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うみ




伏見くんが無言でお腹に砂をかけているのも気にせず、有馬くんはすよすよと呑気に寝てしまった。当也が呆れた顔で見ている。
「おい、手伝え」
「えっ?俺?今伏見くん俺に話しかけた?」
「……………」
「無視!きゅんとくる!」
「……そうだよ。朔太郎に話しかけてたよ」
可哀想なものを見る時の目をした当也が教えてくれた、伏見くんはどうやら俺に手伝いを命じたらしい。とても嬉しい。よーし!がんばっちゃうぞー!と拳を突き上げたら、舌打ちをされた。今の好感度って、マイナス5000くらいかな?
「なにしたらいいの?」
「そっちから砂かけて」
「有馬くんに?」
「……………」
「必要最低限の会話しかしてくれねえー!最高!」
「朔太郎、うるさい。人目引かないで」
「はい!」
有馬くんに向かってしぱぱぱと素早く砂をかけていけば、伏見くんが空っぽのペットボトルを持ってどこかに行ってしまった。人混みに紛れて見失ってしまい、次に見えた時には知らんお姉さんと笑顔で会話していた。あっナンパしてる。されてるのかもしれないけど。一応当也に報告したけど、心底どうでも良さそうだった。当也ってそういうの全く興味ないもんね。伏見くんは俺とは会話してくれないので、何してきたの?って聞いて!ってお願いしておいた。
「……おかえり」
「ただいま」
「どこ行ってたの」
「水汲んできた。固めてやるんだ」
にまにま笑った伏見くんが、砂の乗った有馬くんの体の上に水をぶちまける。水分が吸収されて色が変わった上から更に砂をさらさらとかけられているにも関わらず、まだ有馬くんはぷーすか寝ている。なんでそんな素早く深い眠りに入れるのか不思議だ。当也が肩に引っ掛けたシャツを頭から被って項垂れている。大変。溶けちゃう。
「おい、眼鏡。丸い方」
「さくちゃんってもっと気軽に呼んでもいいのよ」
「水汲んでこい」
「オッケー!」
人混みを抜けて素早く行って素早く帰ってきたら、うわあ、って顔をされた。もっと褒めてくれてもいいじゃない。
伏見くんが無言だから普通に埋めてるだけのように思えるけど、この人黙ってるだけで、グラマラスな女体を作ろうとしてるからね。だから水が必要だったんだ。有馬くんが安らかに寝てるのがアンバランスで嫌。ばさりとシャツが飛んだ当也が、眩しそうに目を細めて、ぎょっとした。その反応多分正しい。
何度か水を汲みに往復して、結構終わりが見えてきた頃、ぺたぺたと小野寺くんと航介が帰ってきた。ビール持ってる。いえーい。
「……随分買ってきたんだね」
「お腹空いちゃって」
「かんっぱーい!」
「……伏見なにやってんの?」
「いじめ」
「そうか……」
航介が居た堪れない感じで目を逸らした。大分出来上がってるもんね。伏見くんって器用だよね。
しばらく食べたり飲んだりしてたら、腹ぺこな小野寺くんが結構な勢いで食べたのと、航介が食べ始めたらお腹が空いていたことに気付いちゃったせいで、割とすぐ全部なくなってしまった。有馬くんの分どうするのよ。まあいいけどさ。デザート欲しくない?と言い出した伏見くんがきっかけで、さっき食べたかき氷安かったよな、あそこにもっかい行くか、と話が固まって、有馬くんは起きないままだ。どうすんだろー、と思ってたら、みんな割とナチュラルに置いて行く方向で決定していた。女の子じゃあるまいし、荷物当番も欲しいし、ってことか。財布だけぶら下げて立ち上がる。ぷーすかぴーよぴよ、と寝ている有馬くんに一応手を合わせておいた。なむなむ。

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