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うみ



「これ使っていいの?」
「いいんだよ。いいですか、お姉さん」
「オッケー!タダだよ!」
「いいってさ」
「ありがとうございます」
「こんなん使わしてくれんの、親切だな」
「息で膨らましてたら酸欠になっちゃうだろ」
「えっ」
「……伏見、このゴリラは肺活量で勝負する気満々だったらしいよ」
「じゃあ俺のビーチボールふくらます?はい」
「いや、いいよ……電気の力を借りれんならそうするから……」
「ていうか弁当泳げるのに浮き輪なの?」
「……浮き輪してないと朔太郎が追い回して水に入れてくれないから」
「浮き輪後でちょっと貸せよ。楽じゃん」
「匂い移りが心配だからちょっと遠慮する」
「殴られたいのか」
「野蛮。海から出て行け」
「喧嘩しないでよお、次喧嘩したらイチャイチャするぞ」
「暑い」
「やめて」
「言っとくけど伏見彰人とイチャイチャってご褒美だからね?嫌がるのお前らくらいのもんだからね?」
「ボールふくらんだ。次」
「聞けよ!」
「ぶわっ、砂かけんな!」
「航介なんか頭フジツボに寄生されろ!」
「やめろ!気持ち悪い!」
「……………」
「……弁当、想像した?」
「……………」
「顔青いけど、想像した?」
「……大丈夫」
「ごめんね」
「大丈夫」
「航介ふくらんだ?」
「もうちょっと」
「弁当元気出して」
「岩場に近づきたくない」
「なんでこんなへこんでんの?フジツボアレルギー?」
「なんか昔、学校の怪談みたいなやつで、海で転んで膝切って、膝のお皿にフジツボが引っ付いたみたいな、怖い話が流行ったんだよ」
「ああ。思い出しちゃったの、かわいそうに」
「……別に怖くないし」
「顔にもう帰りたいって書いてあるよ」
「岩の無い方に引っ張ってやるから」
「……ハゲゴリラに気遣われたくない」
「岸壁に擦り付けて浮き輪ごとお前を破裂させてもいいんだからな」
「航介、浮き輪破裂する」
「あっぶね」
「ねえ、航介、岩に近づかないように引っ張ってね」
「分かった分かった」
「ねえ、振りじゃないから、本気だからね」
「分かったってば」
「弁当が航介に甘えている」
「甘えていない。身を守るため仕方なく頼っている」
「弁当が、航介に、甘えている、なう」
「写真撮らないでください……」


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