほら、服脱いで。洗ってあげますから」
「え!?いいよ、今日は風呂入らないつもりだし」
「は?」
「はあ?」
「ふろはいらない?」
「ノミいるのに?」
「いないっつってんの!」

全裸に剥かれてぴかぴかにされてしまった。うーむ。湯船には浸かりたくない!ふやける!と断固拒否して、アンちゃんとおおかみちゃんに二人で浸かっててもらった。今すぐに服を着たい。髪を乾かしたい。ぶー、と口を尖らせている二人は、さっきとは違って向かい合わせだ。
「ほらあ、真ん中空いてるよ?ここに入りなよー」
「狭いよ!無理!」
「俺詰めますよ」
「そういう問題じゃないから!ほら、俺のことはいいから、ゆっくりして!」
「あ、そーだった。おーちゃんのマッサージ、してなかった。アンちゃんうっかりんこ」
「いいのに」
「よくなーい!足出して、おーちゃん」
「ありがとうございます」
おおかみちゃんの足にアンちゃんの整えられた指先がかかる。なにかおしゃべりして、と強請ったアンちゃんに、おおかみちゃんが少し視線を宙に迷わせて、ええと、と話し出す。穏やかな声と、微かな水音。おおかみちゃんの声は、眠くなる。バスタブにもたれかかって欠伸をした俺に、少し笑ったおおかみちゃんが、優しく髪を撫でてくれた。温まった手が、ゆっくり俺の髪を梳く。君に、というか君たちに、昔なにがあったかとかは、俺はもういっそどうでもよくって、こんな穏やかな時間を君たちが、君たちの手で手に入れられたことが、すごく誇らしくてたまらないのだ。君たちは、俺のおかげだとか、俺にそうしてもらったんだとか、言ったり言わなかったりするけれど、そうじゃない。アンデットエネミーと、三上大嘉が、人間らしく人間のふりをして人間に混じって生きているのは、紛れもなく君たちの功績なんだよ。
おおかみちゃんの話は、脈絡もなければ取り留めもなく、思いついたことを思いついた順に口に出しているようだった。独り言、にならないように、俺とアンちゃんが口を挟む。俺の頰に手を添えたまま、アンちゃんに足を揉まれるままのおおかみちゃんは、ずうっと少し笑っていて、かわいかった。
「この前、はじめてシチューを作ったんです。帝士さんが、テレビを見て、食べたいって言ったから」
「おいしかったよ」
「ねー!アンちゃんも、おーちゃんのシチューは最高だぜ!って思った!」
「うーん、でも、すっごく難しかったんです。分からないことだらけで、たくさん失敗しました」
「いーじゃんいーじゃん、失敗は誰でもするんだよ」
「だから、今度リベンジしようと思って。食べてくれますか?」
「もちろん!」
「あ!レジでもらった割引券使いなよ、おーちゃん!」
「はい。アンさんは、何か食べたいものありますか?」
「あ!お茶漬け!」
「おちゃづけ……」
「わかりました」
「分かっちゃっていいの!?」
「がんばります」
「家事こなれてきたおおかみちゃんならお茶漬けとか多分秒でできるよ……帝士さんでも作れるんだぜ……?」
「難しいかもしれませんよ」
「いけいけおーちゃん!ぼーいずびーあんびしゃーす!」

なんて会話からも伺えるように、弊事務所では住所不定戸籍不明の人間を二人も雇っているので、生活スペースといろいろなものが兼用なのである。一人一部屋一応ある。アンちゃんはあんまり自室に戻らないので、ほぼ物置状態だけれど。
お風呂から上がって、おおかみちゃんが俺の髪の毛を乾かしてくれた。がし!がし!がし!って感じだけど。力強いよねえ。男の子だね。お返しにおおかみちゃんのもやってあげた。そしたら、冷たいお茶に羊羹が付いてきた。やったぜ。
「お?アンちゃん、どっか行くの?」
「うん!おでかけー」
「どこ行くの。お風呂入ったばっかしなのに」
「んー、んーと、アンちゃんとおーちゃんの秘密のお風呂タイムを覗き見していいのは、てーちゃんだけだからー。アンちゃんのパパの残りには見せたげたくないから、ぷちっとしてくるの」
「ぷちっと」
「そお、ぷちっと」
「アンさん、どこか行くなら帰りにお使いを頼みたくて」
「おっけー!なになに?」
「トイレットペーパーを……」
「ん!いーっぱい買ってくる!」
「一つでいいですよ」
あ、おーちゃん、髪の毛やって。一つに結んだ髪を解いたアンちゃんが、おおかみちゃんに背中を向けて座った。動く予定はありますか?可愛い格好をする予定は?なんておおかみちゃんの質問に、めっちゃ動く予定だし髪の毛ちょん切られちゃったらやだからかわいくなくてもお団子して!とアンちゃんがにこにこはきはき答えている。覗き見、ねえ。うちに盗聴器や監視の類を仕込むのはかなり難易度の高い仕事のはずだけど、アンちゃんもよく気づいたなあ。どこにあったの?と聞けば、新しくつけたシャワーの中!くやしー!と小さな機械が放られた。あのね、ぺっちゃんこに握りつぶされてて元は何だったのか全然分かんない。器用にくるくると髪をまとめ上げたおおかみちゃんが、満足そうに一つ頷いて。
「はい。お団子できました」
「わーい!あ!みつあみカチューシャだ!かわいー!」
「これも。動くと揺れてかわいいんですよ」
ピンクの石がぶら下がった簪をお団子に刺したおおかみちゃんが、安物だからアンさんには似合わないかもしれないけれど、と少し頬を赤くしながら言った。おおかみちゃんに出しているお給料は、基本的に俺たち二人への贈り物として使われてしまうのだ。自分のためにもっと使っていいのに!食費は食費であげてるし!でもおおかみちゃん、欲しいものとかやりたいこととか、ほんと全然ないんだよねえ。それは俺やアンちゃんが与えた設定ではなく、素の彼のデフォルトらしい。しゃらりと石を揺らしたアンちゃんが、大喜びでおおかみちゃんに抱きついた。
「やーん!おーちゃん気がきくー!いいお嫁さんになれる!」
「よめ、あー、男なので婿ですかね?」
「どっちだっていいよお!かわい!ねっ、てーちゃん、どお?アンちゃんどお?」
「かわいい。最高」
「うはー!ちょっとさっくりぷちっとしてくんねー!」
「行ってらっしゃい」
「気をつけてくださいねー」

「ちなみにおおかみちゃん、アンちゃんがなにをなにしに行ったか分かってる?」
「人を殺しに行きました」
「おおふ……躊躇いもなしに君……」
「でも、アンさんは悪いことしてないじゃないですか」
「そうね」
「俺は、アンさんのこと好きです。ちゃんと笑ってられる、アンさんのこと」
「俺も好きだよ、アンちゃんのこと」
「だから、美味しいお茶漬けを用意して待ってたいんです。お買い物、一緒に来てください」
「いいよー。なに買うの?」
「お茶漬けってなんですか?それに入ってるものを買いたいんですけど」
「……おおかみちゃんの記憶中枢、バグってるよね……」


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