うみ
「弁当眼鏡かけたままでいいの?」
「眼鏡とったら見えない」
「そっか」
「眼鏡痛まねえの?」
「知らない。でも、だから、取ったら見えないんだって言ってんじゃん」
「ふうん」
「……あのさ、なんで有馬はずっと浮き輪につかまってるの」
「楽だから」
「……航介と同じこと言う」
「お前が押せっつったんだろ」
「有馬までついてくると思わなくて」
「俺が有馬に手伝い頼んだんだよ」
「航介の手伝いを引き受けた、俺」
「……もっと右の方に行きたい」
「右だって」
「引っ張りたい!」
「どうぞ」
「たのしーい」
「良かったな」
「伏見たちは?」
「あの辺じゃね」
「どこ」
「あれだよ。小野寺がでかいから目立つ」
「……どれ?」
「お前眼鏡意味あんの?」
「うるさいな。お前みたいに野生に生きてないから分かんないんだよ」
「俺も見えるよ!」
「ほら。有馬も見えるって」
「……俺も見える」
「嘘つくなよ……」
「弁当泳げないの?」
「泳げるってば」
「浮き輪ちょっと貸してよ。あれやりたい、あの、浮き輪の上に座るやつ」
「いいよ」
「……当也が普通に泳げること割と忘れる」
「朔太郎がやらしてくんないから、よっと。はい、有馬」
「いえー、よい、しょっ、と、お?」
「あっ」
「あ」
「がぼごぼぼ」
「あー、ほら、ひっくり返んなよ」
「げふっ、おえ、あぶねー」
「浮き輪使ってていいよ。無い方が楽」
「……弁当ほんとに泳げるんだ……」
「なんだと思ってんの」
「運動はできないキャラだと思いがち」
「……………」
「しょうがねえじゃん、そういう見た目してんだから」
「うるさいクソゴリラ」
「いてっ、いって、水ん中だからって蹴って良いわけじゃねんだぞ!てめえ!」
「がぶっ、あっぶね、足掴むな馬鹿」
「あー、あーあー、こんなとこで争わないでくださあい」