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☆すてらびーた☆学パロ編



「あ。ピスケスだ」
「……………」
「……………」
「睨み合ってたっていいことないぞ!仲良く仲良く!ねっ!」
「さじがいてくれてよかったなー、みつもどきよ。めっちゃぎすってんじゃんかさ、きみらの世界観どうなってん?」
「はは……」
「殺し合いのデスゲーム的な?今から皆さんには殺し合いをしてもらいます?」
「そんなことは……」
「殺すぞ魚女」
「アァ?片割れ風情が意気がってんじゃねえぞゴラぶち殺したろか」
「こらー!やめなさーい!」
「めっちゃ殺意ばきばきー!ぴなもいーれーてー!」
「思ったよりもトールさんとピスケスさんが合わない……」
「おかえりなさい、あるさん」
「ただいま戻りました……」
一時休息。ピスケスさんとトールさんはぎっすぎすのぎすなので、対角線に離した。サジタリウスさんが間に入ってくれてるけど、心労がすごそう。ポールさんも間に入ってくれてるように見えるけれど、やめなさーい!きゃっきゃ!って感じなので、あんまり力になれていない。トールさんが真顔で防犯ブザーに手をかけているのが怖い。何が起こるかわかんないから余計に怖いんだよ!
「初等部開通、おめでとうございます」
「よかったな!ミッションクリアのごほーびをやろう!はい!」
「なんですか?」
「ピスケスっちが立ってるところを下から撮影した写真のデータ!」
「えっ」
「きゃあああ!馬鹿!クソ馬鹿!なにしてやがるんですか!」
「パンツは見えてないよ?」
「そうじゃねえんだよ馬鹿!ばーか!くっそだりゃあ!」
「あー!ぴなのすまーとほん!」
ピスケスさんがぴなさんのスマホを窓からぶん投げてしまった。しょうがないにゃあ、とぴなさんが再びポケットからスマホを取り出した。何台持ってるんだ。
「ほれ、男の子としては御用達じゃろ。女の子のぎりぎり見えるか見えないかゾーン」
「ピスケスさんは微妙なので……」
「あ″!?微妙!?どういう意味です!?私に魅力がないと!?」
そういう意味じゃない。男女差が微妙ってことだ。だって混ざってるじゃん、男の子と女の子が。どっちかというとそういう類の写真ならぴなさんのやつが欲しい。欲しいっていうと語弊がある。欲しくはない。望ましい。ピスケスさんが胸ぐら掴んで揺すってくるので、声が出ない。さんざ騒いだ後、生徒会室の片隅の毛布の塊みたいなのがもそもそ動いて、白い頭が出てきた。眠そうなレオさんが顔を出す。そこにいたのか。知らなかった。
「じゃあ、次は高等部ですね」
「スピカとコリンカ、いるかなあ」
「そうですね。早く会いたいです」
「ぼく、一緒に行くよ!」
「私は行きません」
「僕は行こうかなあ」
「……私も、もうちょっと寝てる」
「ボクはポールと一緒にここにいる」
「ぼくは行くってば!」
「いる」
「もー!トールったら!」

高等部。さっきはもにゃもにゃがあって行けなかったけれど、今度はあっさり通れた。初等部とも中等部とも違う、幾何学的なイメージの建物だった。一緒にいるのは、じぶんと、サジタリウスさんと、ポールさんと、トールさん。でも、トールさんは同行はしてくれなかった。ポールさんについて行きたい気持ちとじぶんとは絶対に一緒には居たくない気持ちの中間を取って、後をつけることにしたらしい。後をつけるっていうのもどうなのかと思うんですけど。とかいうと殺されるので言わない。とにかく、後からついてきてはいるが一緒には来てくれないということだ。難しい。
「えーと。ピスケスさんと、スピカさんを、地図で探さないと」
「大きい人ばっかりだー」
「そうかな?」
「サジタリウスは背が高いから。いいなあ、ぼくも背が高くなりたいなあ」
「……じぶんも……」
「どうしたら背が高くなるんだろうね?」
「食べ物かな。人間は食べ物で大きくなるんだって」
「頭のてっぺんと足をもって引っ張るっていうのはどう?」
「千切れちゃったらどうしたらいいの」
「くっつけたらいいんじゃないか?」
「でも人間は死んだらそのままなわけだから」
「あっるさあああああん!」
「げっふ」
「え?」
「えっ、あ、スピカ?」
「あるさん!あるさあん!さみしかった!わたし!ずっと!ひとりで!」
「ゔっ、ぅぐっ、ゔっ」
えぐい話をしてる二人に気を取られて、どこからか突進してきていたスピカさんに気づかなかった。強く強く抱きしめられて、頭をぐりぐりされて、首が千切れ飛びそうだ。高等部の入り口も入り口なのに、どこから走ってきたんだと聞いたところ、あそこから…♡と恥ずかしそうに指差した先が校舎三階の窓だった。嘘だろ。嘘だと言ってくれ。
「ひとりで……さびしかったんです……」
「スピカさん、すぴっ、あの、あし、足が浮いてて怖いです」
「わあ、高等部の制服、かわいいね」
「サジタリウスさん!えへっ、かわいいですよね、見てください」
「うわあああああ」
「スピカ!あるを離してから回ってあげて!振り回されてる!あるの首が取れちゃう!」
少し袖丈の長いカーディガンと、普段よりは短めのスカート。じぶんを離したスピカさんがもう一回くるっと回って見せてくれて、ふふー、って嬉しそうに笑った。かわいい。3階から飛び降りて走ってきた疑惑があるとは思えない。
「スピカさん」
「はいっ、あるさんっ」
「……スピカさん……」
「?」
「……いえ……」
思ってたより背が高い。制服っていう、みんな同じものを着ているから、尚更そう思うのかもしれない。どうかしましたか?と顔を覗き込まれて、静かに背けることしかできなかった。もっと、なんか、同じぐらいの気持ちでいた。気持ちだけだった。痛いところがあるんですか?と聞いたことのある台詞とともに、小さな包みを渡された。
「特権は使えなくても、お菓子は作れます。あと、絆創膏もありますよ!わたし、あるさんのお力になれるように、頑張ります!」
「わあ、これなあに、スピカ」
「クッキーです」
「美味しそう」
「食べてもいいの?」
「ええ」
「……特権がないから、怪しいお薬は入ってない……入ってない……」
「あるさん?」
「……なにを入れて作ったんですか?」
「あ、今度一緒に作ります?」
「ふひは、ほひんははほほひひふほ」
「え?なんです?」
「ごっくん、えっと、コリンカは?」
「……………」
「スピカ?」
「……コリンカさんは……」
「高等部にいる、とは聞いてるんです」
「……コリンカさんは、死にました……」
「ええっ!?」
「なにがあったら!?」
「ああ……いえ……死んでないです……でもほぼお亡くなりになったようなもんです……」
「どういう……!?」
「えー、コリンカ死んじゃったの?悲しい」
あんまり悲しくなさそうなポールさんと、何かを明らかに隠しているスピカさんなので、絶対なんともないんだろうけど、なにかあることは確かだ。コリンカさん、なんかかみさまとぼそぼそ言ってたしな。怪しい。
「スピカさん!コリンカさんはどうしたんですか!」
「いやです……同じ穴の狢だと思われなくないぃ……」
「もし何かあったとしても軽蔑するのはコリンカさんだけにしますから!」
「一括りにされる……高校組とかいってわたしとコリンカちゃんで同じ立場に立たされる……無理……あれと同じは無理ですぅ……!」
なんとか説得した。すっごい時間かかった。どう説得したかというと、サジタリウスさんがポールさんの目を咄嗟に覆ってくれるやり方を使った。ていうか、スピカさんが駄々をこねたのだ。じぶんからはそんなことしない。誤解を招かないように言うと、服は脱いでない。ちょっと物陰に連れ込まれてぎゅってするように迫られただけだ。一回ぎゅってしたらスピカさんが離してくれなかったので、頑張って離れた。イー!ってがんばった。よく考えたら、それだけなら別に目を覆わなくてもいいじゃないか。サジタリウスさんが「ひゃああ!」って焦ってたから、そういう感じなのかと思ってしまった。サジタリウスさんが純粋なのだ。じぶんが汚れている。悔い改めべきはじぶんである。
「コリンカさんは酷い状態ですからね」
「……大怪我とかそういう……」
「いえ、あ、いや、違う意味では大怪我……」
「?」
「あ!ぼく、知ってる!イタイってやつだろ?我が右眼に宿りし漆黒の龍!」
「あ、違います」
「ちがうんかーい!あははっ」
「ち、ちがうんかーい……えへ……」
サジタリウスさんが小さく真似していて、しかも照れている。胸に何か刺さった音がした気がした。多分、恋の矢的ななにかだ。
スピカさんが先導してくれるので、初等部の時のようにうろうろしなくて済む。男の生徒は、サジタリウスさんよりも大きい。じぶんとかポールさんは、ほぼ見上げてる感じだ。机と椅子とかも、全体的に大きい。平均身長が高いんだろうな。断じてじぶんがちびっこなわけじゃないぞ。
「……もういっそコリンカさんのことは忘れません?」
「なんでそこまで嫌がるんですか……」
「はい!ぼく、予想をつけた!当たったらご褒美ちょうだい!」
「ポールさん、どうぞ」
「人間への移行に一人だけ失敗して下半身が山羊!」
「違います」
「えー、じゃあ、上半身!」
「それも違います」
「はいっ、えと、えっと、全身!」
「サジタリウスさん、乗らなくてもいいんですよ」
「でも、僕、なんか楽しくて」
「ぼく、知ってるよ!こういうの、大喜利っていうんでしょ!」
「コリンカさんに会わないでずっと大喜利やってましょうか。ねっ」
「スピカさん、顔に生気が無くなってます」
じぶんたちがごちゃごちゃやってるのは、3年生の教室の前だ。なので、横を通り過ぎていく3年生が、不思議そうな顔をしている。ちっちゃーい、って誰かが言った。誰だ。特権使ったら誰より大人になれるんだぞ。使えないけど。ちっちゃいことなんか気にしてませんからね。
とかやってる間に、ひとしきり楽しんだらしいサジタリウスさんが、コリンカはいるかい?と扉をがらがら開けてしまった。怖いもの知らずというか、良くも悪くも空気を読まないというか、サジタリウスさんのいいところです。同じく特になにも考えてないポールさんが、サジタリウスさんの下から顔を出して、おーい、と呼びかけた。
「コリンカー」
「お、コリンカ探してんの?」
「うん、そうなんだ。ここにいるかい?」
「いや、いねえけど……中等部?コリンカの友達?」
「そう!ともだち!」
「おっ、お、初等部?」
「うん!ぼく、ポール!よろしく!」
「よ、よろしく……」
高等部のお兄さんが、がつがつくる年下に驚いている。さっきまでここにいました、とスマホを出したスピカさんが、目を離した一瞬でいなくなったことに眉を潜めている。そんなことをしている間に、よろしくー!と無邪気なポールさんがお兄さんと手を繋いでぶんぶんしているので、お兄さんのお友達であろう男の人が、大笑いしながらその写真を撮っている。お兄さんは戸惑いながらポールさんにされるがままになっている。サジタリウスさんはまたも怖いもの知らずなので、写真を撮ってるお友達さんに、僕もそれをやりたいんだけどこのすまほでも出来るかい?スピカの写真を撮りたいんだ、と迫っている。
「カメラで撮ればいいじゃん、うわ画面ばきばき」
「落としちゃったんだ。カメラってどれ?」
「ここを、こう……こう。これ」
「へえー!すごいな、ありがとう!」
「おお……」
サジタリウスさんをじっと見てるお友達さんの彼の頭の中は恐らく、「あれ?男?女?微妙だけど男?でもスカート、だけど中学生なんだよな、じゃあ僕っ子の女?」と「普通に好きになりそう」の二択だろう。これ以上サジタリウスさんが無意識の好意を集めまくったらまたややこしいことになりそうだ。
「スピカさん、コリンカさんは」
「いました。帰ってきますね」
「場所変えますか?」
「……どこでも一緒でしょう。はあ」
「?」
「あ、コリンカ。お前のお客さん」
「え?誰?」
「……………」
「……………」
「……………」
「あー、やっと来た。コリンカさんだぞー、やっほー」
男版だ。特権が使えないから、そりゃそうなんだけど。へら、と笑ったコリンカさんの隣に可愛い女の子がいる。だれー?と甘く聞いた彼女に、トモダチ、と軽く答えたコリンカさんが、紙パックの飲み物を振りながら、どした?と首を傾げた。なんていうか。うん。しっくりする言葉が絶対にあったはず。女の子のコリンカさんを見慣れてるサジタリウスさんは固まってるし、ポールさんもいつもと違う雰囲気に呆然としている。えーと、なんだったかな。そう、確か。
「……ちゃらちゃらしている……」
「えー?あるクン、なんだって?」
「……あるさん、これが、やりたい放題やってるコリンカさんです。覚えといてくださいね」
「はい……」

「さっきの子?トモダチ」
「お友達いっぱいなんだね、コリンカ!」
「うん。そお」
にまーって笑ったコリンカさんは、多分ポールさんの言った通りの言葉の意味で受け取っていない。お友達って、お友達だろうけど、普通のお友達じゃないでしょ。遊び歩いている。ちゃらついている。スピカさんがコリンカさんと若干の距離を取っているのが確固とした証拠だ。
結構な人が集まってしまったので、場所を変えた。現在地、屋上。ポールさんと握手してた彼も、サジタリウスさんに落とされかけた彼も、コリンカさんと一緒に連れ立って帰って来た彼女も、コリンカさんと仲良しなようで、ありがとねー、とじぶんたちの肩を抱いて歩き出したコリンカさんに口々に言葉をかけていた。なにするつもりだよー、小学生もありかよ見境なしー、みたいなこと。いやいや。いやいやいや!学生でしょ!
「別に不貞は働いてないよ」
「……コリンカさんとお付き合いしてるって女の子、わたし何人も知ってます……」
「お付き合いはしてないんだって。ちょっと遊ぶだけ、勘違いしてんのはあっち」
「遊ぶのはいいことだ、楽しいからね」
「ねー!ぼくも、お友だちたくさんできたんだよ!」
「純粋二人は黙っててください」
スピカさんにずりずり押された二人が、屋上から下を見下ろしながら、人が小さく見える、と話している。お花畑が見える。あっちに混ざりたい。こっちは爛れている。
「コリンカさん……女の子を悲しませることはしちゃダメですよ……」
「してないってば、信用ないなあ」
「年中春で固定の星の主人として、発情期っていう個性だけが残っちゃったんですよ」
「スピカさん!言い方!」
「いやあ、そこんとこはあんま変わってないんだけど」
「コリンカさん!?」
「だって楽しいじゃん。私、人間好きだし。こんな機会はないから、馴染みたいんだよ」
「馴染むのと関係を持つのは違うと思います」
「スピカくん、すげえずばずば言うねー」
「触らないでください」
「いって!抓った!あるクン!」
「あるさんにも触らないでください」
「まだ触ってな、っぶねえ!グーパンかよ!」
スピカさんの唸るような右拳を、コリンカさんがぎりぎりで避けた。まあ、コリンカさんに割と非がある。胡座をかいた彼が、でもみんなと仲良くなったことでいろいろ知識は得られたんだぜ、と口を尖らせた。なんの知識を得たんですかねえ!とスピカさんが睨んでいる。なんの知識を得たんですかねえ。
「とにかく、あるクンたちが来るまで私が何してたかなんてどうだっていいじゃん?お友達増やしてただけだから」
「……三角関係……嘘……脅して……誰彼構わず……」
「おーい。スピカくん、おい、有る事無い事言いふらさないでくれよな。ぼそぼそと」
「コリンカさんは誰彼構わず迫っては女の子と関係を持ち、ある程度の嘘は嘘ではないと言い張り、三角関係に飽き足らず何股もかけまくって、危うく怒られそうになった時には若干脅して相手をねじ伏せながら、さんざん遊び呆けていました」
「おーう、はっきりと言う」
「コリンカさん、嘘ですよね?」
「ううん、全部マジ」
「最低!」
「最低じゃない、仲良くなりたかっただけだもん」
「もっと別の方法を模索してくださいよ!」
「ぷーい」
「可愛くありませんよ」
「ええ、一ミリたりとも可愛くありません」
「ていうか、学校ですよ。学校。不純異性交友できるような場所、ないでしょう」
「なに言ってんのさ、あのかみさまが作った世界だぜ?そういうところはがっばがばに決まってんじゃん」
「……最低」
「コリンカさんみたいな人は真実の愛に恵まれず一人で死んでいくんですよ」
「すっげえ厳しい……特にスピカくん、目が絶対零度じゃん……ピスケスくんのそれを彷彿とさせるわー」
「はっ……」
ピスケスさんと今のコリンカさんを会わせちゃいけない気がする。確実にピスケスさんは食ってかかるだろうし、自信と誇りを持ってコリンカさんの遊び呆け具合を見下し糾弾するであろうことが、もうまるで今繰り広げられているかのように目の奥に浮かぶ。けれど、どう頑張ったって勝ち目がない。いつもの感じで食ってかかって、更にコリンカさんがそれに乗ってしまうと、ピスケスさんがこてんぱんにされて本気で涙ぐむ未来しか見えない。それはいけない。コリンカさんは生徒会室に連れていくべきではない。しかしそうなると、やりたい放題モードの遊び人コリンカさんを放置することになる。スピカさんは多分、じぶんが来たことでコリンカさんの手綱を握れると思っている。けど、コリンカさんをパーティーに加えてしまうと、ポールさんやサジタリウスさん、純粋枠としてはレオさん、などの教育に悪いし、ピスケスさんの胃にそう遠くないうちに穴が開く。ただでさえ、ぴなさんとみつさんにカリカリキーキーしてたのに。まずい。どうしよう。こっちの逡巡も知らず、スピカさんは、さあ行きますよ、みんなと合流しなくっちゃ、と腕を組んでいる。コリンカさんはちょっと不満げだ。えー、まだ遊び足りない、って感じ。
「駄目ですよ!あるさんが来たからには、ちゃんとしてもらいますから」
「コリンカさん、今回に限って自由行動でもよくない?なんかあったら報告するからさー、あるクン」
「……コリンカさん」
「んー?」
「……なにかあったら教えてくださいね……」
「んー。えっ?マジで?いいの?」
「あるさん!?」
「……あんまり遊びすぎないように……あと、中等部には近寄らずに……」
「オッケー。よし、うん、じゃあね」
「あっ、えっ、あるさん!いいんですか!」
「……苦肉の策です」
スマホをポケットから取り出したコリンカさんが、大人気でモテモテだから困っちゃうわー、とにまにま去っていった。スピカさんが本当に嫌そうだ。一途な愛に生きるスピカさんからすると、振り撒いては責任を取らないコリンカさんのやり方は、嫌悪に近しいものを強く感じるんだろう。まあ、褒められたものではない。相手を悲しませてはいない、との本人談だから、見逃すのも然もありなん。
「あれ?コリンカは?」
「行きました」
「見て、スピカ。写真を撮ったんだ、僕こんなのはじめてで、楽しい」
「サジタリウスさん……」
スピカさんが、サジタリウスさんの心の綺麗さとさっきまでの会話の、あまりの差に涙ぐんで感動している。ポールと僕だよ、とにっこにこしながら見せてくれた写真は、もうなんか、動物の映像とかに近い癒しだった。
「さっきの彼にもう一度お礼が言いたいな。こんな素敵なことを教えてくれたんだ」
「……今度こそ本気で惚れてしまうので、やめたほうがいいのでは……」

「おー、おかえりー」
「……は、はじめまして」
「はじめまして。みつといいます」
「ぴなだぞ!こっちはせーとかいちょー!」
「ぜえ……ぜえ……くそこの……鳥女……」
何故かピスケスさんがぜえはあしている。ぴなさんに訳を聞けば、「腕相撲勝負してたんだけども、せーとかいちょーが弱いのなんの!だけどなー、負けても負けても何度も挑戦してくるもんだから、ぴなもその度に全力で勝ちを奪いに行っちゃうわけでなー!」だそうだ。そしていつのまにかポールさんの隣にトールさんが戻っていた。そういえば、高等部でポールさんが男の先輩と握手したりしてたけど、あれはトールさん的にはありだったんだろうか。
「無しだよ。完全に無し。殺してやる」
「あの場で止めに入ればよかったのに」
「あの時あの場で、あの男と周りの人間全てを黙らせるだけの力が、特権を使えないボクにはない。それに、ポールは楽しそうだったから、あの男を苦しめるだけの手段が思いついて実行に移せる時が来るまでは執行猶予としたんだ」
「……そうですね!」
「理解を放棄するのは虫螻のすることだよ」
「ぐっ……」
理性があるんだかないんだか。ポールさんの手を握って黙っていれば、同じ顔だし同じ背格好だから、無害な小学生なのに。疲れ果てたピスケスさんを見て、心底馬鹿にした笑みを浮かべたりしなければ、純粋無垢なポールさんと同じ顔なのに。もったいない。
みつさんが、既存キャラ全コンプリートということで、と不思議な色の栞をくれた。これはなんですか、と問う前に、きらきらと掻き消えたそれが、空気に溶けていく。
「次章へ繋がる鍵です。具体的な仕組みは、ぼくも分からないんですけど」
「へえ……え!?次章!?」
「はい。最終目的は、新キャラのプロフィールを得ること、ですよね?ほら、四人、はてなが増えてます」
「えっ……え、この人たちを、また探すんですか……?」
「そうなりますね。協力して、がんばってください!」
「そしてそしてー、ぴなたちのお手伝いはここまでだぞ!」
「ええ!?」
「とはいっても、学園内にはいます。会ったら声をかけてくださいね」
「どの校舎にいるかくらいは分からないもんなんですか……!?」
「どちらかというと、あっちから会いに来るとか、ヒントが出るとか、すると思いますよ。この広い学園の中でなんの手がかりもなく人探しは、難しいでしょうから」
「物語ってやつはなー、上手くできてるもんなんだぞ!ある、がんば!どーしても困った時にはぴなを呼ぶといい!魔法の呪文で助けてあげよー!」
スマホの中に、地図の隣に、プロフィール一覧か増えている。じぶんは勿論、ポールさん、トールさん、レオさん、サジタリウスさん、ピスケスさん、スピカさん、コリンカさん、みつさんとぴなさんもちゃんと登録されてる、けどその隣に確かに四つはてなマークがあった。これを探さなきゃいけないのか。というか、こっちが本題か。かみさまの最初の振りとしては、新しい星の現し身と出会うために手っ取り早く学園パロディにまとめといたからね、だったはずだから。
「んじゃ、新キャラ編、いってみよー!」


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