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☆すてらびーた☆学パロ編



「大切な話があります」
「ピスケスちゃん、三つ編みしてあげましょうか。ねっ、かわいいから」
「あ、ありがと……じゃなくて、スピカさん、あの」
「わたしも髪の毛伸ばそうかなあって思ってるんです。ピスケスちゃん、髪綺麗ですよね」
「う……あの、お話があり……あの……」
ピスケスさんの威厳を封じるには、一番女の子に近いスピカさんと、女子らしい関わりをするのが一番らしい。三つ編みをされながら、女の子らしく扱ってもらえる嬉しさと自分の話ができない怒りの狭間でかなり揺れていたピスケスさんが、スピカさんが終わったらでもいいんですけどお……とぼそぼそ言った。
「新キャラ編だぞっ!この辺でオープニングがまた変わると、ぴなはそう思う!」
「ぴなさん、ここは現実です」
「一期がきみらのぎすぎす殺し合い編だったなら、ここはゆるふわのんびり日常系の、二期だからな!二期は2クールあるんだと思ってくれたまえ!」
「だからぴなさん、メタ発言はやめてくださいってば」

というわけで、新キャラ探し編である。ただし手がかりは今のところ皆無なので、ただ生徒会室に集まってはだらだらして時間を過ごしている形になる。とは言え、コリンカさんは自由行動と言う名の出禁にしてるし、レオさんはあんまり群れないので出現率は低いし、ポールさんは「ぼく、人間と一緒に、授業受けたい……」としゅんとしていたので行ってらっしゃいをした、ところトールさんはついていった。なので内訳、サジタリウスさん、ピスケスさん、スピカさん、じぶん、時々ぴなさんとみつさん、って感じ。ちなみにスピカさんは、自分が在学する高等部と、中等部生徒会室を行ったり来たりしている。そんな感じでしばらく過ごしつつ、手がかり探しをしていたところ。
「……牛」
「ひえっ」
「来なさい」
「えっ、あの、あのっ、なんですか、ピスケスさん!」
「いいから」
「あるさん、ピスケスちゃん、どちらへ」
「スピカさんはここにいてください!危険なので!」
「え?ちょっとよく聞こえなかった」
「スピカ、どこ行くの?」
「あるさんについていきます」
「じゃあ僕も行こう」
「耳無いんですか、あんた達は!」
ピスケスさんに引きずられるじぶん、それについてくるスピカさん、それについてくるピスケスさん。カブを引っ張るおじいさん、それを引っ張るおばあさん、それを引っ張る孫、って話があった気がする。ピスケスさんが、危ないからスピカさんは来ないで!って守ろうとしてるのが、複雑である。あなた、ついこないだスピカさんのことコリンカさん使ってぼっこぼこにしてたでしょうよ。
着いたのは、トイレの前だった。女子トイレなので、女子(に見える)三人と、男の子のじぶんだと、あんまり居心地が良くない。ていうか周りからこそこそ言われてる。だって、女子トイレだもの。はあ、と辺りを見回したスピカさんが、手を打った。
「ああ、連れションってやつですよね」
「違います!」
「全員性別はほぼ同じですし」
「私は違います!」
「コリンカちゃん。見た目で女の子してても、付いてたら男の子なんですよ。ねっ、サジタリウスさん」
「そうだよ!」
「だからそうじゃありませんってば!」
ねー、と頷きあっているスピカさんとサジタリウスさんは放っておくことにしたらしい。ピスケスさんが、じぶんの制服の袖を引っ張ってこそこそ話し始めた。
「牛野郎、様子を見て来なさい」
「ええ!?女子トイレですよ!?」
「非科学的な幻影物質がこの中に存在すると噂が流れています、生徒の不安を放っておくわけにはいきません」
「ひ……ひかがく……なんですか?」
「……ぉ……です」
「え?」
「お化けです!おーばーけー!ゴースト!邪悪な霊がここに出るって話だから、ちゃっと行ってちゃっと除霊してらっしゃい!そんぐらい出来るでしょう、私の野望を打ち砕いたクソ牛なんですものねえ!」
「お化け?」
「ゴーストが出るのかい?」
「ええ。ええ、だから、スピカさんはここにいましょう。危ないですから。危険なことはこの小間使いに任せて」
「じゃあ、僕が一緒に行くよ。そういうものなら、経験があるから」
「……あなたも危ないので……」
「大丈夫!心配してくれてありがとう、ピスケス!」
「……………」
サジタリウスさんの必中は、相手が誰であれ刺さるらしい。何か言いたげにもごもごしていたピスケスさんが、危ないことがあったらそれを生贄にあなたは戻って来た方がいいですよ、とだけ告げた。ついて来たそうな顔をしているスピカさんの左手はピスケスさんに捕まっているので、待っていてもらうことにした。これがなにかに繋がるかもしれないし、本当に危険なことがあれば、二人まで危険な目に遭わせるわけにはいかない。今は特権が使えないわけだし。
じゃあ行こう!とサジタリウスさんがじぶんの手を取って、女子トイレにずかずか入って行ってしまった。人目とか、中に人がいたらどうしようとか、あるじゃないですか。運良く誰もいなかった、というか、お化け騒ぎがあるから誰もいないのかもしれない。薄暗いトイレの中には、三つ個室があって、どれも扉が閉まっていた。鍵は空いている。ちかちかと電気が付いたり消えたりして、不気味な雰囲気。どれどれ?と前振りもなく扉をばたんばたん開け始めたサジタリウスさんを止める。厳ついタイプのお化けだったらどうするんですか。
「大丈夫大丈夫」
「なにを根拠に言ってるんですか!」
「未練があるからお化けになるんだよ。ならその未練を解決してあげればいい。彼らだって、悪いことをしたいわけじゃあないんだ」
「もうただの良い人じゃないですか……」
「え?そうかい?僕、結構自分勝手だよ」
それは知ってる。詳しくは、かみさまの本棚に行って、第一回神獣騒動の辺りを参照いただきたい。手前と真ん中のトイレを検分してくれたサジタリウスさんが、誰もいないみたいだ、と一番奥のトイレのドアノブに手をかけた。いるとしたらここかあ、なんて呑気な声に呼応するように、勝手に扉が開いた。つい、きゃあ!って悲鳴をあげたじぶんを庇うように、サジタリウスさんが前に立つ。かっこいい!すごくかっこいい!
「……誰も、いないよ?」
「……ええ……本物じゃないですか……」
「そうだね、本物だ」
こっちを振り向いたサジタリウスさんが、笑った。刺すような違和感、直感的な異変に、ストッパーをかけていた目が勝手に起動する。魔術を読み解く、分解の視覚。特権も魔術も封じられた目、分解の残り滓くらいしかできないんだけれど、それでも分かる。中身が違う。じゃ、みんなのところに戻ろうか!と快活に、まるで本人のように言うなにかの手を取れば、嫌に冷たかった。数秒、時間が止まったように見つめあって、自分が何かを言う前に、サジタリウスさんの中にいるなにかが、口を開いた。
「おー。ほんと、見るだけで分かるんだ。今ってこの人の全部をコピーしてるんだけど、普通じゃ分かんないもんなんだけど、君には分かっちゃうわけ?」
「……そういう目を、いただいたもので」
「うん。そう聞いてる。かみさまからね」
「どなたでしょう」
「はじめまして。僕、サジタリウスだよ」
「いやいや」
「あはは、だよね。けど、今のところは実体がないんだ。だから、全部借りてるってわけ。この虚構が終わったら、姿を見せられるかな?」
「全部……」
「見た目ごと、口調も、仕草も、全部。そうでないと、実体のない僕は、他者と関われないんだよ。自己紹介だけ一応しておこうか?」
蟹座の、ニナさん。サジタリウスさんの見た目で、サジタリウスさんの口調で、サジタリウスさんの一番最初の自己紹介と同じように片膝をついて頭を下げて胸に手を当てて、どうぞよろしく、と微笑まれた。
「……ちなみに、なんですけど」
「ん?」
「もしじぶんが前にいたら、じぶんの体を使うつもりだったんですよね」
「うん。かみさまから、君らのうち誰かに認識されろって言われてたからね。その課題が終われば、この架空世界ともおさらば。それじゃ、僕は君に認識されたから、一抜けだ。お先に失礼するよ」
「あ、じぶんの名前は、」
「あるだろ?知ってるよ。どうしたの?」
「……サジタリウスさん……」
戻ってきた。突然の邂逅は、突然終わった。スマホを確認したら、ニナさんのプロフィールが更新されていた。しかしながら、殆どのことが空欄だ。実体がない、って言ってた。特権が使える元の世界に戻ったら、ニナさんと対面して話すことが叶うのだろうか。
「この中にも誰もいなかったね。お化けってなんのことだったんだろう」
「……お化け、いましたよ」
「え?」
ニナさんは恐らく、実体もなく誰かと関わることも出来ない状況下で、騒ぎを起こせばじぶんたちのうちの誰かが引っかかるだろうと踏んだのだろう。お化けの噂はきっとそのせいだ。特に悪意もなければ、私的な目的しかない、蓋を開ければ怖がる理由もない話だった。ピスケスさんに教えてあげよう。
「ただいま。何もなかったよ」
「もう今後何かが起こることも無いと思いますよ」
「……牡牛座……」
「あるさん、ピスケスちゃんったら、二人に何かあったらって気が気じゃなかったんですよ」
「そっ、そんなことありません!」
「かわいいですよねえ」
「ピスケスさん、心配してくださってありがとうございます」
「あんたなんかのこと心配するわけないじゃないですか!家畜野郎が居なくなったら私の薇は誰が巻くんですか!」
心配なんかしてないんだからねっ!って感じだったら、かわいいと思えるのかもしれなかったが、普通に真顔で吐き捨てられたので、薇が無くなったら困る、が恐らく本気の本心だ。ちょっとくらいはじぶんの心配もしてほしかった。ちなみに、サジタリウスさんのことは普通に心配だったらしく、べたべたと体を触り回して、怪我はありませんか?何か怪しいことをされませんでしたか?幽霊もしくはあの輩から、と問い詰めている。じぶんはなにもしてない、ニナさんがちょっと体を借りたけど、サジタリウスさんは気づいてすら居ない。なので、彼から出る言葉も「なにもなかったよ」であって。
「またなにかあったら調査しよう!」
「サジタリウスさん、乗り気ですね」
「みんなのために、こういう、僕が何かできることがあるっていうのが、嬉しいからね!」
「私も同意見です。だから、生徒たちのために生徒会長をしています」
「ピスケス、またなにかあったら教えておくれよ!僕、がんばるから!」

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